第獸壹話【追憶の懐古(ノスタルジア)】

配役表一覧✝

●PC1 タイタス→男性

●PC2 マクベス→男性

●PC3 ジュリエット→女性

●PC4 ラヴィニア→女性

●NC(ナレーション)①&???①(作中兼役)→女性

●NC(ナレーション)②&???②・???③(作中兼役)→男性


✝男女比率✝

男3・女性3(6人台本)


✝ジャンル✝

SF・ダークファンタジー【R-15G】

(※同性愛表現・残酷描写・鬱展開有)


✝所要時間✝

約40分




────────────────────────


NC①

 永い後日談のネクロニカリプレイ風 声劇




『The Fake World of the End (ザ フェイクワールド オブ ジ エンド)』




『第弐章 Thistle(シィソー)~壊れた楽園の華~』

第獸壹じゅういち話 【追憶の懐古ノスタルジア





マクベス

「タ、イタス……タイタス……泣いているのかい???」



タイタス

「………え???あれ???なん、で????

どうして僕泣いてるんだろう……???

今のは……僕の……」



マクベス

「記憶を思い出したのかい???

……大丈夫だワタシが傍にいる。

今はジュリエットもラヴィニアも見ていない。

ワタシしかタイタスの顔を見ていないから、だから……泣いても良いんだよ……」



タイタス

「……ぼ、僕には大切な人がいたんだ……

大切で……大事で……秘密のこの忘れられた場所で……僕は【あの子】に……

僕は……僕は……マクベスがいるのに、なのに、僕には【あの子】がっ!!!」



マクベス

「……タイタスには過去に大切な人がいて、もしかしてその人の事が好きだったのかい……???」



タイタス

「……うん……」



マクベス

「……そうだったのか……

もしかしてそれを知ってワタシが君を嫌いになるとでも思ったのかな??

……その顔からするに図星か……」



タイタス

「……ごめんなさい、マクベス……」



マクベス

「それは何に対してのごめんなさい、かな???

ワタシは何も怒ってはいないよ、タイタスの見たのは過去の君の記憶だ。

今のワタシ達は過去を思い出して自分達の事を知るしかない……けれど……どれだけ君が誰かを愛していても、想っていたとしても、ワタシは今のタイタスを愛している……

例えワタシの過去に恋人がいても、タイタスへの気持ちは変わらない、何があってもだ。」



タイタス

「……マクベス……良いの????本当に???僕の過去に恋人がいても????」



マクベス

「構わないよ。言ったろう???

ワタシが愛しているのは今のタイタスだ。

君の過去に恋人がいたとしても。

それにもう君の心の中にはワタシしかいないのだから。

タイタスを愛する気持ちは過去であっても、他の誰にも負けないよ……」



タイタス

「ぼっ、僕もマクベスが大好きだよっ!!!!

その、あ、あ、あ、ぁ……ぁ…いし……て……」



ジュリエット

「こらあぁぁぁぁぁぁぁぁあぁっ!!!!!!

タイタスを押し倒してナニしとんじゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」



ラヴィニア

「ジュリエットお姉様ぁ、何も見えませんよ~。

マクベスさんとタイタス母様が何かしてるんですかぁ~???」



タイタス

「はっっっ!!!!????

僕、何時いつの間にマクベスに押し倒されてって……ぎにゃぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!???

どうして僕の服がはだけてるのっっっ!!??」


(なななな何だこれぇぇぇぇぇぇぇ!!!???)



マクベス

「何って野暮なこと聞くんだね、ジュリエット。

私ワタシとタイタスは恋人同士なんだから良いじゃないか別に。

何か問題あるのかい????」



ジュリエット

「問題大有りだわっっっ!!!!

このドスケベ変態 似非エセ紳士っっっっ!!!!

アタシはともかくラヴィニアの教育上宜しくないのは

アンタでしょうがぁぁぁぁぁっっっ!!!!

