第24話 第3章 竜の姫とコーラとコミックとミュージック その1 主人公視点


「キャプテンさん!ドクターさん、みなさんもありがとうございました。それにしてもよろしかったのでしょうか?

 お召し物もいただいて、このような物を動かすのも大変なのでは?」

「まあいいってことよ。俺はあんたを気に入った。ドクターをかばってくれたことのお礼みたいなもんだ。気にするな」

「でも、あの時高台にいた人が魔道具で毒針を打ち落としていましたし、私がただケガを負っただけです。ここまでしてもらうのは……」

「ごちゃごちゃうるせえ!俺が気に入った。それだけで十分なんだよ!それに部隊から俺を含めて3人借りてくって言ったときに快く了承したドクターに感謝するんだな」

「ドクターさん!ありがとうございます……」

 前の助手席から身を乗り出して頭を下げている少女に俺は「ああ」と言って手を振る。 

「ところでこれ、ほどいてもらう事はできますでしょうか……」

 助手席に座らされている少女は前で両手首を手錠で縛られ、傍からみたらテロリストに人質にされている女の子だ。

 くそ!あんな年齢の女の子……ってか女性を縛って拉致監禁でトラック移動とか犯罪だ。

 他のやつに見つかったら、どう考えても軍部の暴走だぞ……

「ああん、じゃあ、勝手にどっか行くのを止めてくれりゃあほどいてやるぜ」

 キャプテンは横顔だが、めちゃくちゃいい笑顔で笑っていた。完全に少女を誘拐した犯罪者だ。

 少女はなにやらトラブルに巻き込まれて命の危機らしい。

 今のご時世よくある事だ。名前も聞いた事ない国の名前の聞いたことのない権力者がひっきりなしに新聞に死亡通知が毎日名を綴られている。

 「うう、前にもお話しましたが、私は追われています……助けて頂いた上に皆さんの命を危険に晒すわけには……」

「俺を誰だと思っているキャプテンボマーだぞ!どんな奴が来ようとなんとかしてやる!」

 答えになってねえよ!と心の中でツッコむ。仕方ない。俺が行こう。

「アリアちゃんだっけ?もうトラックは動き始めた。徒歩ではもう戻るのはもう無理だ。とりあえず手錠の鍵は外すから、大人しくしててくれ」

 キャプテンに目をやると目線で鍵の場所を合図してくれた。

 俺は鍵を取り出し、外した。そして元の席に戻る。

 「アリアちゃんの事情は知らないが、ここは大人に任せておけ」


「ドクターわかってるぅ、じゃあ、お嬢ちゃんを拾った所までいく、後は教えてくれ」

 キャプテンは軍用トラックを運転しながら鼻歌を歌っていた。。

 どことなくだが少女の顔には暗の雰囲気は消えてはいなかった。

 まあ、手錠で縛ってトラックに乗せるマッチョとか警戒心マックスだろう。そんなのが隣にいるんだ。

 だが、キャプテンの雰囲気はあまあま明るい。

 キャプテンは極悪非道なやつだが、認めた相手には優しい。アリアという少女が俺を命がけでかばおうとしたことで気に入ったのだろう。


 これで気分次第でこの娘を殺すような事はしないはずだ。

 そう思いたい……

  彼女には女性隊員用のシャツを着させているが、気温の割には袖の長い服を着ている。明らかに肌の事を気にしていると察せられた。

 彼女はいったい何者なのだろうか。

 「あの、ドクター、やっぱりドクターが付いてくるのは危険なのでは?あの娘も何者かわかりません。基地でみんなでいた方が……」

 ガタガタと揺れるトラック内部、隣にいたハンニバル・ルイス二等兵が心配して尋ねてきた。

その声は小さく、アリアに配慮しての事なのだろう。


 アリアに巨大クモの針が刺さったあと、手術を行い、こっそりと彼女の遺伝子を調べた。

 調べたといってもミシェアの能力を使ってだが、そして、その結果はアリアの事をバケモノだとミシェアは言っていた。

 ミシェアは冗談は言っても、大事な事で嘘はつかない。人間に極めて近い存在ながら、未知の爬虫類といっていい、どれにも類似しないDNAを検出。

 人に近い何かと、未知の生き物のハイブリットが彼女だという。そんな彼女をミシェアは危険だという判断をした。

 ミシェアの知識を持ったとしても分からないという存在を基地に置くわけにはいかない。しかし、俺をかばったという事で無下にしたくないという意見もあり、

 彼女を送り届けるという案で落ち着いた。

 ルイスは前者の意見の方が強いらしく、直接心配をしてきた。

「俺の研究分野は遺伝子改良と変化だ。かなり興味がある。少しでも何かが分かればなと思ってな。それにキャプテンやルイス君がいるだろう。基地にいるのも車にいるのも変わらん」

「ドクター……僕、頑張りますね!」 

 彼は可愛らしい顔でこちらをみていた。

 けれどこれは嘘である。

 遺伝子改良とかよくわかんないし、興味もない。しかし、こんな狂暴な仲間たちがちゃんと送り届けれるか不安なのだ。

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