やってみたいことはやらないのだ

 やりたいことや夢が分からなくなった。自分はこの先何に生きがいを感じながら生きてゆこう。そんな人生迷子から脱出するための一つとして最近よく紹介されている方法、


 「やってみたいことをとりあえず100個書き出してみよう」


 やってみたいことをまずは文字に起こし明白にすることで本当に自分のしたいことが見えてくるかもしれない、らしい。決まったら今度はそれを基盤にしながらあらゆる手段を設定していき自分の得意不得意を理解しその後は長所と短所を分析…。


 とまぁ、まずはと色々書き出してみた。キャンプ、ドライブ、日本各地のサウナ巡り、一人居酒屋、カフェで働く…。


 100個というのはなかなか難しい。“100個に限定するなんて”の難しさではない。その真逆だ。


 そして書いていくうちに思った。やってみたいことのなんて小さきことよ。そしてこうも思った。じゃあやったらいいのに、と。

 

 もしかしたら私は人生のハードルがかなり低いのかもしれない。マイホームを買うためにバリバリ稼いだり、独立に向けて日々のタスクをこなしながら勉強をしたり、そういった所謂“大きな夢”が全然ない。そんなものがあればこんなことに時間を費やしてはいないわけで。


 考えてみると、時の流れに身をまかせていれば何かには染まるだろうと、ずっととりあえずで生きてきた気がする。親には申し訳ないがとりあえずで進学して資格が取れる大学だったからとりあえずその資格に合わせて就職して、とりあえずどうにかはなってるという感じで今に至っている。

 

 と、少し話は脱線したが、つまりやってみたいことは意外とすぐやれることが多く、きっとこれらはいつまで経っても手を付けられることもなく成仏もされないということだ。


 やってみたいことの一つに焚き火もあげてみた。そして周りに焚き火をしたいと豪語してからヒロシのぼっちキャンプをSeason3まで鑑賞しその良さを遠目で味わったあと、mont・bellまで足を運んでみた(だけ)。


 でも結局そこ止まりだった。しまいにはYouTubeで焚き火の音を検索しその無機質な雰囲気で満足するのが日課となりこうして焚き火への挑戦は無事幕を閉じた。


 そう、やれるのにやらないはそれはもうやらないのだ。このままではきっと5年後も同じことを書き出しているに違いない。


 “こんなこと”もやれない時がいつか必ず来るというのに。その時に初めて後悔するのだろうか。

 

 しかし冷静に考えると人生迷子などといっている場合ではない年頃だったことに気づく。

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