馬鹿ぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!」



マクベス

「アハハハハッ、ジュリエットって意外と初心うぶなんだね?可愛い所があるじゃないか。

よいしょっと。顔が赤いけど大丈夫かい、タイタス???」



タイタス

「ぅっうん……だ、大丈夫だよ……」


(ひぃっ!!!!????な、何か悪寒がするしマクベスの笑顔が怖いよぉぉぉぉぉぉっ!!!!)



ラヴィニア

「ふにゅ???タイタス母様お顔が赤いですが如何どうかなさったんですか????」



ジュリエット

「何でもないのよ、ラヴィニア。

うん、ラヴィニアは知らなくても良いのよ、見なかった事にしてね、ね、ね???

ほらっ、此処ここにはこれ以上探しても、何も見つからないから次を調べてみましょう。ね???」



ラヴィニア

「はっ、はい。分かりました???」


(マクベスさんがタイタス母様に何かしたのかな?

今度タイタス母様とマクベスさんに聞いてみよう。)



NC②

4人は今度は【幻想曲ファンタジア】と書かれたルートに歩みを進め、通路を進んで行くと其処そこは4人の背丈と同じ位に生えた沢山の草が茂った広場があった。


中央に大きな白い噴水があり、噴水からは爽やかな透明な水がザアザアと溢れ続けて、また噴水全体を緑の木のつたと根が絡まり覆って、噴水の水が辺り一面を水浸しにしていた。


4人は周囲の草を切り払いながら進んで行くと、噴水の周りに幾つもの無数のパイプがあり、噴水の頭上には大きなスプリンクラーが設置されているのが分かった。



ジュリエット

「これってただの噴水じゃないわね……」



タイタス

「噴水の上にあるのはスプリンクラーがあるけど何でこんな所に???」



マクベス

「このパイプやスプリンクラーは【庭園迷宮】全体に水分を運んでいるんだろう。

パイプが何処どこに繋がってるか見てみたら噴水の裏に繋がってるのが分かったんだ。」



ラヴィニア

「あれ???噴水の裏に何かありますよ、これは何かの機械と缶???」



タイタス

「えっと缶には【成長促進栄養剤】って書いてあるけど、この機械を使って缶の中身を散布して周りの植物達を成長させているって事なのかな???」



マクベス

「タイタスの言う通りだな、ラヴィニアが見つけたこの2つの薬品もきっと何かに利用するんだと思うんだが……」



ジュリエット

「ねぇねぇ、この機械に何か書いてあるわよ???

えっと【Α.Φ.Ρ.Ο.Δ.Ι.Τ.Η.(アフロディーテ)】、【Τ.ρ.ω.ι.κ.ό.ς .(トロイア)投入 開始】……って書いてるけどこれってこの機械に拾った薬品を設置しろって事なんじゃない???」



マクベス

「ふむ……分かった 、やってみよう。

でも薬品を設置して何か人体に異変があったら皆、直ぐ言うんだよ。」



NC①

そう言ってマクベスは2つの薬品を機械に設置すると、ゴオンゴオンっと音を立てて機械が動き出し、

噴水の水がみるみる赤く染まって、まるで鮮血の泉のようにゴポリゴポリと周囲を侵食し始めた。


真っ赤に染まっていく光景を見たマクベスの脳裏にかつての記憶が蝕んで来る。



真っ赤なシミだらけの部屋。

赤く紅く染まっていく部屋。


貴方の周りには何がある????

えぇ……懐かしいでしょう????



良く見て思い出して御覧、マクベス。



貴方が嫌いだった、紅い日々を。




───マクベス 記憶のカケラ

【白い部屋】のシーン───





マクベス

「また、失敗……か……」




NC②

部屋から聞こえて来る、毎日聞き続けて慣れた筈の怒声と悲鳴。


それを耳にする度に深く溜息をひとつ、こぼしてしまう。


君は白くなければならない部屋が、真っ赤な血塗れに染まる事が嫌いで、不愉快だった。



喉から裂けて噴水のように湧き出る血潮と、千切れた肉片や腕や足、くり抜かれた眼球や引き裂かれた皮膚に、潰れた臓物が散らばって、まるで綿の取れた人形や縫いぐるみのように散らばる死体の山。



