第16話 暗躍と後悔からの決意

§  §  §



召田宗麻は廃工場跡から離脱する三人を先回りして待ち伏せしていた。

警戒を解くのを見計らって少しずつ接近をしていたが、三人がマスクを外し彼らの正体を知った召田宗麻は驚くと同時に色々な策略を思い浮かべながら近づいていく。

 

「よぉ……まさか、ははっ、まさかだな、こりゃ」


「……召田か……」

「歩夢……宗麻から力を感じるんだが……」

「そうね……彼もそうなの?」

「いや、そんな情報は無いんだけど……」


突然の召田宗麻の登場に警戒する転生者三人。彼は敵意を見せないように手を広げながら大げさな手振りをする。


「いや~さっきの仮面野郎と争っている奴らが誰かと思えば……おまえらだったなんてな」


「……見てたのか?」

「見せてもらったよ。まさかヤクザとつるんでるなんてな。あちらの世界の能力あれば……用心棒ってやつか?」


「……好きでつるんでいるわけじゃない……」

「ほんとよね……」

「……ほんとに……すまん……」


振水ふりみずユキナと真直歩夢しんちょくあゆむは非難する目で一人の男性、伝地力弥でんちりきやを見る。

召田宗麻は思ってもみない反応を見せたので、次の言葉をどうするか悩んでいた。


「……なぁ、どうやって目覚めたんだ? 例の「流れ星」……じゃなさそうだな……」

「儀式をしたのか? 誰が?」

「私は知らないよ……」


召田宗麻がまったく知らない「言葉の情報」が出てきたので、考えなしに思わず質問をしてしまう。


「……流れ星……儀式? 何のことだ?」


三人は目で合図をしながら、得体のしれない発言と行動をしてくる召田宗麻をどうするか考えていた。


「……きっかけも無しに目覚めるパターンもあるのか」

「みたいだな……」

「どうするの?」



召田宗麻は三人の話の節々から、転生前の力に目覚める条件があることを知る。が、久々の再会なのに想像以上に自分を警戒しているのに疑問を抱く。


「あ~ほら、さっきの奴、やべぇやつだっただろ? あいつに対抗するためにも……俺と組まないか? 悪いようには……」

「断る」

「嫌よ」

「冗談じゃない」


取り付く島もない反応に、いつものごり押しの手を使ってみるが……


「……俺と組めばここを牛耳ってる……」

「これ以上は沢山だ!」

「あんたとつるんだら余計ややこしい事になるじゃない!」

「ああ……ただでさえあんなやつらとつるみたくないのにな……」


召田宗麻は奥の手と思っている情報をちらつかせることにした。


「ん~……まぁ……いろいろ事情があるのか……あ~、でも、あの仮面野郎の正体、知りたくないのか? 俺は知っているんだけど……」


「……一番関わりたくない奴だ……」

「あなた、本当に見ていたの? とんでもない奴よ……」

「俺たちは、あんな化け物と敵対したくない。できるなら平穏な生活を送りたいんだ……これ以上巻き込まないでくれ」


召田宗麻は食いつくと思って話を進めようとしていたが、まったく違う反応に戸惑ってしまう。


「え? あれ? 知りたくない?」


「知りたいわけないじゃない! 知られたら消されちゃうかもしれないのよ! あんな恐怖、前世でも感じたことないんだから!」

「……ああ、俺たちは、あくまでもこいつが負った借りを返す……それで契約は終わりだ」

「そうだよ。私が不用意なことしなければ……って、まぁ、話さない方がいいね」

「すまねぇ……そんな訳で俺たちの事は放っておいてくれ。多分今の俺たちなら、おまえの「知り合い」くらいは……なんとかなってしまうからな」


伝地力弥が去り際に心配そうに警告をする。

「召田、何があったか知らないが、あの仮面男には手を出さない方がいい……」

「あと、ついでに私たちは頼らないでね……」

「すまんな」


召田宗麻は意外な展開についていけなかったのと、全く脈が無かったのであっさりと引き下がる。

「……ああ、そうか、ご忠告……ありがとう……」

「それじゃ……」


三人の転生者は、召田宗麻から逃げるように魔力をまとって森の中を駆けていった。


「振られちまったな……」


しばらく呆然と見守っていたが、想像以上にヒントをもらえたのでしばし考え込む。

召田宗麻はすぐに違うアイディアを思い浮かべていた。

(そうか……儀式……あちらの世界での覚醒方法……魔力を流し込めば……覚醒する可能性があるってことか……面白くなってきたな……)


召田宗麻は人気のない山道を歩きながら考える。

(……もしかして年齢か? 全員同い年か……それか、前のあのクラスにいた人物である必要がある? テストしてみるか……流れ星……はなんの隠語だ? 流星でも本気で振ってきたのか? くそっ! スマホがあれば!)


召田宗麻はすぐにでも検索をしたり、仲間と連絡を取りたかったが粉にされたスマホの代わりはまだ買ってもらえていなかった。取り急ぎ手段を選ばずに獲得する必要があると感じていた。




§  §  §



政所まんどころ瑠衣は帰り道に、卒業後に何をしていたかなどの雑談をしながら一緒に歩いていた。海波達と別れた後、ほのかに暗くなってきた空を見上げながら思いにふける。


白波海波と「仲が大変良かった」彼女はいろいろと違和感を感じていた。

一人称の違い、あまりに自然に使う大人びた別人のような言葉遣い。それに、彼女のことを「瑠衣」とまったく恥ずかしがらず呼んだこと。すべてを統合して考えると全てに合点がいった。


(やっぱり……白波海波は……海君は死んじゃったのかな……あの頭の中の傷……普通だったら生きていないレベルだったもんな……)


瑠衣は彼女の前世の『加護の力』で白波海波の頭を調べた結果を思い出していた。


前世で何度も戦場の最前線で看取った戦士達の頭……頭部に強い衝撃を受けて破損した状態……それと比べてもどう見ても生きている状態ではなかった。

(中身はほとんど前世の人格……考え方もしゃべり方も……まったく違う感じだった……)


瑠衣は優しくて不器用で照れ屋だった「白波海波」との記憶を思い返していた。


(はぁ……私はどうすればいいんだろう……また、間に合わなかったのかな……)


政所まんどころ瑠衣は、前世の力に目覚めたらすぐに白波海波を助けに行かなかった事を後悔していた。

ついこの間に解決したばかりの「隣町の転生者たちのトラブル」に巻き込まれた不運を呪っていた。



政所まんどころ瑠衣は現代の仲間に黙っていたが、前世の事をかなり思い出していた。


彼女の記憶にある強い後悔。


前世では彼女の能力がばれると仲間と一緒にいられなくなる。それが嫌で能力を隠し続けていたが、いざ本当に必要な時になると、本当に助けたい人が目の前にいるのに使えない……助けられた人を助けられなかった記憶。


(また、能力を隠していたから……助ける出来なかった……そんな思いはしたくないな……)


彼女は決意した。

今がどうあれ、海波達の助けになろうと。


(だけど、この加護……どう考えても……困ったなぁ……)


転生しても、力を隠しながら仲間を助け無ければいけない……同じような人生の繰り返しに若干うんざりしていた。


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