第蟲話 【名無しの箱庭(ガーデン)】

配役表一覧✝

●PC1 タイタス→男性

●PC2 マクベス→男性

●PC3 ジュリエット→女性

●PC4 ラヴィニア→女性

●NC(ナレーション)①→女性

●NC(ナレーション)②→男性


✝男女比率✝

男3・女性3(6人台本)


✝ジャンル✝

SF・ダークファンタジー【R-15G】

(※同性愛表現・残酷描写・鬱展開有)


✝所要時間✝

約40分




────────────────────────


NC②

 永い後日談のネクロニカリプレイ風 声劇




『The Fake World of the End (ザ フェイクワールド オブ ジ エンド)』




『第弐章 Thistle(シィソー)~壊れた楽園の華~』

じゅう話 【名無しの箱庭ガーデン





マクベス

「この建物はもしかして実験をメインに造られたのかもしれないね……

此処ここも【執務室】以上に異質だし、この円柱状のモノは一体何だ?????」



タイタス

「これっ!!!???

記憶の中で同じモノを見たよっっっ!!!!

けど記憶の中で見たモノの正体までは分からなかったけど……これは水槽……???」



ジュリエット

「タイタスが記憶の中でこれと同じモノを見たのっ!!??

このヘンテコなモノがタイタスの記憶と関係してるなんて……

それにあちこち使えなくなったパソコンに医療器具があるからマクベスの言う通り何かの実験をメインにやっていたんでしょうね……でも一体何を……???」



マクベス

「それはきっとあの【資料室】で見た【第4次新型異種混合合成超生物──Χ.ί.μ.α.ι.ρ.α.(キメラ)──】の事だよ……」



ジュリエット

「【第4次新型異種混合合成超生物──Χ.ί.μ.α.ι.ρ.α.(キメラ)】???

何それ???その【 Χ.ί.μ.α.ι.ρ.α.(キメラ)】って何なの、マクベス???」



マクベス

「……動物や昆虫や人体や植物。

様々な異なる別々の生き物を生きたまま掛け合わせて無理矢理融合させ、合成する……

資料にも書かれてはいたが、そうして新たな新種の生物を作成する為に【第4次新型異種混合 合成超生物──Χ.ί.μ.α.ι.ρ.α.(キメラ)開発実験計画 V.e.r.ð.a.n.d.i.(ヴェルザンディ)──】と呼ばれる計画が続けられた……

つまり此処ここではずっと非人道的な人体実験が繰り返していたんだよ……」



ジュリエット

「そんなっっ!!!!????

じゃあこのベットの赤黒いシミもこの水槽の中身も………まさか……!!??」



マクベス

「いや、ジュリエット……それ以上考えない方が良い……」



ジュリエット

「……うん……分かったわ……

あっ、それよりタイタスとラヴィニアは???」



マクベス

「嗚呼、タイタスはラヴィニアの顔色が悪かったから

一緒に部屋の隅で休んで貰っているよ。

ラヴィニアには少し刺激が強かったようだ……」



タイタス

「大丈夫???ラヴィニア???

こっちには何も無いから平気だよ。」



ラヴィニア

「すみません、あの水槽の中身を見ていたら……

……怖くなってしまって……」



タイタス

( え???中を見た????

そんな……だって水槽の中はヘドロみたいな青緑色の液体が入っているのは分かるけど中身までは見る事が出来なかったのにラヴィニアはどうやって見たんだろう……??)


「大丈夫だよ、怖くないよ

そうだ、お守り代わりにコレあげるよ、ラヴィニア。」



ラヴィニア

「何ですか……???これ???」



タイタス

「これは指輪って言うアクセサリーだよ。

さっきこの部屋を探索していた時、落ちてたんだけど僕にはちょっとサイズが合わなくてさ。

ラヴィニアなら似合うかなって思って……」



ラヴィニア

「いっ、良いんですか???貰っても???」



タイタス

「マクベスとジュリエットには内緒だよ。

きっとラヴィニアに良く似合うよっ!!!