ひしゃげて、飛び出して、潰れて、砕けて、ぐちゃぐちゃになったもう動かない人間であったモノ達。



???①(NC①兼役)

「このガラクタ共の処分をお願いするわ。

何時もの通りに【廃棄孔インフェルノ】で処理しておいて頂戴。

ったく、これだから【L.i.L.i.N.(リリン)シリーズ】は……」



マクベス

「はい……分かりました、【主任】……」



NC②

目を逸らしたくなる毎日が地獄のような実験の日々。

天井が、床が、壁が、部屋の至る所を染める赤い紅い血の海。


毎日、毎日、毎日正しく、清潔で保たなければならない筈なのに。

粛々しゅくしゅくと事が進まなければならない筈なのに。



嗚呼、また【彼女】の眉間にシワが出来て、【彼女】の機嫌が悪くなってしまう。



君はため息をきながら、冷えきったコーヒーに口をつける。



マクベス

「嗚呼、嫌だな……気持ち悪い……」





ラヴィニア

「マクベスさん??如何どうかなさったんですか???

お顔色が凄く悪く見えるのですが……」



マクベス

「……ラヴィニア……????

……今のは……あれは…違う……違うんだ……

ワタシはそんな事……違う……違うんだ、ワタシはそんな事望んでなんて……」



タイタス

「……マクベス???どうしたの???

もしかして何か思い出したの???」



マクベス

「……タイ、タス……????

ちっ、違うんだ、ワタシはあんな事思ってなんかいないんだっ!!!!!

違う違う違う違うっっっ!!!!

ワタシはっ!!!!ワタシはっっっ!!!!」



ジュリエット

「ちょっとちょっとっっっ!!!!

落ち着きなさいよ、マクベス!!!!!」



ラヴィニア

「マッ、マクベスさんっっっ!!しっかりして下さいっ!!!

タイタス母様っっっ!!!ど、如何どうしましょうっ??!!

マクベスさんが突然パニックになってしまいましたっ!!!」



タイタス

「大丈夫だよ、ラヴィニア……僕に任せて。

マクベス、少しビックリさせちゃうけどごめんね……」



NC①

タイタスは何かに怯え、動揺し不安な声でブツブツと違う違うと呟き、ガリガリと顔や腕や身体をむしり続けるマクベスの頬を片手でパシンッと音を立てて叩いた。


乾いた音が空間に鳴り響く。


マクベスは突然の衝撃に瞳を丸くして呆然ぼうぜんとその場に崩れ落ち、その身体をタイタスは静かな声で語り掛けながら、ぎゅっとマクベスを抱き締め る。

抱き締められるその両腕はかすかに震えていた。



タイタス

「大丈夫……大丈夫だよ、マクベス。

マクベスは突然過去の記憶を思い出して混乱しちゃったんだよね?

僕も同じように混乱していた時、こうやってマクベスが抱き締めてくれた事、覚えてるよ……

だから今度は僕の番、例え君にどんな過去があっても、どんな記憶があっても間違った事があっても、恐ろしい事があっても、僕は何度だって大丈夫って言ってあげるよ。

だから……大丈夫だよ、マクベス。」



マクベス

「……ハハッ……これは……参ったな……何だこれ、かっこ悪いなぁ……」



タイタス

「かっこ悪くてもかっこ良くてもマクベスはマクベスだよ。

どんなマクベスだって僕は大好きだよ。」



マクベス

「……すまない、ジュリエット、ラヴィニア。

心配かけてしまったね。」


(ったく、サラッとキュンとする事言うなよ……これだから天然タラシは……

もっともっと好きになったじゃないか……)



ラヴィニア

「凄いです、タイタス母様っ!!!

元のマクベスさんに戻ってくださいましたっ!!!

タイタス母様にはこんな凄い事が出来るんですねっ!!!

やっぱり母様は凄いですっ!!!

