第12話 第1章 その5

「それで……、さ。ドクター。この後暇か?最近オレ任務で結構活躍してさ。褒賞でいい茶菓子を貰ったんだ。どうだい?一緒に……どうよ」


 彼女は手にある頭と肉片を振り払って落とすと、こしみのの袋に手を突っ込んで部屋の鍵をチャラチャラと鳴らした。


「大丈夫だ。君が食べてくれ、貴重なものだろう」


「そうか」


 言葉をつげた瞬間、再び透けていくように透明になり、どこかへと去っていく。


その顔はどこか寂しそうだった。


 その時、「ドクターにお部屋デート断られた……ぐすん……」と小声で聞こえた気がするが、気のせいだろう……


 ワイルドな雰囲気のあの娘がそんな事を言うはずはない。




「アビリティネーム、インビジブル・オブ・プレデター。名前はイレイナでしたっけ?肉体の周囲が透明になる能力を持つ方と聞いて

ショッボ♡って思ったけど、さすがドクター。メインは筋力改造だったんですね。服や仮面まで消えるのはどういう理屈で?」


隣にいた助手が可愛い声で質問をしてくる。


「知らない。ミシェア。調べておいてくれ」


「あーん♡ドクターのイジワル♡あんなセクシーワイルドお姉さんと可憐なアタシを一緒にさせて、何を期待しているのかなぁ?そっちは趣味じゃないよぉ♡」


 本当にこいつは……というより俺だって分からないので教えてくれ……




 と考えていると次第に叫び声は減ってゆき、フェンスの向こう側は血の海と化していた。まさに目の前で起きているのは命を無意味に潰す行為、この世の地獄のようである。


 そして、この世の地獄を作りだす彼らは俺が改造手術を行って作ってきた改造人間、特殊秘密部隊エンドメーカーズの一員たちだ。


 初めの頃は超人を作り、生活を潤しつつ、命を救う為に作ってきた。しかし、改造する者、改造するたび被験者たちの素性は凶悪になっていく。


 通常、戦場での煮炊きは危険を伴う、それにも関わらず、こんな開けた所で煙をモクモクと燃やしイノシシなんかを焼いているのか、単純である。敵を誘うためである。


  そしてホイホイとやってきた彼らは殺されてしまった。まあ、そんな所だろうな。と考えられる。

 能力の強さはそれぞれだが、各自普通の人間ではまともに勝てない。

 そんな巣穴に飛び込んできたものはお遊び感覚で人の命が吹き飛んでいってしまった。

 いざ南無さんである。



 「しかし、このヒトたち?。何なんでしょうかね……」


ミシェアが首無し死体に近づき、内ポケットからペンを取り出し、皮膚片をすくい上げた。


「何って人じゃないのか?」


 「皮膚組織の変色はおいておいても、犬歯と前歯の異常変形、耳や鼻も変形しているし


ホモサピエンスというよりは別種の種族と考えた方がよさそうな感じ。


第一、ビルビレッチ森林近郊に乞食はいれど、こんな原始人みたいな者はこの国にはいないって」


「そうか。じゃあ猿だな」

「そうね……」


 でも、なんとなくだけど、こいつらってどう見てもゴブリンだよなぁ……でも現実にゴブリンなんていないし、


俺と同じように改造人間でも作っているやつがいるのだろうか……

 それか俺の知らないだけでエッチなゲームの竿役が実際にいるのか?

 世界は広いぜ……。 

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