第30話 油断
『
「おぉ、中々に広いね?
大体40~50mくらいはありそうかな?」
「これだけ広い部屋だと何が出てきてもおかしくはありませんわね」
「ソフィアの予想も
「えぇ、流石にこれだけ広い部屋となると」
広い部屋の中央には、如何にも凄いものが入っていますよ、と言わんばかりの豪華な装飾が為された『宝箱』が鎮座している。
明らかに胡散臭い。
ここまで胡散臭いと、逆に『何も仕掛けられていない』事の方が精神にダメージを受けてしまうね。
それくらい怪しく、胡散臭い。
この『宝箱』に罠が仕掛けられているとして、一体どんな罠が仕掛けられているだろうか?というネタでソフィアと少々盛り上がったりもした。
冒険譚でよく耳にする『宝箱の罠』には、ある程度のパターンがある。
A・開けると毒針が刺さる、毒ガスが出る、呪われる
B・開けると爆発する
C・魔物が擬態している
D・警報が鳴って階層内の魔物が押し寄せてくる、その場に大量に召喚される、大物が湧く
E・強制転移される、落とし穴が開き落される
概ねこれらのパターンに分類されるのだ。
これ以外にも様々な悪意に満ちた罠があると聞くが、一番多いのが「パターンA」。
だが、今回それは無いと私達は踏んでいる。
「隠し通路に罠付きの扉まで置いて、これだけの広さの部屋がされているとなれば、必然的に選択肢は限られてくる」
「むしろこれで別のパターンだった場合、がっかりしてしまいますわよ」
「分からないぞ?
この部屋ごと吹き飛ぶ規模の大爆発や釣り天井という事もあり得る」
「それならそれで、兄様はどうにかなさるのでしょう?」
「おいおい、流石に限度はあるぞ?」
「ふふふっ、分かっておりますわ」
会話をしている間にも、ぞろぞろと『
もう8割ほど部屋が埋まったんだが、まだ外に倍以上いるね?いつの間にかこんなにも増えたのかと思うと、ちょっと感慨深い。このままの勢いで階層丸ごと『
「さて、そろそろいいかな」
「開けますの?」
「あぁ、これだけの数だ、余程のものが出ない限り、数で押し潰せるだろう」
思えばこれが俗にいう、『フラグ』という奴だったのかもしれない。
「もういいかな、『開けろ』」
オォォォォォォォ……
私の命令に応じ、『
フォーーーーーーーーーン……
フォーーーーーーーーーン……
フォーーーーーーーーーン……
その瞬間、部屋中に鳴り響く大音響!
「まだ開けてもいないのに『警報』だと!?」
「ですが兄様、この数なら……えっ」
ソフィアの声を遮る様に部屋中至る所に現れる魔法陣、魔法陣、魔法陣!
そこからのそりと姿を現した異形を見て、私達は息を吞んだ。
それらは赤銅色の肌をした怪物。
山羊の如き角を生やした馬頭の異面、筋骨隆々とした肉体に、手足には鋭い爪。
背中に蝙蝠の様な翼と、鞭の様にしなる獅子の如き尾。
それはこの世界に生きるもの全ての『敵対者』。
相互理解など不可能な『異界よりの侵略者』。
絵物語で語られたその名は____『
「くっ!ソフィアッ私の傍を離れるなっ!
総員、押し潰せええええええええええ!!」
物見遊山な気分など、一瞬で消し飛んだ。
こいつらはヤバい。
すぐにでも始末しなければ面倒な事になるっ!
部屋の中に現れた魔法陣の数はざっと30以上。
少なくとも30匹以上の『
「その命、捧げよっ!『
GYUOOOOOOOOOOOOO!?
この世界の『生者』とは少々異なる『
ちっ、振り払われたっ!
周囲の『
GUOOOOOOO!!
慌ててその場を飛びのくと、残っていた『
別の『
「こいつら、誰が指揮官かを理解しているのかっ!」
私に狙いを定めているという事は、マズい!ソフィアも狙われるっ!
「ソフィアッ」「大丈夫です兄様っ!その命、捧げよっ!『
GYUOOOOOOOOOOOOO!?
いつの間にかソフィアは、私が最初に『生命』を啜った個体の背後に回り込み、その尾を掴んで『生命』を喰らっていく!私が吹き飛ばされた時に機転をきかしたのだろう、素晴らしいっ!不意を突かれたその『
だが、他の『
その内の数体が、聞いた事も無い言葉で何事かを唱え始めたのが聞こえた。
高まる魔力の波動に危険を感じそちらを見れば、渦巻く炎が宙に現れ、揺らめいているではないか!
「「「Горящее пламя, превратитесь в руины и победите врага」」」
「まさか『魔法』かっ!」「兄様っ!?」
「「「『Харито』」」」
無数の炎の礫が私目がけて襲いかかってくる。
反射的に数体の『
数発、私の身体を強かに打ちつけたっ!
痛みはないが、当たった場所が焼け焦げたような嫌な感覚がするねっ!
肉体が部分的に炭化したせいか、動きにくいったらないよ。
私の動きが鈍ったのを好機と見たか、近くに居た数体が一気に距離を詰めてくるが。
「甘いっ!
私とて騎士だったのだよっ?
乱戦上等、かかってきたまえっ」
ここにきてようやく私は
全く……『死人』になってその能力に頼り過ぎていたよ。
「私は騎士だというのにね。
『食事』に夢中になって、『敵』の前だというのに剣も抜かずに戦場に立つだなんて。
愛しい妹の前で恥ずかしい姿を晒してしまったではないかねっ!相応の報いは受けてもらうぞっ!」
「兄様、頑張ってくださいましっ!」
あぁ、兄様は超頑張るとも!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます