第15話 第1章 その8
「しー」
ミシェアが唇に人差し指を立てる。
娘はゆっくりと目を覚まし、きょろきょろと見渡した。
やつれているが、なかなかの美少女だ。綺麗な二重に整った輪郭、将来は美人さんになるだろうなって雰囲気がある。
緑色の髪は長く手入れをされていて、彼女にとても似合っていた。
肉付きもよく、栄養失調の様子もない。それどころか爪も多少割れてはいるが、手入れの痕跡がわかる。
こいつは良いところのお嬢さんだ。
「わ、私……うっっ」
肩はガタガタ震え、目には涙を溜めていた。吐き気をこらえているのか口に手を押さえ、嗚咽を漏らしている。
「キャプテン、あなたこんな年端もいかない娘になにしたの?」
ミシェアはあきれたようにキャプテンに言ったが
「ちげえよ」
とあっけらかんに否定した。
「あの、私……ってあなたたち何者!?ここは?」
少女は目を丸くして少し後ずさった。
そりゃムキムキマッチョのコスプレイヤーに監禁されていたらそりゃビビるよなあ。
キャプテンの顔いかついし、NTRに出てくるヤベーヤツみたいなもんだ。
圧倒的フィジカルエリート反社会的フェイス極悪非道の超悪党だ。
このまま小娘に襲い掛かってもおかしくない雰囲気はある。
「命を助けて貰っておいて、その言いぐさはしつけのなってねえお嬢ちゃんだな」
キャプテンは言い方のわりに穏やかな声で少女に話した。
「す、すみません……」
ふとキャプテンをみると腰に付けたライフルをいつでも抜けるようにホルスターの留め具を外していた。
キャプテンの持つ武器は弾薬に自身の血を付けている。
人間爆弾の爆弾血液は銃で撃ち、当たった瞬間起爆するよう調整をかけられていて、
その弾丸に撃たれたら最後、半径30センチは爆発する。
もちろん、もっと大爆発を起こすことも可能だが、普段はその範囲で爆発するようになっている。
そんな弾丸で撃たれると身体が内側から破裂して100パーセント死ぬ。
キャプテンいわく、この爆発範囲が一番痛みを感じて死ぬ威力らしい。
そんな武器を女の子あいてにむけようとしていた。
この子、同じ言葉を話しているし、こんな子供に警戒しているなんてキャプテンも以外と小心者であるが、キャプテンなら子供でも任務のためなら殺しかねない。
少し、手を出そう。
「で、君、名前は?」
「アリア……アリアです。」
「わかった。アリアちゃん、まあ、この怖いお兄さん。キャプテンボマーはイカツイし、口調は悪いが悪いやつじゃない」
「そうだ。このキャプテンボマーは戦場を駆ける偉大なヒーローだ」
キャプテンは胸を張る。筋肉が隆起し、グッジョブサインをしてた後、ウィンクして、無害アピールをしている。
「ああ、こいつはみんなの頼れるヒーローだ。心配しなくていい……」
いや、それは嘘だ。キャプテンボマーことクリス・ブッチャーは改造前から良い噂は聞かない。
やれ、捕虜に地雷原を歩かせて誰が最後まで生き残るか賭けたり、
敵兵に時限爆弾を巻き付かせて敵軍に帰らせて助けにきたやつごと爆破させたりマトモなやつではない。改造後はもっと趣味が悪くなった。
弾薬に自身の薬液を付け、撃った相手を爆破させる死神になってしまった。そのうえ軍部も超人化計画の初期で期待も高かったのか高い階級を用意し、
大佐になってしまった。そのため彼を止める立場の人間がごくわずかになってしまい、やりたい放題好き放題になっている。
まあ、大佐と言っても特殊すぎる部隊の箔をつけるためのお飾りだ。本隊の大佐のような役職ではないが、上官には変わりない。
本人は軍部のヒーローとして広報部にキャラ付けして宣伝してくれと頼んでいるが……
ヒーローというより悪役だ。
どうにかこうにか、彼女と彼が関わらないようにしないと……
「ありがとうございました!あの時、助けていただいていなければ死んでいました」
少女は擦れた声だが以外にも声色は力強く答えてきた。
ええ……キャプテン、この娘になにした……
「だからドクター、別にこいつには何もしてねえって言っているだろ。」
キャプテンはかっこよくウィンクをした。
いや、お前、それ似合ってないから……怖いから……
その瞬間、娘の目から大粒の涙が再びボロボロとこぼれていった。
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