さぁ、手を出して。」



ラヴィニア

「はい……こう、ですか……???」



NC①

ラヴィニアは何気なく差し出した左手の指に、はめられた銀色に輝くシンプルな指輪を見た瞬間。

脳裏にザァァァーーーーーーーッとノイズが入って来るでしょう。

そのノイズの砂嵐が視界を覆う中でラヴィニアは自身の記憶の中にいた。



それは見慣れた貴女の世界。



白く、白く、白い世界と白々しい貴女の懐かしい思い出。



貴女の忘れていた、失われていた繰り返す日々の光景の記憶。





さぁ、目を醒まして見るが良いわ。




貴女が犯した【過ち】を……────────





NC②

─────ラヴィニアの記憶のカケラ

【白い部屋】のシーン──────





何時いつも決まった時間に始まる体操。

これは、【朝】の身体の機能向上。



何時いつも決まった時間に運ばれるこれは

【昼】に運ばれて来る味の無い食事。



何時いつも決まった時間に眠る時に流れるこれは 【夜】を告げる音楽。



何時いつも決まった時間に沢山様々な分野を学ぶ【勉強】と【カウンセリング】。




けれど、君は何時いつも不思議に思う事がある。




毎日のバイタルチェックの時、君の反応を無言で見て安心する白い服の人はとても怯え、何時いつも何かを恐れていた。



君よりもずっとずっと沢山の大人達が君一言一句、

一拳一動、事細かく精密にチェックし、書き込んで機械に入力している。



君の世界は白の世界。

白い部屋、白い壁、白い窓、白いベット、白い枕、

白い掛け布団。

白い窓の先もまた白い景色が拡がっている。



天井には幾つものカメラ。

そしてそのレンズの先には何時いつも【誰か】が其処そこにいる。



君に何かあれば、白い服の人達が直ぐさま駆け付けて、満面の笑顔で優しく声を掛けて来る。



毎日毎日、白い服の人は笑顔で無言で君を見る。



定期検査の時は沢山の色々なモノを見て、色々な事を話して答える。



そして。

何時いつ其処そこには必ず【彼】がいる。




ラヴィニア

「あ……痛っ……」




NC①

白くて細い腕に注射針が刺さり、苦悶に顔を歪めると目の前の白い人は息を飲んで恐怖に染まった視線を向けた。



ラヴィニア

(毎日、誰かに見られ、恐れて怯えてはまるでバケモノの様に扱わられる。

ボクは大切に大事にされているのに、如何どうしてボクは恐れ、怯えられているのだろう???

分からなくて、知りたくて。

だから、【彼】に聞いてみたんです……)


「どうして、みんな、ボクをこわがるの???」



???①(タイタス兼役)

「それは君が【特別】だからだよ。」



ラヴィニア

「ボクがとくべつ????」



???①(タイタス兼役)

「そう、君は【特別】で愛され、祝福されているんだよ……」



ラヴィニア

「あいってなんですか???

しゅくふくってなんですか???」



???①(タイタス兼役)

「嗚呼、それはね……────────」





ラヴィニア

──────その時、ボクの世界に【アイ】が生まれた……──────






タイタス

「……どうしたの???いきなりぼーっとして……ラヴィニア???」



ラヴィニア

「今……何か……誰かいたような……???

あれ……???白い部屋じゃない……???

今のはボクの記憶……???」


(あの人をボクは知っている……???

知っているのに思い出せない……

心がこんなに切ないのに思い出せない……

……誰かが……誰かがいたのに……)



タイタス

「ラヴィニア……???

もしかして記憶を取り戻したの???」



ラヴィニア

「は、はい……でも不思議と怖くはなくて……

でも、凄く会いたい人がいるんです……

だけど……誰だかは分からなくて……」



ジュリエット

「ごめん、お待たせっ!!!

ラヴィニアとタイタスは何か変わった事とか無かった???」



ラヴィニア

「は、はい……だぃ、じょうぶです……」



マクベス

「ラヴィニア???まさかその様子だと君も記憶を……?」



ジュリエット

「えっ!?!?ラヴィニア、大丈夫??!!

何か気持ち悪いとか苦しいとか辛いとかしない??!!!」



ラヴィニア

「い、いえっ!!大丈夫ですよ、ジュリエットお姉様。

それより、先を急ぎましょうっ……あ……」



タイタス

「ほら、ふらついているじゃないか。

焦る事はないし、無理は駄目だよ。

僕達も最初の頃は記憶を取り戻した時、大変だったから……

ラヴィニアは疲れただろう、少し休んで行こう。

それに服の裾のリボン解けてるから結んであげるから此処ここに座って。」



ラヴィニア

「す、すみません……タイタスさん……」



タイタス

「ううん、気にしないで、ラヴィニア。

ジュリエットみたいに上手く出来るか自信ないけど、ラヴィニアの服もとっても可愛いし、本当に天使や妖精さんやお人形さんみたいにちっちゃくて、綺麗な赤い瞳をしててまるで宝石みたいだよね。

僕はそんなラヴィニアが好きだよ……ってあれ???