ねっ、ジュリエットお姉様っ!!!」



ジュリエット

「そうね、ラヴィニア。

マクベスがあんな風になるのは初めてで、ちょっとビックリしたし、不安になったけど……

アタシもラヴィニアもタイタスと同じ気持ちなんだからねっ!!!

べ、別に怖かったんじゃないんだからねっっっ!!!

勘違いしないでよねっっっ!!!!!

うぅぅ……えっと……もうマクベスも

大丈夫そうだみたいだし、先に行ってみない???」



マクベス

「そうだね、ちょっと此処ここから離れたいかな。

薬品は無事散布出来ているようだし、人体には影響も

見受けられないから他に調査する所はなさそうだからね。」



ラヴィニア

(タイタス母様もジュリエットお姉様も強くて素敵だなぁ……

ボクはマクベスさんが混乱していた時、慌てていて何も出来なかった……ボクは……皆さんを守れる様に

なれるでしょうか……???)



タイタス

如何どうしたの???ラヴィニア???

さっ、一緒に行こう、マクベスとジュリエットが待ってるよ。」



ラヴィニア

「あっ、はっ、はいっ!!

今行きますぅぅぅぅっ!!!」



NC①

4人は今度は【輪舞曲ロンド】と書かれたルートを通路を進んで行くと、大きな緑のつたと木の根によって浸食された薄汚れた灰色のコンクリートで出来た廃墟の建物が見え、建物の入口には真っ黒な扉がり、扉には鍵は掛かっておらず、錆び付いたドアノブを回せば簡単に扉は開くでしょう。


4人は慎重にゆっくりと扉の先に進んで行くと、其処そこは薄暗く湿ってカビ臭い匂いと、生き物が死んだ嫌な腐敗臭と部屋中に、大量の犬や猫や鳥やネズミ等の多種多様な動物のミイラに交じって、沢山の元の身体の原型を完全に無くして、グチャグチャになったアンデッドの死体があふれていた。


アンデッドからは何の気配も無く、動き出す事も無い。



ラヴィニア

「な……何、ですか……これ……」



タイタス

「真っ赤に染まった処置ベットには拘束ベルトと赤黒いモノがベットリ付いてる……何処どこを見ても死体だらけだけど此処ここは動物や人間の死体置き場なのかな……????」



マクベス

「こっちには枯れて干からびた植物の植木鉢が転がっている……

此処ここもあの【実験室】で見た水槽のようなモノがあった場所と同じく何かの人体実験かまたは、生物実験を行っていた施設跡だろう……」


(恐らくは資料書いてあった【新型異種混合 合成超生物──Χ.ί.μ.α.ι.ρ.α.(キメラ)──】を作っていたのだろうな……)



ジュリエット

「酷い……生き物を何だと思ってんのよ……

何でこんな酷い事が出来んのよ、人間がする事じゃないわ……」



ラヴィニア

(……ん???何だろう、これ???

何かの紙が地面に落ちてる……????)


「【第4次新型異種混合 合成超生物──Χ.ί.μ.α.ι.ρ.α.(キメラ)──開発計画 通称 V.e.r.ð.a.n.d.i.(ヴェルザンディ)】……????」



NC②

ラヴィニアは足元にあった一枚の古ぼけた所々破れ、赤黒いシミが付いた紙を手に取って書いてある文章をゆっくりと読み上げた。



〘【第4次新型異種混合 合成超生物──Χ.ί.μ.α.ι.ρ.α.(キメラ)──開発計画 通称 V.e.r.ð.a.n.d.i.(ヴェルザンディ)】について報告する。


