第3話 推しとバッジ

「……配信、楽しかったな……」


 次の日仕事しながら、俺は昨日の「花ノいぶき」の配信を思い出す。


 とても雰囲気が良く、居心地の良い場所だった。

 今まであまり配信アプリで長時間聴くことはなかったが、なんだかずっといられる場所だった。


「……夜も見てみようかな……」


 仕事の途中だが、帰ったらまたアプリで覗いてみようと思い、それを糧にその後の仕事を頑張った。



 ---夜9時

 仕事を終えて家に帰ってくる。ご飯を作らなければいけないが、俺は先にIRIAMのアプリを開いた。

 何人かフォローした人が配信していたが、優先順位を上げてまで見なくてもよさそうだった。


「まずご飯作るか……」


 俺は適当に焼きそばを手早く作り、食事を済ませる。


 ふと、携帯の通知が流れた。見てみれば、「花ノいぶき」の配信が始まったという通知だった。


 アプリを開いて、サムネイルを確認する。初配信の文字が見えた。


「……そういえば、配信見たのは12時過ぎだったか」


 そう考えればまだ初配信なのだろう。そう結論づけて配信を開いた。

 すぐに画面に「昨日登録した◯◯さんが入室しました(連続)」という文字が表示される。


『あ、◯◯さんおはにゃの〜。またきてくれてありがとうね!』


 連続と書かれていたからなのか、把握されているのかわからないが、なんとなく嬉しかった。


 ふと、画面のコメント欄の方で名前が水色の方がいる。これはなんなんだろう?と思っていると、ちょうど配信内でそれに触れている最中だった。


『バッジ取ってくれる方いて嬉しい〜』


 なるほど、これはバッジというのか。上にある星のボタンを押してみると、条件というものが表示される。


 ポイント使用、コメント数、視聴時間のタブが表示され、これを達成するとバッジがつくようだ。

 なんとなく、バッジを取りたいと思った。


「適当にギフト投げるか……」


 俺は適当にギフト欄の10ptのものを送る。


『わ〜、ギフトありがと〜』


 最初の時のようにスクショを撮りながらお礼を伝えてくれる。


 なるほど、こうやって嬉しそうな声を出して喜んでくれると、こちらも楽しくなってポイントを投げたくなる。


 そして、何度かコメントを打ち、やりとりをしている間に、俺は決心した。


 --この「花ノいぶき」の配信でバッジを取る--


 そう考えた俺は、初心者ミッションを達成するために動き出したのであった。


3話 完

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