第18話 第1章 その11

その瞬間、銃声が何発も鳴り響く、目に高台にいたイドリスがリボルバーを構えて立っているのが見えた。 

 銃弾は針を打ち落とし、彼女は盛大に俺にのしかかってしまった。

 「す、すまない!」

 俺は少女に声をかける。

 「イレイナ!遊んでいる場合じゃねえ!!こいつドクターを襲いやがったぞ!」


 キャプテンはライフルを一切のぶれもなく、静かに引き金を引いた。


 発砲音と共にクモの頭を撃ち抜き、「キキっ」と悲鳴を上げたあと。


 「パアアアアンンン!!!」と破裂音と共に赤と緑の綺麗な花火と白色の体液が飛び散りながら頭は弾け飛んだ。

クモの重い身体がズシンと沈み倒れ込む。

「あー!オレのプレゼントォォ!!」

 イレイナの悲鳴のような叫びが近くで聞こえた。

 だからあんなもの食わねえって!

 

 「そんな、ジャイアントポイズンスパイダーがあんなに簡単に……」

 アリアちゃんは目を丸くして安堵した。俺は立ち上がって、彼女の手を伸ばす。

 「危ない所、助けてくれてありがとう。立てるかい?」


「はい……」

「とりあえず、落ち着いて医務室でゆっくりと話を……」

 去ろうとした瞬間、どさりと音がなる。振り返るとアリアちゃんは地面に倒れ込んでおり、二の腕には毒々しい色の針が刺さっていて、その周辺の肉も変色していた。

 イドリスの打った弾丸はあくまで俺に向けられたものか撃ち落していない。

 流れ針が彼女には当たっていたようだった。

 「くそ!みんな来てくれ!」

 

 俺の叫びを聞きつけて、仲間たちが近寄って来る。そこにはミシェアもいた。

 「ミシェア!はやく、これを抜いて治療しないと!おそらくこれは毒だ!」

 「えー、抜いてってドクターの変態♡か弱い女の子に何頼んでいるのかなー?」

 こいつ……


 「それに、こいつは別に仲間じゃないでしょ。どうしてみーたんがそんな手間をかけないといけないわけ?」

「ミシェア……」

 俺はミシェアの目を見つめる。ってか俺には解毒なんてできないし、針を抜く手術もできねえ!

 このままだったら、この娘が死んでしまうし、俺が人体改造以外無能としれたら、謀反を起こしそうなやつが何人かいるから頼むよー!

「まあ、ドクターをかばおうとしてたの見てたし、いいよ。助けても。お礼は高級レストランのミシューラの最高級ディナーでよろしくう!高級ソーダもつけてくれないとだめだからね!」

 「おう!一番高いやつを注文していいからな!」

 すぐさま医療班が担架を持ってきて、ゆっくりと乗せる。ハサミを取り出し、患部を分かりやすくするため服を切っていた。

 キャプテンが「ガキの肌何てみるもんじゃねえ。それにドクターを庇おうとするヤツだぞ」といって野次馬を追い払っていた。

 「ドクター、ミシェア様もちょっとこっちに来てください」

 医療班から声をかけられる。

 「どうした?」

 そういって担架の上の彼女を見る。そこには皮膚にこびりついたように生えている緑色の鱗があった。

 「おいおい、なんだよこれ……」

「これってドクターの技術じゃありませんか?」

「いや、類似品であったら想像がつくが、爬虫類とのハイブリットなんて部隊にいたことない」

「襲ってきたあいつらといい。既存のクモとは思えない巨大クモといい。この娘といい何なのかしらね?ここ」

 ミシェアがぼそりと呟く。

「さあな」


 そういって俺たちは医務室へとむかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る