第17話 第1章 その10
なんじゃこりゃあああああああ!」
外には全長8メートルほどある蜘蛛が暴れまわっている。胴の大きさも中型車並みに大きい。まさに歩く戦車のようだった。そして下にはイレイナが下で避け回っていた。
あちこちで何台か車が破壊されており、煙を上げている。
クモは何十キロもありそうな足が勢いよく振り押し、地面には穴が開いていた。
地面はコンクリート製だが蜘蛛の足はそれより硬いらしく、一切潰れている様子はない。
まさにバケモノ、モンスターだ……
それにしてもどうして周りの兵士たちは見ているだけなんだ?
誰も助けないのか?
「ジャイアントポイズンスパイダー……やはり私を追って……」
アリアという少女がぼそりと呟いた。
この少女……何か知っているのか……
いや、今はイレイナを助ける方が先!
「イレイナー!大丈夫か?!」
「ドクター。良いところに。見てみろよ!この大きなクモ!オレが昔住んでた森でもこんなに大きいクモは見たことないぜ!」
彼女は俺に気づき、こちらを見ながら背中に目があるかの如く器用に振り下ろされる足を避けている。
はは……そういや、この娘。こういう娘だったよな。
危機感が足りないというか、目の前の事に夢中になって先の事が見えないというか……
というより、イレイナは能力を得る前から身体能力だ強すぎて、素手で猛獣を殺して食べていたような奴だ。そのせいか人が危険と思うラインが低すぎる。
それに「ヒューやっちまえ!」「イレイナ格好いい!」
と周りはまるで何かのショーのように盛り上がっている。
いや、誰か止めろよ。お前らがショーを楽しんでいるから彼女が常識的なラインが学べないんだぞ。
この前、実験動物のゴリラが逃げた時、普通に向かっていったんだぞ。その時、『わあ!でっけえサルだ!ドクター、鍋にして食べようぜ!』みたいな幻聴が聞こえた気がするぐらいの衝撃だったぞ。
あんな黙ってたらイケメン女子みたいなやつがそんな事をいう訳ないし、気のせいだろうとスルーしたが……
というより、姿を隠せて暗殺特化能力なのになぜ彼女は姿を見せているんだ?時折、しゃがむ際にむっちりする太ももを見せつけるためか?
クソッ!このスケベワイルドセクシー女戦士めっ!
「ね、いったでしょドクター。こんなすげえバトル見逃しちゃったらもったいないぜ!」
呼びにきたやつがニコニコ笑顔で語りかけてきた。
うん。こういうやつらだもんな。みんな。
どうしてこうもみんな戦闘狂なのだ。
「イレイナー、なんで一人で戦っている!?何が目的だ?」
俺はイレイナに大声で声をかける。イレイナの戦闘能力なら話しかけても問題はないだろう。
「知ってるか?クモは丸焼きにするととても美味しいんだ。お腹なんて、もうそれは旨くて、その風味も……だからさ。一緒に食おうぜ」
「そんなゲテモノ食えるかぁあ!!」
「がーん」
なんだか間抜けな声が聞こえたが、あのワイルドビューティーな彼女がそんなことをいうわけがない。まあ、気のせいだろう。
「えー、旨いのに。ドクターってば偏食は良くないぜ。イレイナちゃんドクターに綺麗な状態で食べさせたいっていってあんなに頑張っているのに」
と隣にいたやつが残念そうに言ってきた。
うーん、みんな兵役が長くてサバイバル食に慣れ過ぎてしまっている。戦争は恐ろしい。
その時、クモはしゃがみ込むと大きく跳躍し、イレイナから離れさった。
なんて機動力。戦車規模の大きさでハエトリグモのような軽やかな動きをしている。
まさに生体兵器だ……
「ちいっ!なんて動きしてやがる!!」
イレイナもしゃがみ込み跳躍していった。
ん、でもあの飛んでいった先は……
「あー!」
俺の最近買った車に飛んでゆき、その重そうな身体が重くのしかかった。
イレイナが着地した瞬間、動きやすさ重視で来ているホットパンツから見える太ももが肉と肉でぶつかり、ムチィ♡とする音が聞こえた気がするが、
ミシミシミシっとプレスされるどでかい音にかき消されてしまい、そして見事に車はぺったんこになってしまった。
「お、俺の新車……」
思わず、小さく声に漏れてしまった。
しかし、誰もそのこと気にしていない。みんなクモと美女の対決に盛り上がっている。
カオスだ……上官、彼女がいないせいで部隊のほとんどが自由にやっている。キャプテンも隣で「いいぞ!もっとやれ」って言って盛り上がっている
だれか止めてくれ……
クモの8つの目がこちらを捉える。
あれ?なんかこっちみてない?
ふと、二の腕に着けたアルコールを思い出す。
そういや、昔見た巨大クモが暴れる映画でクモは匂いに敏感だと言っていたな……。
そう思っていると、口からブシュっと針状の物質をいくつもこちらに飛ばしてきた。大きさも30cmほどあり、一目でヤバいとわかる大きさだ。
えっ、あのクモそんな事できるの?普通、ありえなくない?生物としておかしいでしょ……ってか、こんなの当たったら死んじゃうよ……
それにしても世界が走馬灯のようにゆっくりと過ぎていく。
これ、もしかして本当に死ぬパターンか?とうとうやっちまったのか俺……
「あぶない!」
隣にいたアリアちゃんが俺を突き飛ばした。
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