顔赤いけど大丈夫???ラヴィニア???」



ラヴィニア

「えっ!?あっ、は、はい……大丈夫です……タイタス母様……」



タイタス

「え!? かっ、母様!? ぼっ、僕男なんだけど!?!?」



マクベス

「良いじゃないかタイタス。

タイタスは心配性なお母さんって前に言ったじゃないか?

タイタスはワタシの可愛い奥さんだからね」



ジュリエット

「もう!!アタシの妹??弟??に手を出してんじゃないわよ!!!!!

バカタイタスッ!!!!」



タイタス

「僕はバカじゃないよっ!!!!!」



ジュリエット

「じゃあガキタイタスね!!本当ムッツリなんだからね!!」



マクベス

「まぁまぁ。タイタスはそのままが一番だよ。」



ラヴィニア

「はい!!タイタス母様は可愛いです!!」


(あれ??!ムッツリって何だろう????

あとでマクベスさんに聞いて見よう!!!)



タイタス

「うぅ……なぁんか扱いが雑だよぉぉぉぉっ!!!!!」



ラヴィニア

(……ん?これなんだろ???

タイタスさんの足元から転がってきたこの缶……【Α.Φ.Ρ.Ο.ΔΙ.Τ.Η.(アフロディーテ)】………???

もしかしたら何かの役に立つかもしれないから拾って持っておこう。)



NC②

4人はその廃墟となった建物を出て、更に森の奥へと50m歩いた先に5メートル以上の背丈がある、大きな生垣いけがきが軽く見渡せるような少し小高くなった高台となった場所まで歩みを進めた。


そこにあるのは巨大な庭園とそれを囲む生垣いけがき

高さは約5メートル以上の背丈があり、まるで立方体の様な形と、入口と思わしき場所の中には幅は3メートル程の迷路の様に複雑に入り組んだ道がある【庭園迷宮】であった。


それには赤と青の紫陽花アジサイが満開に咲き乱れ、それぞれに赤と青の土の上に生え、綺麗に整えられたまるで赤と青の市松模様が、色鮮やかに配置されていた。


庭園に吹き抜ける風によって生垣いけがきに咲いた紫陽花アジサイ達はまるでドクンドクンと鼓動の様に脈打つようにうごき、生垣いけがきに絡み付いた棘のあるつたや木の枝を揺らしている。


すると風に乗ってピンクの花びらに混じって、君達の耳に聞こえて来る歌は徐々に大きく、ハッキリと聞こえるだろう。



タイタス

「綺麗に刈り取られて、丹念に手入れされてる……

中は何だか幾つもの複雑なルートがある迷路みたいになってるね……」



ラヴィニア

「この花、赤と青の土の上に咲いてて凄く綺麗ですね!!!」



マクベス

「待つんだ、ラヴィニア。

良くご覧、この花は【B.A.B.E.L.(バベル)】で見たモノと同じ造花だし、不用意に触らない方良い。」


(【B.A.B.E.L.(バベル)】にいた時に見たモノよりも精巧過ぎるこれらを見れば、恐らくこの【庭園迷宮】は人為的に造られたモノだと分かるが……何だ……この異様な違和感は……???)



ジュリエット

「そうよ、ラヴィニア。

綺麗なモノに惹かれる気持ちは分かるけど勝手に触って怪我したらアタシ、ショックで泣いちゃうかもしれないわ。」



ラヴィニア

「えっ!?!?そうなんですか?!?!

気付きませんでした……ご忠告ありがとうございます、マクベスさん、ジュリエットお姉様……

ボク、ジュリエットお姉様が泣いたら嫌なのでこれから気をつけますっ!!!!」



マクベス

「そんなに気を張らなくて大丈夫だよ。

それにジュリエットには今の言葉はブーメランなんじゃないかい?

ジュリエットなんて此処ここに来てから勝手に走り回るわ、木の実を食べるわで人の言う事聞かなかったしね。」



ジュリエット

「んなっ!?!?!?ぐぬぬぬぬっっ!!!

……ぐうの音も……出ないっ!!!

