第27話 第3章 その4
「それにしても、このトラックという乗り物、すごく早いですね。私、こんな乗り物があること知りませんでした。町ではこういうものが沢山あるのですか?」
「ああ、あるよ……」
トラックが走り始めて早30分ほどであろうか、さっきからアリアという少女はキャプテンにずっと話しかけている。
彼女の周りでは軍用トラックなんてないのだろうか?
たしかに普通の町で暮らしているとこういうのはあまり見ないよなあ。彼女にとって、どれも目新しい物に見えるのか、あれは何だのこれは何だの、凄い勢いで聞いてくる。
まるで、すべての物が初めてみるような感じだ。
巨大な狼に襲われたと聞いていたが、その時の恐怖を彼女は自分自身でも気づかないうちに他のもので気を紛らわせようとしているのだろう。
毒を解毒し、意識を取り戻した後、部屋越しからでも聞こえるほど大泣きしていた。しかし、悲しみも恐怖もいつかは終わらせた方がいい。
どれだけ辛くても前を向き、幸せを探すのは生きている者だけの特権だ。
「このコーラという飲み物、シュワシュワして甘くて美味しいです。こんな飲み物初めてです!」
「そうか……」
と二人は会話を続けている。
会話を続けた事でアリアちゃんの緊張も解けたようだ。
でも、その相手がキャプテンというのは怖くないのだろうか?あんなに強面なのに……でもまあ、
その強面部分を覗いたらキャプテンはワイルドな男も憧れるムキムキマッチョワイルドイケメンだ。
イケメンの魔力には女の子は勝てないのだろうか、
俺なら初対面で彼と会ったら怖くて声をかけられない。
それこそであった当初は一言も発せられないほど恐ろしかった。
今では公務員でもある軍人の上級職。超エリート勝ち組だ。俺のおかげで大出世しているのに俺はクビ寸前とか人生は上手くいかないもんだ。
一回りも二回りも離れていても、若い子があんな風に声をかけてくれればいいなあと思い、お前はアクション映画の主人公かよと思ってしまうが、本人にそんな事をいうわけにもいかないので、
こっそり寝る時泣いておこうと思った。
「キャプテンさんって左腕に変わった腕輪をつけてらっしゃるのですね。とてもオシャレでいいですね」
アリアちゃんは再び、キャプテンに質問を投げかける
「ん?腕時計をしらない……いや、知らないか。こいつはデジタル腕時計っていって最新技術で作られた腕に着けられる時計だ。これでどんな時でも正確に時間がわかる」
「な、なんと……このような小さい物なのに……」
アリアちゃんは目を信じられないぐらい丸くして食い入るように見つめた。
「おまけにおいつはアラーム機能まである。ボタンで時間を指定すればピピッと鳴るんだ。完全機密の最新装備だ」
何を言っているんだキャプテンは……まだ表には出回っていないが、デジタル腕時計は希望者には支給されているだろう……
ってか、めちゃくちゃアリアちゃんは目を丸くしているな。彼女の地域だとないのかな?
まあ、開発したのミシェアとデスアローン君だし……あれ?同じ言語圏だから、ここは同盟国かと思ったが違うのか?同盟国の主要人物には知られているはずだが……
「本当ですか?私を騙してませんか?こんな小さなものが……あと、これは……」
「あー……音楽かけるぞ」
キャプテンはさすがに鬱陶しくなったのか、彼女の言葉をさえぎり、トラックに取り付けられていた音楽プレーヤーにカセットを差し込み、ジャカジャカと音が鳴る曲を流し始めた。
最新の音楽機器だがこんなものを軍用トラックに取り付けるなんて、どれだけ自由にやっているんだ。キャプテン……
ドラムの音からのエレキギターのキュインキュインと音が鳴る。ピッキングハーモニクスの音が車内に反響してうるさいが黙っておく。
キャプテンが音楽を聴いている時を邪魔してしまうと殺されても文句は言えないほどの音楽好き。
俺もミシェアもルイス君も下を向いて何も言わなくても会話をしないようにしていた。
「なにこれ!どうしてここから音楽がなるの?!魔法の道具!?。こんな音楽初めて!とにかく凄いわ!」
ジャカジャカ音の中でも聞こえるほど大きな声でアリアが叫んだ。
バカ!ロックを聴いているときのキャプテンを邪魔するなんて!と言いたそうにミシェアとルイスの2人は目を見開いて2人を見た。俺も見た。
「あわわっ、まずいですよね?ドクター。音楽聞いてるキャプテンに話しかけるなんて、
僕、みんなから死にたくないならキャプテンとミシェアさんには気を付けろって言われてきたんですが、大丈夫ですよね?」と
ルイス君が震える声でこっそり聞いてきた。
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