第14話 第1章 その7
薬品が香る医務室。キャプテンボマーは娘をベットに寝かせた。
「で、キャプテンはどうして、こんな小娘を拾ってきてるんですかぁ。子供の誘拐はちょっと引くんですけど~」
とミシェアはからかうようにキャプテンに笑いかける。
「だから、狼に襲われてたって言ってんだろ。それに俺はキャプテンボマーだ!カッコイイリーダーで国民的スーパーヒーロー。
俺の偉大なる戦歴は俺が死んでも映画で語り継がれ、ガキどもは俺が主役のコミックで俺の偉大さを知る。
そんな俺がガキに手ぇだしゃあ、未来のスターのスキャンダルだ。やるわけねえだろ」
キャブテンが冗談交じりに笑っている。
「キャプテン……」
彼の顔を見ると髭をさすり、恰好をつけている
「格好つけているのはいいけど、キャプテン、この娘の近くで爆発させたでしょ。一歩間違えれば肉片になってたわよ」
ミシェアが娘の診察をしながら答える。
「髪の毛がやや焦げているし、ツワーリー薬液の香りがプンプンしてる。後頭部の炎症からみて、爆発の衝撃派で転がって頭を打ったってところじゃない?
死んでたら、また情報統制部のお世話になるつもり?どーせ何も考えないで適当に爆破させたんでしょ。この前、一般市民全滅させたばかりなのに反省してなわけ?」
「話は変わるがドクター。ここはどこかわかるか?基地の周りの地理がまるっきり変わってやがる。ここはどこだ?」
キャプテンはこちらに振り向き、ミシェアの顔を全くみないように俺の目を見ていた。
こいつ露骨に話をそらしたな……
「話そらすの露骨すぎーぷぷぷー頭よわよわー♡筋肉だけじゃなくて、もうちょっと頭も鍛えたら?」
ミシェアはメスガキの如くニヤニヤして煽っていた。
ミシェア……お前、死にたいのか……大人の世界は恐ろしいんだぞ!
「いいんだよ。大事な時はしっかりやる。ってか、この前の市民全滅は誤解だ。あいつら全員裏切ってきたんだよ!なのに上層部は納得してくれねえし!クソクソクソ!」
キャプテンがミシェアの煽りでガチギレしているのを横目に俺は縮こまる。
くそ!メスガキだからって人の地雷を踏むんじゃない!世の中には乳を揺らしても許されない事があるんだぞ!このメスガキィ!と心の中で説教をした。
「また話が逸れているぞ。で、なんでこの娘を連れて帰ってきた。遊ぶにしちゃあ趣味がいいみたいだが」
俺は話を遮り、キャプテンの怒りを抑えようと冗談を交えて言う。
「だから違えって。ここの周囲の地形が変わっているって話だが、この異常事態はやはり軍部が作っていたという噂の空間転移装置でどこかに飛ばされたと考えている。
フェンス越しとはいえ、ほぼ毎日見ていた風景だ。周囲の景色が全然違うのを考えればそれしか思いつかない。
水道や電気はそれ系の能力者がボイラー室とかで稼働しているが、さすがに24時間稼働できねえ。にもかかわらず、わけわかんねえやつらが24時間問わず死も恐れず襲ってきている。
直接戦闘している兵士たちは交代で休息をとっているが。いつか限界がくる。少なくともあと2日以内にここを脱出したい」
「空間転移装置なんて本当に存在するのか?ってか早急に脱出なんて性急じゃないか?もっと情報を集めてからでも……」
話の点と点がつながらないので聞いてみると
「えー、ドクターそんなことも考えつかないんですかぁ?ぷぷぷー」
こ、このメスガキっ!!と叫び、ワカラセたくなる声色でミシェアが煽ってきたがぐっとこらえる。ミシェアに付き合っていたらツッコミは追い付かない。
「いないんでしょ。普通の人間が。襲ってきているあいつら、どちらかと言えば類人猿に近いわ。脳の大きさも生体組織も見たことも聞いたこともない。
能力を使って調べてみたけど、人間に極めて近いけど人間ではない何かだった。それこそ繁殖が可能なレベルでね。でも人間じゃない。
一応ドクターにも聞いたけど私と同じ意見だったし、ほぼ意思の疎通は不可能って思っていいかもね。そんなのがうじゃうじゃいるんだよ。怖くない?
それにしてもドクター、一目見ただけで推測するなんてすごーい♡」
えっ、お前そんなつもりで聞いてたの?あれギャグのつもりだったんだけど……
と心の中でネタバラシをしたくなったが、もし、適当な返しをしたとばれたら。
ミシェアに『えー、ドクターそんなこともわからなかったの~頭よわよわ~髪の毛すかすか~』と煽られかねないのでぐっと意見を飲み込んだ。
ちょっぴり顔が赤くなったが黙っておく、無言は言葉だ……。
「ともかくかれこれ、一日はこの周辺を探索しているが、建造物どころか人を全く見かけねえ。ここいらで一番高そうな高台に登っても、
草原と森ばかりだ。ようやく見つけた手がかりなんだよ。こいつは」
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