第26話 第3章 その3

「ルイス君。チョコ食うかい?」

俺は気まずくなって、持ってきた食料を取り出し、渡そうとしてみる。一般兵ではこういうものは中々手に入らない。これで罪を償えるとは思えないが、少しでも何かをしたい。


「ありがとうございます!」

 ルイス君はそういうとチョコをポケットにしまった。

「食べないのか?携行用だが、溶けないわけではないんだが」

「できれば妹に食べさせてあげたいんです。こんな美味しいものがまだまだ沢山あるんだって。生きる希望を教えてあげたいんです」

「それはちょっと大げさじゃないか?終戦になったらこういうものは少し贅沢すれば食えるようになる」

「……。僕が先日戦った国の移民という事はご存じですか?」

「えっ?!ええ……」

 俺はたまらず声に出してしまうが、ギリギリのところでごまかした。

 つまり俺は元同じ国の人たちと戦わせていたいたのか……

 そんなの恨まれても……

 冷や汗がだらだらと出て来て背筋がゾクゾクしてくる。

「あの国では兵士や戦場に出る身分の人たちに食料供給をしているんです」

「それはうちもだろう」

「そういうレベルではありません。平時でも、それこそ、わが国の上級国民のように贅沢をさせています。そのせいで僕のような下級民はそれこそ日々の生きる食べ物もありません。

子供が食べるために死んだ親がいるというのもよくある話です。もちろん逆も……その時の味は……家族を救うためにはこれしか……」

 その後の言葉は上手く聞き取れなかったがルイス君は満面の狂気の笑顔で語っている。

 ……

 もしかして、こいつもヤバイやつか?さっきから聞こえないレベルでボソボソと小声で話しているし、何か凄い地雷を踏んでしまったようだ。

 もしかしてこの場で2番目にマトモに会話できそうなのはミシェアか?

 チラリと彼女の方をみると背を伸ばしてクッションに手を伸ばしている。こうやってみると彼女も普通の女の子なのに、中身は軍部の天才科学者。


 人の命をモノとしてしか考えていない異常者だが……

 ガタンと揺れるたびに乳が揺れている。背を伸ばして、胸を張っているせいか、揺れ具合がすごい事になっていた。


 くそ!メスガキのくせにそんな乳しやがって!乳の形が分かる服着やがって!お前は自身の高レベルドスケベボディがどれだけヤバいか自覚しいているのか?

 ゆるさん!お親が泣くぞ!


と心の中で思いながら見つめているとミシェアが


「ん?ドクターもほしい?」と聞いてきたがモノをみると1つしかなさそうだった。


「いや、いい。つま先立ちで立ってると危ないぞ。俺が取ろうか?」


「いいよー大丈夫だって♡」




 トラック内には色々装備されているが人数分クッションを置いていないのか?と思ったが、きょろきょろと見回しても軍事物資もとい武器ばかり。


 エンドメーカーズ部隊兵器製造部が面白半分で作った対戦車用ガトリング砲がこれでもかと置いてある。


そういえば兵器製造部のデスアローン君いわく、「昨今の戦車の装甲では既存の対戦車用ライフルでは貫けないようになっている、


だが!対戦車用ガトリングガンなら手のひらサイズの弾丸をバンバン撃つことで貫通する事が可能!質量こそが正義!


これがロマンだ!!ひゃっはー!」とか何とか言っていた。


 弾薬箱も大量にあるし、爆弾にもある……普段からこんなもん積んでんのかよ……


 でもアリアという少女は助手席に座り、道案内をしている。それにしても、こんな武器まみれでどっかに行くとかどうなんだ?まあ、武器を降ろすのが面倒だったとはいえ……


「みんな!掴まれ!」


 キャプテンの大声が聞こえた瞬間、キキーっとブレーキ音が聞こえると、クッションを取ろうと立ち上がっていたミシェアがクルクルと回りながらこちらに近づいてきて、、

俺に両手で壁ドンしてきた。目の前にでかい乳が触れるか触れないかの部分まで近づき、タプタプと揺れ、香水の香りがする。

 ふおおおおおお!これはメスガキの乳!これはメスガキの乳!冷静になれ!触れたら社会的に死ぬ!ってかボタンが!ボタンが死ぬ!耐えろ!

顔を見るとニヤニヤと目を細め、妖艶な声で話しかけてきた。


「なにみてるのかな?ドクターの変態♡みーたんのセクシーワガママボディーにメロメロになっちゃった?」


 くそ!このメスガキ!と言いたくなったが、「車が走っている時に立ち上がると危険だ。これに懲りて気を付けた方がいいぞ、ミシェア」と諭す。


「はーい」


 スルーしてくれたか……


 「すまねえ!でけえ鳥が飛び出してきた。みんな無事か?」


「全員無事です。キャプテン」


 ルイスがさっと見回し、答えた。


 フロントガラスの前には2メートルほどの高さはありそうな真っ黄色な鳥が轢かれて、うずくまっていたが、すぐに起き上がり逃げていった。


「なんだあのクソデカいバケモノは……」


「キャプテンさん知らないのですか?チョッコボ鳥です。シチューとかに入れませんか?」


「そうか……」


 さすがのキャプテンも初めて見る巨大鳥に声色が震えているのとは対照的に


「いつかキャプテンさんたちにご馳走できる日がくればよいのですが」とアリアの声色は普通であった。


「ああ……」


「じゃあ、みんなまた走らせるぞ……」


 それにしても田舎の生き物って大きいんだな…

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