第5話

 モニターの横に佇むマネキン…。

 これが動いて喋るのか…ちょっと怖いかな、まぁ二人きり?なんで慣れるしかないか…。

 ってか、いきなり星の管理者とかハードル高いよね?受け入れるしかないわけだけれども…「召喚に応えてくれてありがとう、キミは勇者だから魔王倒して来て」って言われるよりはマシだよな…何方も丸投げには違いないが自由があるだけ…あるのか?うーむ…。

 先ずは情報収集と権能とやらの確認しないとな…。


「えっと、先ずは自己紹介でもしようかな?俺は元地球人で日本人の王海凪オウミナギだ。キミの名前は有るのかい?」


【初めましてナギ様、名前は有りませんのでお好きにお呼びください】


「そうか…ならついでに自分も生まれ変わったつもりで変えるか…う〜ん」


 英語で管理者はアドミニストレータだったか…アド…アダムとイブ…これは罪を犯して追放されるんだったか?地球では不幸だったからなぁ…楽しく過ごしたい…楽…ラッキー、フォーチュン…ラックにするか!


「これからはラックと名乗る事にするよ、そしてお前の名前はサチだ!二人揃って幸運な名だ!楽しく過ごすぞ!」


【サチ…はいっ!ありがとうございますラック様…創造神様より存在を賜り、ラック様より名を頂く僥倖…精一杯お仕えさせて頂きます】


 またしても綺麗なお辞儀だ、マネキンにしか見えないが、本当に滑らかに動くなぁ、ふふ、相棒の見た目がちょっと怖いけど、何だか楽しく過ごせそうだ。


「それじゃ、先ずは創造神が言っていた、管理者は死なない、精神異常にならない、これってどういう事?」


【ハイ、お答えします。

 死なないとはそのままの事です。

 食事は摂ることも出来ますが、基本的に飲食の必要が有りません。寝る必要も有りません。働き過ぎて過労で死ぬ事も有りません。

 何れも嗜好品の様な物であり、摂った所で害にも成りません。

 また、私がラック様に危害を加える事は有りませんが、殴った所でラック様は何の痛痒も感じません】


「へ、へぇ…」


 何だかいきなりブラック一直線じゃね?

 無敵チートかよ!って言うより、社畜で奴隷かよっ、飲まず食わずで二十四時間働けってか…?


「ふ、ふーん…受け入れ難い部分も有るけど…ま、いいや…追々実感するんだろうし…もう一つの方は?」


【ハイ、お答えします。

 精神異常無効はラック様の大いなる目標であります、人種の繁栄と魂の昇格ですが、どの位時間が掛かるか分かりません。

 何れの作業も進捗が遅かったり、躓いたり失敗したりと、悪い事が重なったとしても、ストレスで胃に穴が開くなんて事も有りません、ハゲる事も有りません。

 また星(名称未定)に生命体が誕生する迄は、この世界に感情と心を持った存在はラック様お一人となります。

 存外孤独と言う物は精神に多大な影響を及ぼす様ですが、ラック様には何の影響も御座いません】


「へ、へぇー…」


 本当に悪影響って無いんだろうか…なんか既に精神にダメージが来てなくもないような…気のせいか?そうだ休もう…暴言吐かれて、警察行って、ほとんど寝ずに仕事行って、刺されてって…自分に起きた出来事とは思えないな…。


「なぁサチ、此処って何の場所?ちょっと休みたいかなぁ〜なんて思うんだけど」


【ハイ、お答えします。

 管理者専用の隔離空間となっております。

 ラック様のお好きな様にカスタマイズする事が出来ます。

 お休みになるのでしたら、ベッドを設置してもいいですし、個室をお望みでしたら設える事も出来ます】


「お!いいね、どうやるの?」


【ハイ、お答えします。

 物理的な操作方法がお好みでしたら、パソコンのキーボード・マウスで操作する事が出来ます。

 また3Dホログラムを用いたタッチパネル、そして脳内でイメージが精緻に想い描けるのであれば、想像するだけで瞬時に創造する事もできますが…ラック様は絵心がお有りでしょうか?】


「あー…写実的なのは無理かなぁ…、それって何度でも選び直せる?」


【ハイ、何時でも変更可能です】


「んじゃ、3Dのにしてみる!」


 海外のVFX駆使した映画とか大好きだったんだよなー、目の前のパネルぽちっとか、立体映像クルクル回したりとか…、やベェ楽しくなって来た!あー、休むとか言ったけど、寝る感じじゃなくなって来たな。

 とりあえず拠点を整備しよう。


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