あ゙ーーーもぅっ!!!分かってるわよっ!!!

アタシが悪かったわよっ!!!!

……アタシも人の事言える立場じゃなかったわ。

ごめんね、ラヴィニア。」



ラヴィニア

「いえ、ジュリエットお姉様はボクを心配して言って下さったので謝らないで下さい、お姉様。

むしろボクとお揃い???の味覚が分かって嬉しかったです。」



ジュリエット

「んきゅぅぅぅぅぅぅ♡♡♡

ラヴィニアは本当に良い子だねぇ~!!!

ぎゅーしたるぞっ!!!ぎゅーーっ!!!

あーもぅーちゅきちゅきぃぃぃぃぃぃぃ!!!」



マクベス

「確かに味覚が分かったのはジュリエットのお陰ではあるけど。

はぁ……あまりジュリエットを甘やかしたら駄目だよ、ラヴィニア。

すーぐ調子に乗るからね、ねぇ、タイタス????」



タイタス

「あははは、確かにジュリエットはラヴィニアに甘々だからねって……ひぃ!!!!怖い怖いっ!!!

そんなに睨まないでよぉぉぉぉぉっ!!!」



ジュリエット

「ふぅぅぅぅぅぅぅぅんだっっっっ!!!!

このリア充がっっっっ!!!!爆発して爆ぜろっっっっ!!!!

べぇぇぇぇぇぇっっっだっっっっ!!!!!」



ラヴィニア

(リアジュウ???りあじゅうってなんだろ???)


「タイタス母様、やっぱりマクベスさんとジュリエットお姉様は仲が悪いように見えるのですが、以前に何かあったんでしょうか???」



タイタス

「まぁ……その……マクベスとジュリエットの何時いつものからかい合いだからあんまり気にしなくていいんだよ、ラヴィニア。

ほらほら、皆、コレ見て。

入口の所にプレートに【V.e.r.ð.a.n.d.i.(ヴェルザンディ) 実験開発試験場───E.D.E.N.(エデン)───】』って書いてるよ。」


(確かあの時みたファイルには『第3次実験』って書いてあった……

それに【Ἑ.σ.π.ε.ρ.ί.δ.ε.ς.(ヘスペリデス)】、【E.D.E.N.(エデン)】……本当に此処ここは【楽園】なんだろうか……???)



マクベス

「ふむ……迂回うかい出来そうなルートは見当たらない……

このまま庭園の中を通るしか他に道は無さそうだね。

此処ここで足止めを食らう訳にはいかないし、慎重にこの【庭園迷宮】を行けば、目的地まで辿り着けるだろう。皆、気を付けて進もう。」



ジュリエット

「ええええええぇぇぇっっっっ!!!??

この中に入るのぉ!!??

だって中は迷路になってるし、迷子とかになったらどうすんのよ!!??

もしも危険だったら嫌じゃんかぁぁぁ!!!」



タイタス

「そんな子犬みたいな泣きそうな顔しないでよ、ジュリエット。

そんなに迷子になるのが嫌なの???

あ、もしかして身長が……背が小さいから周りの迷路に圧迫感があって怖いとか???」



ジュリエット

「……ううぅ、そうよっ!!!怖いわよっ!!!

何よっ!!文句あるっっっ!!??」



ラヴィニア

「そうだったんですね、ジュリエットお姉様。

ジュリエットお姉様はちっちゃくないですよっっっ!!!

ジュリエットお姉様はとっても素敵ですっ!!!

でもボクも実は背の高いこの迷路がちょっと苦手だったんです……だから……その……手を繋いでもいいですか、お姉様???」



ジュリエット

(うっわ、ラヴィニアの手ちっっちゃっっっ!!!!

可愛い過ぎんかっっ!!!???)


「うぅっ……マクベスの言う通り、このまま此処ここ地団駄じたんだ踏んでも仕方がないし、ラヴィニアの手を握りながらなら先を進めそうな気がするから、このまま気を引き締めながらゆっくり進めば……」




NC①

ユルサナイ。許さない。赦さない。ゆるさない。

ニガサナイ。逃がさない。ニガサナイ。


死んじゃえ。死ね。消えて。消えろ。怖いよ。

助けて。殺して。殺してやる。恨んでやる。


憎んでやる。何故なぜ?どうして?

