席が足りないのは分かりきっている
最近、路面電車やバスといった少し手狭な交通機関に乗っていると席はガラ空きなのにあえて座らない若者が増えたように感じる。すぐに降りるというわけでも無さそうなのにあえて座らない。
ちなみに優先席は高齢者や体の不自由な人に優先される席であると同時に空いていればどの人でも座っていいものだと私は考える。もちろんそういった方が乗り合わせてきたら譲る必要があるし、それができないのあれば座らないことが得策だ。
しかし、久しぶりに座ってみると優先席ってこんなにも居心地が悪かっただろうか。いつかやって来るともしれない席を譲るシチュエーションにとてもハラハラとしてきてなんだか悪いことをしているようにさえ思えてくる。こんな気持ちになるなら最初から座らなければ良かった。なのに何故だろう、一度座ってしまうと理由がない限り立ち退く方が難しくなる。
でも、もし優先席が存在しない世界を想像するとゾッとする。無法地帯だからこそ個々の配慮だけが頼りになる。むしろ優先席というルールは実は優先されない側のためにあるのかもしれないのではとも思えてくる。
そして高齢者の割合は明らかに増えた気がする。優先席どころか車内の全席が高齢者で埋め尽くされていることもある。しまいにはおばあがおばあに席を譲り合う、そんな光景も稀ではない。
だから“あえて座らない”を選択するのだろうか。席を死守したところでどうせ譲るかもしれないことになるのなら、そのセンサーを研ぎ澄ませておかなければならないくらいなら、端からその状況から脱却しておいた方が心の平穏は保てる。
それほどに高齢者は増え続け、もう席が足りなくなくなってきてるのだ。
しかし医療や制度は長生きをどんどん推し進める。長く生きることが人類の目標みたいになっていて死なないための技術が発展していく。それに伴って若者は狭い空間の端っこで苦しく窮屈そうにじっとしている。
個人の自由だということは分かってるけれど、混んでいる車内で空いている優先席の前にずっと立っているお年寄りを見かけるともどかしくてつい髪の毛をファサッっとなびかせたくなる。
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