被験体番号MA00019( ゼロゼロゼロヒトキュー)を使用した実験は成功。

【第4次実験開発試験場──E.D.E.N.(エデン)──】にて観察・監視・管理・制御を試みた結果、能力によって活性化を確認。


73216体の実験動物と実験体を処分し、検体の餌として与える。


更に人体に64578体の新型変異昆虫生物と24369の新型植物兵器を融合実験成功。


被験体への痛覚実験に際して四肢切断及び、頭部開頭後、皮膚組織に新型 β《ベータ》を移植し、日常的に肉体的・精神的ストレスの増加を実行するが能力の活性化を確認。


ストレス過剰加多によって被検体の精神崩壊の危機の為、アンプルを強制投与。

3日後、被検体の脳組織にいちじるしい損傷を発見。その後、重度の精神疾患を罹患りかん

被検体の処分と廃棄を検討後、【廃棄孔インフェルノ】行きを承認。〙



ラヴィニア

「なに……これ……っ!?!?」



NC①

其処そこに書かれていたのは常軌を逸脱した内容が記され、殴り書きの文字と共に一人の幼い少女の身体を無理矢理おさえ付けて、チェーンソーのような冷酷な刃で四肢を無残に切り取られながら、生きたまま眼球をえぐり貫かれる姿と言った、目を覆いたくなる同じ人間が行ったとは絶対に信じたくない鬼畜の所業の数々。


無残な姿をした人間の解剖写真や、地獄のような暴力の光景。


ラヴィニアは恐怖でガタガタと身体を震わせながら、自身の両手をぎゅっと握り、手から紙をすべり落す。

今まで見た事の無い残虐な光景の写真が、脳裏に染み付いてて離れない。


恐ろしい人体実験の数々がラヴィニアの中の狂気を呼び起こし、自身の忘れていた、忘れたかった記憶を思い出した。



──────ラヴィニア 記憶のカケラ

      【一人ぼっち】──────





???②(NC②兼役)

「はい、これでもう大丈夫だよ。

傷が浅かったから暫くしたら痛みも無くなるよ。

今度怪我をしたらちゃんと言わないと駄目だよ。」



ラヴィニア

「……はい、すみません……ごめんなさいです……あの、【センセイ】は怒っていますでしょうか……???」



???②(NC②兼役)

「君には怒ってはいないけ凄く心配していたらしいね。

モニタールームから飛び出して必死に君の名前を

呼んでいたからさ。」



ラヴィニア

「そう、ですか……あの、【センセイ】は大丈夫でしょうか……???」



???②(NC②兼役)

「今は【主任】が傷の手当てをしているよ。

【主任】に任せておけば大丈夫さ、此処ここで手当てが必要とする位の怪我なんて珍しいから何時いつもより張り切ってたし。

ちょっと様子見て来るから君は此処ここで待っててくれ。」



NC①

─────────貴女は失敗してしまった……ー




でも何が悪くて、何を失敗して、何が駄目だったか

貴女には分からない。



気付いたら貴女の周囲と両腕から真っ赤な血に塗れていて凄く頭が痛かったのを覚えているでしょう……




ラヴィニア

【職員】さんが沢山来て、【センセイ】が額から血を流しながらボクを抱き締めてくれていた。



傷だらけの両腕に白い包帯が巻かれ、何時いつもと違う部屋の前の通路のベンチに座ってボクは泣いていた。



今日、全然上手く出来なくて【センセイ】に怪我をさせてしまって、心配を掛けてしまった……



寂しい、悲しい、恥ずかしい……




NC②

君が一人でうつむいて泣いていると歌が聞こえて来た。


窓の傍に近付いて外を見たら、くるくると花が舞い散る中で誰かが踊っていた。

まるで物語に出て来るお花の妖精のように誰かは踊り続け、目が合った。




ラヴィニア

「うわぁ……きれい……」


(ボクは一人ぼっちだったけれど、独りぼっちじゃなくては嬉しかった……)





マクベス

「ラヴィニア……ラヴィニア……???

如何どうしたんだい、もしかして気分が悪いのかい???

だったらもうこの部屋を出ようか、ラヴィニアにはショッキング過ぎるし、部屋の外で少し休もう。」



ラヴィニア

(………今のは誰なんだろう???

知っているような、でも覚えてない……

誰かと話してた【センセイ】って誰の事???

