第16話 第1章 その9

「お、おい!大丈夫か?」


 俺は娘に尋ねる。やっぱり何かあったんじゃないか……


「い、いえ……そうだ仲間は?他に5人いるの!」


 キャプテンの方をみると首を横に振った。

 「俺はお前しか見ていない……友達か?」


「……」


 少女は何も言わなかった。しかし、その顔は悲しみの表情に歪んでいた。


「一体なにがあったんだ?」


 キャプテンは彼女に質問をする。

「何ってあなたたち、私が……いや……」

 彼女は何か考え込むように少し言いかけた。

 しかし、彼女は可憐にベットから降り、ボロボロのドレスではあるが気品を感じさせる振る舞いで背筋を正した。

「アリア・フィン・ドラゴロード。ドラゴナイト帝国第7王女が1人。この度は助けて頂いて誠に感謝いたします」

 彼女は礼儀正しく、淑女のような振る舞いで頭を下げる。

 貴族社会とはあまり関係のなかった立場だったが、振る舞いだけで身分の違いというものがひしひしと伝わってきた。

 しても、ドラゴナイト帝国ってどこだ?最近、国が消えては産まれて戦争しての繰り返しで覚えきれていない。

 政治に詳しいヤツを連れてきた方がいいだろうか?

 ここにいる二人はそういう事には向いていない。

「しかし、私は追われる身。このままでは助けていただいた貴方たちにまで危害が及びます。このような形でしか感謝を伝える事しかできない事を許してください。」

 そういって彼女は首にかけていた一目で高価だとわかる装飾の凝ったルビーのペンダントを外し、机に置いた。

 

 

 「なあ、ドクター。俺は何者を連れて来たんだ?それに何だあの宝石、本物か?」

 キャプテンはアリアちゃんに伝わる声で俺たちに質問してきた。

 「いや、宝石なんて分からないぞ。こういうことは女のミシェアに聞くもんだろう」

 俺は少し小さめな声でキャプテンに言葉を返す。ってかそんな事を口にだすな!と心の中で思う。

 「どんな宝石よりもみーたんの方が奇麗で輝いているのでこういうのには興味ありませーん。それにあんな大きいルビー偽物でしょ」

 こいつ……こういう事はこっそり言え……

 ミシェアも露骨に大きな声で返し、アリアの表情は悔しそうな顔で歪んでいった。


「ううっ……たしかに今はこのような身なりで、疑うのも無理はありません……しかし、これが今持っているもので一番価値のあるモノがこれしかなく……」

 


 ドンドン! 


 ドアがノックされ、開けられる。

 「どうした?ここは医務室だそ」

 「ドクター!緊急事態です!!はやく駐車場まで!」

 その瞬間、轟音が響き渡ってきた。

 「な、なにが起きたんだ?て、敵襲か?」

「ま、まさか……」

 アリアは青ざめた表情で慌てて、走り出していく。

 「って、まて!」

 キャプテンは慌てて追いかけた。

 ミシェアと俺も続いて追いかけていく。

 外に出るとその光景に俺はたまらず声を出した。

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