第6話 実験
「おぃぃ……あぁ……あぅ……(兄様、大変美味しゅうございました。少しだけですが、なんだか身体に力が漲るような気がしますわ)」
「やはり『生命』を啜る事が『死人』の肉体に活力を与える、という考えに間違いは無さそうだね。
どれだけの『生命』が回復の為に必要かは分からないが、沢山食べて早く元気になろう」
「あぃ……(はい!)」
可愛いソフィアに有象無象の男の『生命』を啜らせるのが何となく嫌だったので、彼女にはとりあえずメイド達を『食事』として与えたのだが、満足してくれたようで何よりだ。シスコン兄の醜い嫉妬と笑ってくれても構わんよ?事実なのでね!(開き直り)
元看守と新しく『
「ふむ、やはり『生命』を啜った亡骸とそうでない亡骸では、違うのだね」
「あぅぁ……えぉ……(あれは亡くなられた方の霊が留まっている、のでしょうか?)」
「どうやらそのようだね。
私達が啜っている『生命』は、その者の『魂』を啜っているのと変わらないという事なのかな。
『魂』を失い抜け殻になった骸に雑霊共が寄ってくる、と。
それに対して『
『
死して『魂』を穢され、肉体から離れられずに苦しんだ末に『
『
ある程、あれが『魂』が穢れていく、という事なのだろう。
人の身で『魂』を見る事など出来るわけもないので、長い事『
死者死霊を魔術的に扱う魔導士『死霊術師』ならこういった事に詳しいかもしれないが、彼等は教会から『死者を冒涜する存在』として粛清対象とされている為、表に姿を現す事など滅多にない。対『
故に、こうした学びの時間は非常に貴重だ。
城からの脱出を優先しないといけない為、悠長に時間を費やしていられないのが残念ではあるが。
『
それらの『観察』を私はソフィアに任せる事にする。
研究素材はまだ他にもあるのだ。
私は私に出来る実験をさっさと済ませる方が効率は良いだろう。
「それでは彼等の観察は任せるよ、ソフィア」
「あぃ……おぅぁ……あぅ……(はい!お任せくださいな)」
震える囚人たちを相手に、私は時間の許す限り『試してみたい事』を試し続けた。
…
……
………
「う~む、結論から言って、私はまだまだ『死人』の力を上手く引き出しきれていないのだなぁ」
「うぁ……あぅぅぁ……うぅ……(落ち込まないでくださいませ兄様、つ、次がございますわ!)」
囚人相手に実験した事、それは以下の事柄だ。
・『
↓
生み出す事は可能。
『生者』から『生命』を吸い、「雑霊」を憑依させる→『
『生者』から『生命』を吸い、「悪霊」等を憑依させる→『
適当に殺した者に「悪霊」等を憑依させる→『
その辺の骨 (全身が一式揃っている物に限る)に「悪霊」等を憑依させる→『
……と、大体こんな結果になった。
ちなみに『
『
私達の収監されていた部屋以外にも大量に人骨が転がっていた為、それらを使ってかなりの数を生み出す事が出来たのは幸いだと言える。
肉が無い為、腕力は『
そう言えば『
他にも『
出来れば今も周囲を飛び回っている悪霊・怨霊といった類の『霊体』型の『
まぁ、大量に『
私達の様に意思ある『死人』を人為的に生み出すのは、今の私にはまだ難しそうだ。
・『
↓
肉体が崩壊し、欠片も残らず塵となる。
『
ほんの微かに、それこそ摘まんだら吹き飛んでしまう程度の『塵』に、である。
流石にこの結果には驚かされたが、納得もした。
以前戦場跡に沸いた『
『不浄なる死者は土に還れ』とは『
恐らく私達『死人』も、滅ぼされる時は……。
まぁ、その時はその時、かな。
今はこの城を脱する方法を考えよう。
どの程度役立つかは分からないが『駒』はそれなりの数は用意出来そうだ。
・『
これは『
理由としては、最初に生み出した『
それを実感したのは牢の隙間から抜け出して囚人を襲おうとした『
ちなみにこの『
しょげていたように見えたのはきっと気のせいだろう。
それから幾つかの『試し』を終えた私は、ソフィアを連れ看守室に戻る事にした。
生み出した『
「あとは帝城内の情報と……策が要るな」
「あぅぁ……おぁぉ……(ようやく打って出るのですか?)」
「もう少し準備が要るかな。
ここは帝城、私達は地の利がない敵地に居るのだよ。
ガイウスに仕掛けるにせよ、ここを抜け出すにせよ、準備が要るからね。
レイオット達の協力が素直に得られればいいのだが……」
看守室に彼等を行かせてから結構な時間が経つ。
城の衛兵達がなだれ込んでこない事を考えると、彼等が逃げたり私達の存在を衛兵たちに告げたりはしていないだろう事は予想できる。
が、それで彼らが協力してくれるかどうかは分からないからね。
「死んでも構わない」という気持ちは本当だろうけど、それが私達の味方になるという意味だと簡単に信じるほど、私はお人よしではない。
それでは改めて、彼等の真意を確認しに行くとしようか。
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