……記憶の中で始めて出てきたあの人の事、何でボクはその人がマクベスさんに似てるって思ってるんだろう???

だって、マクベスさんとは初めて会った筈なのに……でも本当に初めてなのかな……???)


「ぁ、の……マクベスさんは……僕と……昔、会った事がありますか……???」



マクベス

「いや、ラヴィニアとはあの【B.A.B.E.L.(バベル)】で会ったのが初めてだけどって……まさかラヴィニアも過去の記憶を思い出したのか……???

その顔からして君が見た記憶の中にワタシがいたのかい???」



ラヴィニア

「……分かりません……でも誰かがいて怪我をしたボクの手当てをしてくれたんです……

でも【センセイ】が怪我をして、悲しませて、心配を掛けてしまって、【センセイ】に会いたくて……

でも、でも、どんな顔をして会ったら良いか、全然分からなくて……そもそもボクはどうしてあんなに……???

ぅぅぅ、頭がっ、頭がっ……もぅ、少しなのにっ!!!!」




NC①

ラヴィニアはかすみが掛かった様に思い出せない自身の記憶の海を藻掻もがき、必死に思い出そうとすると脳内に強い不快感を感じた。

そんなラヴィニアにマクベスは優しく抱き寄せ、頭を撫でた。



────冷たい身体、冷たい彼の手。────



ラヴィニアはかつてこんな風に冷たいてのひらを、冷たい身体の【誰か】に優しく、抱きしめて貰った懐かしい感覚に浸りながら、彼の腕の中で緊張の糸が切れ、せきを切ったように両目からぽろぽろと、大粒の涙をこぼして泣き出してしまった。



マクベス

(【センセイ】……???どう言う事だ???ラヴィニアは一体どんな記憶を……???)


「よすんだ、ラヴィニア。

無理に記憶を思い出さない方が良い。

それにそんな悲痛な顔はラヴィニアには似合わないよ。」



ラヴィニア

「ぅ……ひっぐ……ず、みま……せん………

ごめっ、なさ…いぃぃ……

怖い、です……なんでどうしてこんなに思い出したいのに出来ないんですか……???

何で……何で……どして……???」




マクベス

「ラヴィニア……今は泣いて良い、分らなくても良い……

この先進めばもっとショックなモノを見てしまうかもしれない……

けれどラヴィニアの傍には私ワタシだけじゃない。

タイタスもジュリエットも傍にいる。

お互いの事や自分の事を知って、どんなに恐ろしいモノがあったとしても、何があってもワタシ達3人が一緒だから大丈夫だ。」



ラヴィニア

「マクベスさん……マクベス父様……」



マクベス

「アハハハッ、タイタスが母様でジュリエットが姉様でワタシ父親って事かな???

良いんじゃないかな、ワタシ達は【家族】なんだからラヴィニアみたいな可愛い娘???なら

大歓迎さ。」



ラヴィニア

「はっ、はい、です……マクベス父様っ、あ、あの、ぁのっ!!お顔が、また、ちっ近いですっ!!!!!!」



マクベス

「フフフッ……ごめんね、ラヴィニア……」



タイタス

「こぉぉらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」



ジュリエット

「ぬぅわにしてるんじゃぁぁぁぁっ!!!!」



ラヴィニア

「ぴぃっ!!??

タッ、タイタス母様にジュリエットお姉様ッ!!!??」



ジュリエット

「アタシとタイタスが目を離したら

すぅぅぅぅぅぅぐに手ぇ出すんだからっっっ!!!!!

しかもちゃっかり抱き締めてんじゃないわよっっっ!!!!

クッッッッッソうらやましいぃぃぃっっっ!!!!

……じゃなかったっっっ!!!!!!

もぅもぅぅぅぅぅラヴィニアからはぁぁぁなぁぁれぇぇろぉぉぉぉっっっ!!!」



タイタス

「酷いよっっっ!!!!マクベスッッッ!!!!

僕と言うものがありながらラヴィニアまで好きになるとかふっ、不謹慎すぎるよぉぉおぉっっっ!!!!!!

