第32話 爆砕
「いやはや、油断大敵という言葉が今回ほど相応しいと思ったことはないよ。
ここまで圧倒的だったからねぇ、『
「本当ですね、まさかお伽噺の存在が目の前に現れるだなんて、思ってもみませんでしたわ」
隠し部屋にある宝箱、絶対に罠があるだろうと予想はしていたものの、発動した罠から現れたのが『
異界の住人である『
今回現れたのは36匹。
何とか討伐して手駒に出来たが……
「今後はこういう強敵を『雑魚』と呼べるようにならないといけないわけだね。
まぁ、『あの男』に負けないようにするなら良い修行、と前向きに考えようか」
「そうですね、わたくし今回、兄様の影でこそこそと動き回る事しか出来ませんでしたもの。
これからは堂々と兄様の隣で立ち振る舞えるように、頑張りますわっ!」
「それじゃ、これだけ苦労したんだ。
お楽しみの『宝箱』開封、といこうか」
「はいっ!」
隠し部屋の真ん中に置かれている宝箱は、先程の戦闘に巻き込まれていながら潰れたり吹っ飛んだりすることもなく、そこに在る。
どれだけ頑丈なんだろうね?と思わなくもないが何らかの魔術的処理でもされているのかもしれない。もしくは底を床に固定されている、というのもあり得る。
『
金銀財宝だったり、強力な武器防具だったり、貴重な書物や薬、それらの材料や珍しい素材等が入っていて、見つけた者に莫大な富や名誉、もしくは破滅をもたらす。
初代皇帝が探索で見つけた財宝や武具は、建国の為にその多くが売り払われたとされるが、今でも皇室が保持しているものも多い。
有名どころの魔法の武具だと、皇帝の佩剣たる『宝剣ラスニール』、ダグラス・シューリマンが皇帝から下賜された『虚空剣モルガン』、東部のサイロン辺境伯家が所有する『烈風盾ヒルドル』等だろうか。
『虚空剣モルガン』に関しては……私の四肢の腱を断ち切ってくれた、忌まわしき思い出のある剣だ。
あまりに鋭い切れ味で、斬られた事にすら最初は気付けなかったのだよね。
(『虚空剣モルガン』には公にされない恐ろしい能力もあると噂で聞いた。
そんな物を『最強の男』が振るうのだから、相応の警戒をせねば……ん?警戒?)
何か見落としている気がした。
先程の激闘を切り抜け、一安心したこのタイミングで、私は何を見落としている?
ソフィアは……問題ない。
周囲にも異常は、無い。
『宝箱』に変化は……見受けられないな。
一応、念の為に
「まずいっ、開けるなっ!!」
「え?」
ピタリ。
命令に従い、
ギリギリ触れるかどうかのところで手が止まっている。
「どうなさったんですか、兄様」
「驚かせてすまないね、ちょっとだけ気になった事があったのだよ」
「気になった事、ですか?」
「あぁ」
駆け寄ってきたソフィアの手を取り抱き寄せた私は、周囲に『
「先程の事だが、思い出してほしい。
『
「確か、『宝箱』を開けさせようと触れた瞬間……まさか!また先程のように大量の『
「それが最悪の想定その1だ。
私が想定しているのは、その次だよ。
『宝箱』の罠を破ったと思い込み、安心したところで本命の罠が作動するパターンだ。
恐らくは、『大爆発の罠』あたりじゃないかと踏んでる」
「先の戦闘で消耗させておいて、止めというわけですか!?
な、なんて悪辣な……」
「でも理には適ってるだろう?」
「悔しいですが、わたくしも仕掛ける側ならそのようにいたしますわね……」
「というわけで、念の為、さ。
よし、開けてくれ!」
チュドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン……!!
開封指示と同時に鳴り響く、轟雷の如き爆発音と閃光、そして衝撃波。
「ぬああああああああ!?」
「キャアアアアアアっ!!」
信じられない、私達を囲んでいる『
互いを抱き締めたまましばらく動けずにいた私達だったが、暫くして抱擁を解くと『
「「うわぁ……」」
目の前に広がるその余りにも凄惨な光景に、私達は開いた口が塞がらなかった。
あれだけ室内を埋め尽くしていた大量の『
「これ、何の対策も無しにあのまま開けていたら私達も消し飛んでいたね……」
「一瞬で、戦力の半分が消滅してしまうだなんて……『
「本当だよ、あまりにも酷過ぎる」
本来ならば罠の解除技能を持つものに調べさせて、罠を解除してから開ける必要があるのだが、この時の私達はそんな事すら知らなかったのだよね。
その為、こんな酷い目に合わされる事になり、この件以降暫くの間、『宝箱』を見つけても罠が怖くて放置する様になってしまったりする。
要はトラウマになってしまった、という事だよ。
私達は『死人』だというのにね。
トラウマ植え付けられるだなんて、おかしなものさ。
ん?『宝箱』の中身は何だったのか?かい?
中に入っていたのはね、『
あんな爆発に巻き込まれて無事な宝物、そうそう出てくるわけがないさ、ははははは……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます