第6話 背景イベント Part1

 俺が「いぶちゃん」を推し始めて数日後、配信での出来事だった。


『魔法学校の背景イベント、頑張るね!』


 ……イベント?

 IRIAMを入れて数日。イベントなんてものがあること自体初耳だった。

 「いぶちゃん」の説明曰く、


・応援PTで順位を競う

・ギフトの総スコアが高い人から順にランキングになる

・入賞すると、背景がもらえる


 こんなところだった。


「なるほど……」


 なかなかYouTubeとかでは聞いたことがなかったようなイベントのようだ。

 純粋に推したい子にギフトを投げて応援していく、楽しそうなイベントだと思った。


「……ただなぁ、俺ポイントないんだよな……」


 そう、俺はポイントが少なく、今回あまり応援できそうにない。

 「いぶちゃん」にそのことを伝えると、


『大丈夫だよ! 配信来てくれるだけで嬉しいよ!』


 と優しく声をかけてくれる。

 何と優しいのだろう。俺は期間中無料ポイントを集めて全部投げようと決心した。



--------------


 イベント初日。

 朝の配信に遅れていくと、配信画面右上に順位が表示されている。そこには「3位」と書かれていた。


「……?3位……?」


 あれ?イベント始まったばっかだよな?

 俺は一瞬頭がこんがらがったが、「いぶちゃん」に挨拶をすると、その真相が分かった。


『おはにゃの〜。そう! もう結構投げてくれる人がいて、順位上にいるんだよね!』


 ……なるほど、みんな応援したい気持ちは強いのか。

 俺も少しでも力になろうと決意し、配信中はなるべくお話をしながら、配信外でポイントを貯めては夜配信で少しでも投げる生活を続けた。



 イベント終了まであと1日、その日の配信で聴いたことがない言葉が出てきた。


『そうねぇ、ラスランだと「あふおも」が怖いねぇ……』


「あふおも……?」


 その言葉を聞いた時は何のことかわからなかった。

 現時点で3位だし、入賞は問題なくいけるんじゃないか、と思っていたが、そうではないらしい。


 ……この時の俺は、イベント最終日、あんなことが起きるなんて思ってもいなかった。


6話 完

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