はっっっ!!!!???

これが一夫多妻制っっっ!!!!????」



マクベス

「……落ち着いてくれないかな、2人共。

誤解だよ、ラヴィニアが記憶を取り戻した後、身体の不調が出たから介抱していただけだよ。

やましい気持ちなんてないよ、ワタシの愛すべき大事な奥さんに誓ってね☆」



タイタス

「ちょっ、こ、此処ここでその殺し文句はず、ずるいよ、ばかぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!」



ジュリエット

「切り替え早っっっ!!!!???

ちょっとっっっ!!!!メスボになって完堕ちして脳内お花畑になってんじゃないわよっっっ!!!!

馬鹿タイタスッッッ!!!!」



タイタス

「うわぁああぁぁぁぁああんっっっ!!!!

もう痛くないけどぶたないでぇえぇえっっっ!!!」



ラヴィニア

(めすぼ……???かんおち……????

ジュリエットお姉様もタイタス母様も物知りだなぁ~。良く分からないけど今度御二方に聞いてみようっ!!!)


「ありがとうございます、マクベス父様。

タイタス母様もジュリエットお姉様も御心配をお掛けしてしまってごめんなさいです。

もう大丈夫なので先を進みましょう。」




NC②

そう言って4人は今度は建物を跡にし、今度は【狂想曲ラプソディ】と書かれたルートに進んで行った。


再び通路を進んで行くと、今度もまた沢山の緑のつたと木の根によって浸食された薄汚れた灰色のコンクリートで出来た廃墟の建物が見えて来た。


廃墟の建物に4人は近付くと建物の入口に今度は真っ白な扉があり、扉には鍵は掛かっておらず、錆び付いたドアノブを回せば簡単に扉は開くだろう。


扉の先に進んで行くと其処そこには壊れた巨大なモニター画面に無数のパソコンといった、電子機器が放置され、部屋の彼方此方あちこちに崩れた外壁が転がって、崩壊寸前で何とか形を留めていた。


また部屋の壁にはレントゲン写真や古びた書類が張られているがどれも年月が経ち過ぎて、詳しく読み取る事が出来なかった。


ふと4人がモニターに目を移すと、小さな卓上カレンダーが目に入って来る。

其その卓上カレンダーには真新しい赤いペンで日付に印が付いてあり、【12月1日】に印が付けられていた。



タイタス

「【12月1日】???何でこれだけ印が付いているんだろ???」



ラヴィニア

「どの書類を見ても読み取れないモノばかりです。

マクベス父様は何か見つけましたか???」



マクベス

「こっちも駄目だ、少しパソコンを触ったが劣化が激しいから、分かるのはこのカレンダー位だよ。

もしかして今が12月なのかもしれないけど、この印はついさっき付けられたかの様に真新しい。

だが確信に至るまで確証が足りない……」



ラヴィニア

「そうですか……

ジュリエットお姉様はどう思われますか???

……ジュリエットお姉様????」



NC①

ジュリエットの手には一枚の古びた写真が握られていた。


その写真には顔がグチャグチャの真っ黒に塗り潰された一人の人物が誰かに頭を撫でられている写真であった。


ジュリエットはその写真を食い入るように見つめると心を激しい怒りの感情が支配する。


羨ましいと言う嫉妬。


今まで感じた事の無い怒りと嫉妬のドロドロとした感情はジュリエットの中の狂気に染まり、忘れていた過去の記憶を思い出すでしょう。




────ジュリエット 記憶のカケラ

       【なでなで】────




???③(NC②兼役)

「君の発案の【第4次新型異種混合 合成超生物──Χ.ί.μ.α.ι.ρ.α.(キメラ)──開発計画 通称V.e.r.ð.a.n.d.i.(ヴェルザンディ)】の経過報告書を見させて貰ったが、どれも素晴らしい結果だった。

流石【A.g.r.a.v.a.i.n.(アグラヴェイン)】の地位にいるだけはある。

次回の月例会議で君を【G.a.w.a.i.n.(ガウェイン)】に引き上げれるか検討しよう。」



ジュリエット

「本当ですかっっっ!!!!???

