(2-10)


   ◇


 その夜、スマホに奇妙なメッセージが送られてきた。

《つらいよ》

 ――ん、なんだこれ?

《どうしたの?》

《苦しいよ》

《大丈夫?》

 助けを求めているような内容に驚いて返信してみたものの、それ以上の返事は来なかった。

 続きが気になったけど、いったん風呂に入ったりして少したってからスマホを見たら、不思議なことにそのメッセージはどこにも残っていなかった。

 僕の知らない削除機能があったのかなと思ったところで、そもそも誰のメッセージだったのか、確かめておかなかったことに気がついた。

 ロック画面に出てきたのを、内容が内容だけにあわててタップして開いたわけだけど、ふだん他の人とやりとりをしたことがないから、てっきり上志津さんだと思い込んでいたのだ。

 だけど、あらためて僕らの画面を開いてみたら、そんなメッセージはなかったし、グループの方にもないようだった。

 いわゆる誤爆というやつで、気づいた誰かが消したんだろうか。

 スマホの使い方に慣れていない僕にはどちらにしろ分からないことだったし、上志津さんからはちゃんと、《花火大会楽しみだね》《勉強頑張ったよ》と、別のメッセージが届いていたから、その時はそれ以上気にせず忘れてしまっていた。

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