殺さないで。死なせて。許さない。


オマエヲ ニガサナイ。お前達を許さない。




【―――絶対に 許さない―――】




ジュリエット

「ひぃっっっ!!!!!????」



タイタス

「どうしたのっ?!ジュリエットッッッ!!??」



マクベス

「ジュリエットッッッ!!??

何が起こったんだっ!!!????」



ラヴィニア

「ジュリエットお姉様っ!!!???

どっ、どうなさったんですかっ??!!」



ジュリエット

「えっ……3人には見えないの????

ほ、ほら、あそこに……生垣いけがきの中に血塗れの子供達が沢山いるじゃない……

アタシ達をずっとにらんで許さないって言ってて……沢山の声が聞こえて……やだっ…やめて……そんな目でアタシを見ないでぇぇぇぇぇぇえっっっ!!!」



NC②

ジュリエットの目には他の3人とは異なるモノが見えていた。


其処そこには奇妙で奇怪で不気味で異様な光景が広がっている。


生垣いけがきの中から植物の枝や幹に寄生され、身体のあちこちに幹が突き刺さって、赤黒い体液を勢い良く吹き出しながら、臓物が飛び出した所々蟻の様な虫に身体を蝕まれた姿をした沢山の子供のアンデットが現れた。


その子供のアンデット達は、歪んだ笑みを浮かべて血のあぶくを吐き出してながら、ゲラゲラ、ケタケタとわらい声を発し、ガタガタと身体を痙攣けいれんさせながら生垣いけがきの中から無数の腕を出し、うごめいていた。


強い憎悪と悪意の籠った瞳で睨み付けながら、何度も繰り返し、呪いの言葉を吐き出してながらうなっていた。


その異常な光景を目の当たりにしたジュリエットは、信じられない光景と得体の知れぬ恐怖が、全身に襲い掛かって後退りをして震えながら叫び、恐怖は狂気となって支配した。




──────だが、その瞬間──────





ラヴィニア

「……Earth to earth(アース トゥー アース)。

Ashes to ashes(アシェズ トゥー アシェズ)。

Dust to dust (ダスト トゥー ダスト)。

【主よ 憐れみたまえ 《(キリエ・エレイソン》】……」




NC①

先程までの光景は跡形も無く消え、まるで最初から何事もなかったかのように周りの景色は静かに咲き誇る紫陽花アジサイの花だけがあり、ジュリエットは一体何が起こったか分からず、何度も目を擦って、他の3人の顔と周りを凝視した。



ジュリエット

「やだやだやだやだっっっ!!!!!!

やめてやめてやめてっ……あ、あれ……???

何も無い????あれ????確かにさっき変なのがあったのに……消えた????」



タイタス

「大丈夫???ジュリエット???

僕にはジュリエットが言ってたモノは見えないけど……幻覚かそれとも白昼夢でも見たの???」



ジュリエット

「ふぇんふぁふ???ふぁふひゅむ???

ふぉんなふぉとふぁいんだふぇど???

っぱぁっ……んーーーーー????

確かに見たし、声も聴いたんだけど……あんれぇぇぇ???」



ラヴィニア

「ジュリエットお姉様、そんなにお顔の頬を引っ張ては腫れてしまいますよっ!!どうか御自愛して下さいませっ!!!」


(……ボク……何か言ったような……???分からない……あれ……???)



マクベス

(……さっきラヴィニアが何か言っていたが、ジュリエットの半狂乱状態の声で良く聞こえなかった……でもほんの一瞬、まるでラヴィニアでは無い別人のような気配がしたが……)


「ジュリエットがそんな悪意のある嘘や冗談を付くとは到底思えない……

幻覚や白昼夢だったとしても其れを見るきっかけがある筈だが、これと言って思い付かない……他に何か変わった事はなかったかい、ジュリエット???」



ジュリエット

「うーーーーーん……アタシもいきなり変なモノ見ちゃったし、特に心当たりは無いんだよね……

気のせいって訳でも無いし、凄くリアルだったし。

でも、もう大丈夫よ、大丈夫。」



タイタス

「無理しちゃ駄目だよっ!!!ほら、ふらついてるじゃないか。

ちょっと休んだほうがいいよ、それから考えたって

遅くないからさ。」



ラヴィニア

「本当に大丈夫ですか???本当の本当に???