ありがとうございますっ!!【所長】っっ!!!!

身に余る光栄ですっっっ!!!!

尊敬する【所長】のお傍で研究が出来るなんてっ!!!!」



???③(NC②兼役)

「では追って連絡しよう、良く頑張ったね。

次も君には期待しているよ。」




NC①

──────貴女は生まれて初めて誰かに褒めて貰って、こんなに嬉しい事は無いと感じた……



子供のように優しく頭を撫でられる事がこんなにも嬉しいなんて知らなかった……


だからもっと、もっと、もっと、褒めて欲しい。

もっと、もっと、もっと、撫でて欲しい。



その為に努力する事すら、誇らしかった……



でも、【あの人】の期待を一身に受ける、【お気に入り】は貴女じゃない……



それを知ってしまうのに、そう時間はかからなかった。



???③(NC②兼役)

「嗚呼……良く出来たね、偉いね。

流石はかの【英雄】が見出した【逸材】だ、今後の更なる活躍を共に支えよう。」



ジュリエット

何故なぜ何故なぜ??何故なぜ???

如何どうして私は【あの人》】に認められないの……???

あんな優しい眼差しを何故なぜ、【オマエ】如きが受けている???


嫌だ、嫌だ、嫌だあああああぁぁっっっ!!!!


私だけが【あの人】に認められるべきなんだっっっ!!!!


譲らないっ!!!渡さないっ!!!

私だけが【あの人】に選ばれるのだからっ!!!



私の邪魔するなら……それが例え【オマエ】でも容赦はしないっ!!!

みんな、みんな、殺してやるっっっっ!!!!




ラヴィニア

「……おねぇ…さま……ジュリエットお姉様……如何どうなさったんですか???

とても怖い顔を顔をなさっていますが……???」



ジュリエット

「あっ……アハハハハッ!!!

……ごめんねっ、でも大ぁぁぁぃ丈夫っっっ!!!!

このドチャクソリア充のイチャイチャがムカつくなぁって思ってただけよっっっ!!!

ほらっっっ!!!!このリア充BL共なんてさりげなく手ぇ繋いでんじゃんっっっ!!!

あーやだやだっっっ!!!」


(やだ……嫌だ。嫌だ。嫌だっっっ!!!!

皆にアタシのこんな感情も、こんな心も、こんな思いも、こんな記憶も知られたくないっっっ!!!!!!

知られたくないっっっ!!!!

それにアタシは、この酷い実験に参加していたのっっ?!

そして【所長】???

【所長】って一体誰なの……???)」



ラヴィニア

「あぁーーーーっっっ!!!!

マクベス父様ズルいですよっ!!!ボクもタイタス母様と手を繋ぎたいですっっっ!!!」



タイタス

「うええぇぇっっっ!!??

ぃ、何時いつの間にぃぃぃっっっ!!??

えっと、じゃあ皆で手を繋いでこの場所を出る???」



マクベス

「良い考えだね、タイタス。

さぁ、おいでラヴィニア。

おや?何してるんだい、ジュリエット???

ラヴィニアが片腕ブンブンしながら待ってるよ。」



ジュリエット

「あ、う、ん、ごめん今行くわよっっっ!!!!」



NC②

ジュリエットは自身のほの暗いドロドロとした記憶を振り切るように、わざと人一倍明るく見せながら、【家族】の元へと掛けて行った。


嗚呼……なんと愚かな事を。

例え忘れたくても君達はもう二度と【忘れることは無い】。

思い出し、手に入れた記憶は間違いなく君達のモノなのだから。


さぁ、この先の【物語ストーリー】の先に彼等はどんな記憶を手にするのでしょうか……?



続きはすぐ其処そこに……




NC①

獸壹話じゅういち話 【追憶の懐古ノスタルジア




~終演~




──to be continued(トゥ ビィ コンティニュード)…………───




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