第3話 梅酒 〜中3の冬〜 急
その後、私は高校在学中のお酒を禁止するよう、クラスメートから言い渡された。数十ccの梅酒で、顔を真っ赤にさせていたからだ。自分でも、高校生の飲酒がバレたら危険なことは分かる。言われなくても飲まない。
その食前酒は、私達の年齢を確認し忘れた施設側のミスであった。
そのミスがきっかけで私が起こした行動は、実に些細なことだ。
彼は、私が資格試験を受けるために、授業参観の土曜日を休んだとき、当日の授業内容を伝えるプリントを家まで持ってきてくれた。
その隅には、班のメンバーがメッセージを書くのが恒例なのだが、クラスの違う彼も、一言書いてくれていた。
「英検ファイト!」
それを見たのは試験を受け終わり、彼から受け取った封筒を一人で開いた時だったが、本当に嬉しかった。
ところが、渡された時のやりとりを最後に、数日後には彼が引っ越してしまうのだ。
梅酒を飲んだ後に私が飛ばされた世界は、彼のお母さんが引っ越しの挨拶にきた時点で、それに気づいた時には私の体は動いていた。
今までありがとうというお礼と、応援しているという気持ちを、伝えたかった。
その気持ちが先走って、はたから見るとかなり不審な行動をとってしまったが、これが何か大きな影響を生むことはないだろう。
彼は何も答えなかった。
変わったとすれば、私の記憶だけ。私にとって、それが一番嬉しい成果だった。
今度お酒を飲んだら、また違う世界に飛ぶのだろうか。
成人が、少し楽しみになった。
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