第7話 背景イベント Part2

 イベント最終日。

 朝の配信にいつものように行くと、すでにラスランの話をしていた。


『おはにゃの〜。今日の夜どうなるかなぁ?』


 「いぶちゃん」が心配そうにしている。ランキングをちらっと見ると、4位とは2万PTくらいの差であった。

 2万……そうそう返せる差ではない気もする。だが、話を聞いている限りそんなものではないようだ。


『ラスランのイベ終了10秒前とかに投げられたりするからねぇ〜』


 そんな「いぶちゃん」の話や、コメント欄を見ていると、返されるのは普通のことらしい。

 俺も少しでも貢献しようと、配信終了後ポイント集めに勤しんだ。




 夜になり、「いぶちゃん」の配信が始まる。

 初めのうちは比較的雑談のような形で、緩やかに進んでいた。


 ……イベント終了1分前。


『ドキドキするね……』


 「いぶちゃん」も緊張しているようだった。俺も何故か緊張してくる。

 現時点で3位、4位との差は3万PTいかないくらいであった。不安要素としては、4位と5位が激しく入れ替わっている。


 ……残り30秒。


 リスナーからとあるギフトが送られる。


   「あふれる思い(30,000pt)」


 30,000!?俺はその額に衝撃を受けた。

 今投げたことではない。こんなギフトがあるなら確かに全てをひっくり返されてしまう。


「これがあふおも、か……」


 俺はギフトを見ながら呟くように言った。


 ……残り10秒。

 4位との差は1万を切っている。全員がギフトで応援していく。


 3、2、1……

 俺はちらっとランキングを見てしまった。4位の人の名前が上にあった気がする…。



 ……イベントが終了した。

 最終結果は


      4位


 ……惜しくも入賞ならなかった。

 元々4位にいた人は大きくスコアを伸ばして2位、「いぶちゃん」と3位の方のスコア差は4万ほどだった。


『いやぁ、残念だったね。応援ありがと〜』


 若干涙ぐみながらお礼を伝えてくれる「いぶちゃん」。


 何だか俺も悔しい気持ちでいっぱいだった。

 コメント欄も「頑張った!」や「お疲れ様!」という労いの言葉を掛け合っている。


『次のイベントはもっと頑張るね!』


 そう気丈に振る舞う「いぶちゃん」を見て、俺も次のイベントはしっかり力になろうと決意した。



 ……初めてのイベントは、俺にとっても「後悔」を残すイベントとなったのであった。



7話 完

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る