第6話:俺の羅利子拝(らりこっぱい)。

いいことは親父の出世だけでは終わらなかった。


親父がパチスロで買った金で宝くじを買ったら、なんと三億円当たった。

しかも商店街のくじ引きで母ちゃんがハワイ旅行を当てた。


なにこれ・・・これも羅利子効果?


おまけに俺は美術部の同級生から環境がテーマのコンクールのデザインを

頼まれてそいつの変わりにポスターを描いて俺の名前で出品したら

俺が描いたポスターが全美連とかって大会で最優秀賞とかってのを取った。


校長から呼ばれて


「浅野君・・・君ね、ぜひ授賞式に参加してくれたまえ」


でもって今年の全美連大会のパーティーと授賞式が北海道で開催される

んだそうだ。


で俺は北海道に行くことになった。

北海道までの旅費は大会の招待だから俺はタダ。


だから北海道は俺ひとりで行くことになるわけで喜ばなきゃいけない

ところなんだけど、めんどくさ〜って感じ。

このさい家族旅行ってのはどうだろうって思って母ちゃんに事情を話したら、

父ちゃんと母ちゃんの北海道行きは旅費がもったいないからと却下された。


うそ〜三億円当たっただろうが・・・そのくらいの出費屁でもねえだろ


しかたないので羅利子だけ連れて北海道に行くって言ったら未成年の女の子

同伴はマズいんじゃね?ってことになった。


え?大丈夫だろ、未成年でも引率者がいたらさ。

そう言えば羅利子の歳って何歳だ?


「羅利子・・・おまえ何歳?」


「妖怪の歳だと八百歳くらいかも・・・人間の歳で言うと15歳」


「八百歳だって?・・・まじでか?・・・八百歳も生きてるのか?」

「本当か?それ」


「よく分かんない」


「なんでよ」


「だって嘘、八百って言うじゃん」


「人をからかってる場合か」


「それにしたってこの子、八百歳です、なんて言ったって相手の顔から笑顔が

消えるか帰れって言われるのがオチだからな」


「ここは15歳優先だな・・・」


その話を、そばで聞いていた羅利子が言った。


「大丈夫だよ、私壮太のショルダーかポケットに入っていくから・・・

そしたら私の旅費いらないでしょ」


ん?なに言ってる?

なに言ってんだ、この子はって俺は思った。


「どうやってショルダーかポケットに入るんだよそんなデカい図体してて・・・」

「入れないのくらいバカでも分かるぞ」


すると羅利子は・・・俺と母ちゃんが見てる前で見る間に小さくなっていた。

小さくなった羅利子が手を振るのを見て俺はフィギュアじゃんって思った。


それを見た、母ちゃん・・・ハエたたきを持って来て羅利子をしばこうとした。


「おいおい、やめろよ・・・そんなもんで羅利子をしばいて羅利子がハエみたい

にぺしゃんこにツブれたら母ちゃん間違いなく地獄行きだぞ」


「およよ、羅利子・・・小さくなれるってそんなことできるんだ?」

「ちっこくなれるなんて聞いてないぞ」


「聞かれないことは言わないの」


「そうか・・・いろいろ便利だな、おまえ」

「じゃ〜行くか北海道」


そう言って俺はショルダーの中に羅利子入れようと彼女をつかんだ。


「優しくね・・・妊娠してるんだから・・・」

「三ヶ月なんだから大事に扱ってよ・・・ドメスティックはダメだよ」


「まだ言ってんのかよ」

「このぶんだと北海道に着く頃には出産だな、ポンコツ〜わらし〜」


でもって俺と羅利子は北海道行きの飛行機に乗った。

無事表彰式に参加して、羅利子といくら丼なんか食って、観光もして

北海道満喫してルンルンで帰って来た。


羅利子が俺んちに来て立て続けにいいことが重なってちょっと疲れたかな。

当分平和でいいわ。


ってことで俺が電話ボックスに興味なんか持ったせいで奇妙な女の子、

羅利子拝らりこっぱいって言う座敷わらしを家に連れて帰ることに

なったおかげで俺んちは裕福になった。


俺に取り憑いた羅利子は一生俺から離れることはないからいくら散財

しても身上潰すこともなかった・・・。

羅利子を大切に敬ってさえいれば貧乏になることもない。


だからそののち俺は日本でも有数の大富豪になった。


だけど未だに独身・・・なんでかって言うと人間の女子を彼女に持とう

とすると奇妙なことにその彼女たちは、みんな病気で亡くなるんだ。


ある日、羅利子が俺のそばに来て耳元でめちゃエロい声で囁いた。


「金持ちにはしてあげるけど彼女を作ろうとか嫁をもらおうなんて考えないこと」

「そんなことしたら相手の女はみんな死ぬよ・・・私がいる限りね」


「え〜それってヤキモチじゃないかよ?」


「壮太が浮気したら私にはすぐ分かるの、取り憑いてるからね」


でもまあ、俺がじじいになるまでには羅利子との暮らしにも悲喜こもごも、

波乱万丈、紆余曲折がまだまだ待ち構えているんだけどね・・・。

どうせならそれなりに人生楽しまなくちゃ。


俺がこの世を去っても羅利子はまだどこかの家の隅で生きていくんだろう。

できればどこにいても何してても「幸せ」であってほしいって祈ってるよ。


羅利子・・・俺に豊かな人生をありがとう・・・心から愛してる。


《座敷わらしの宿りたもう家は富貴自在なりと言うことなり・・・ただし彼女の

嫉妬は海よりも深いものと覚悟すべし・・・》


おっしまい。

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あやかしの森の羅利子拝(らりこっぱい) 猫野 尻尾 @amanotenshi

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