第9話 『限界社畜』の集い

 --IRIAMを入れて2週間ほど経ったある日、俺は色々な配信をコメントをせずに眺めていた。


「ふぅん……。なるほどね……」


 色んな配信を見ていて思ったことがある。


 --IRIAMの視聴者層は意外と社会人が多い--


昔のSNS媒体(所謂ニコニコ動画など)の配信では、学生が多かったのに対して、IRIAMは社会人がメインな気がする(もしかしたら自分が見てないだけで学生が多い枠もあるのかもしれないが)。


「なかなか興味深いな……」


 どうしても配信アプリということを考えると学生が多くなりがちな気もするが、そこは何かの理由があるのだろう。なんとなくその違いが気になり考えようとしたタイミングで、いつものようにいぶちゃんの配信通知が来る。


「おっと、配信観に行くか……」


 もはや条件反射のように通知のバナーをタップして配信を開く。そこではいつものように画面の中のいぶちゃんが雑談をしていた。


『◯◯! おはにゃの〜。いつも来てくれてありがとうね!』


「『いえいえ、楽しいからきたよ』っと……」


 他愛もない挨拶を送信した後、リスナーリストを見る。いつものメンバーが集まっていた。


「だいぶ固定リスナー定まってきたなぁ……」


 そんなことを考えていて、ふと気付く。コメントで仕事の話がよく出ているし、ここも社会人が多い。


「苦労人が多いな……」


 自分のことを棚に上げながら呟く。そんなふうにしていると、配信内でいぶちゃんも仕事について話していた。


『明日お仕事夜までなんだよね〜。だから夜配信できない……』


「あー、そっか。いぶちゃんも社会人だ」


 なるほど、配信者が社会人だからリスナーも社会人多いのかもしれない。そんなふうに俺は思った。


『みんなお仕事無理しないでね?』


 ふといぶちゃんがそんなことを口にする。するとコメント欄では仕事話が始まった。中には「休みがない」や「仕事量がおかしい」などといったコメントもちらほらある。


「うわぁ、みんな社畜や……」


 思わずボソッと呟く。まぁ、そんなことを言っている俺も社畜っぽい生活はしてるからなんも言えないが。


『みんな社畜……!? 大丈夫? この配信……』


 笑いながらそういういぶちゃん。確かにリスナーの大半が社畜だとしたら配信はもはやカオスである。

 ふと流れてきたコメントを見て、思わず笑ってしまった。


「限界社畜の集い」


 いやどんな集いだよ。流石に意味がわからなさすぎて笑いが止まらない。


『ほんとだよ〜。ここのリスナーの9割は社畜でしょ?』


 いぶちゃんも便乗してネタにしていく。まぁ、面白いからアリか。

 俺は否定することもなく、そのまま社畜トークを続けるのであった。



 --なお、この後本当に社畜の集いとなってしまうことは、現時点ではわかるはずがなかった。



9話 完

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