ジュリエットお姉様に……何かあったら心配で…ん…

しん、ぱい……で……ぐすっ……」



ジュリエット

「ありがと、タイタス。ちょっとだけ肩借りるわね。

ごめんね、ラヴィニア。ちょっと休めば本当に大丈夫だから。

泣かないでね、ね???

でも心配してくれてありがとね、よちよち。

多分疲れてただけよ、だから大丈夫よ。」



マクベス

「そう、かい……幾ら馬鹿力の元気印がチャームポイントのジュリエットでもカラ元気だと調子狂うからさ、今だけでもゆっくり休むと良いよ。」



ジュリエット

「ちょっ!!!また馬鹿力って言ったわね、この野郎っ!!って……このアタシがマクベスなりの励ましを喰らうとは……その……ありがと………マクベス……

でも本当にもう動けるから大丈夫よ。」



ラヴィニア

「はっ、はい、分かりました。

ジュリエットお姉様のおそばにはボクがこうやってお姉様の手を握ってますからね。」



ジュリエット

「ありがとう、皆。もう少しだけ休んだらこの先の庭園に進んでみよっか。」



NC②

しばらく休んでジュリエットが落ち着いてから、4人はゆっくりと【庭園迷宮】を進んで行くと、同じ風景の中で5つの道に分かれた中心に大きな石碑がある分岐点が見えて来るでしょう。


向かって正面と左右、右下と左下に分かれたルートがあり、5つの道にはそれぞれ立て看板が掛かっており、正面に【夜想曲ノクターン】、右に【幻想曲ファンタジア】。


左に【輪舞曲ワルツ】、右下に【狂想曲ラプソディ】。

左下に【鎮魂歌レクイエム】と書かれていた。


しかし5つ目へと向かうの先に続く道は木々と植物の蔦や枝が茂り、通る事は出来なくなっていた。


4人は周囲を観察したが、これと言って特に変わった事も無く、中心の石碑が書かれた文字を読み取ろうにも年月が経ち過ぎて読み取る事が困難だった為、少し考えてから順番にルートを進む事を決断し、まずは【夜想曲ノクターン】のルートをしばらく進んで行くと、大きく広い空間が拡がっていた。


其処そこ]は周囲に色鮮やかな無数の蝶達が飛び交い、色とりどりの花が咲き誇り、真ん中に小さな白い石柱で出来たドーム状の屋根が付いたガゼボがある美しい景色があった。



マクベス

「この花畑の花達も全て造花だな……

今の所、此処ここは他に何も無いようにも見えるが、皆、異常や異変が起きたらすぐに言うんだよ。

ジュリエットが体験にした【ナニカ 】がまたあるかもしれない。」



ラヴィニア

「はい、分かりましたって、ひゃんっ!!!!!

ふみぃぃぃぃぃ~転んでしまいましたぁぁぁ~」



ジュリエット

「大丈夫???ラヴィニア???

足元気をつけなきゃ、危ないわよ。

ほらっ、転んでぶつけた所見せてって……ぷぷぷっ、ラヴィニアの顔中っ、花弁はなびらだらけになってるわよ。」



ラヴィニア

「す、すみません、何か盛り上がった所に足を引っ掛けてしまって……」



マクベス

「大丈夫かい、ラヴィニア???

おや???足元に何か埋まってあるぞ???

土をちょっと払って……これは……」



ジュリエット

「何???この金属のボトル???

【Τ.ρ.ω.ι.κ.ό.ς. (トロイア) 散布決定】って書いてある……何なのこれ……???」



マクベス

「何かの薬品かな???少し持つと中身が入ってるって分かるな……どうやら液体のようだが……」



ラヴィニア

「あっ!!マクベスさんっっっ!!!!

それと同じモノを此処ここに来る前に見付けて気になって持っていたんですが、えっとっ、これですっっ!!!

この【Α.Φ.Ρ.Ο.Δ.Ι.Τ.Η.(アフロディーテ)】』って

書いてあるボトルも、それと同じで中身が液体みたいなんですっ!!!」



マクベス

「何だとっ!!??よく見せてくれっ!!!

……ふむ……2つとも、サイズも内容量も同じだな……とりあえず、この2つの薬品はワタシが預かろう。」



ジュリエット

「そうね、それが良さそうだし……って、あれ???

それよりタイタスは???さっきから姿が見えないけど???」



ラヴィニア

「タイタス母様でしたら先に彼方あちらのガゼボの中を調査なさるって仰っていましたよ???」



マクベス

「ったく。一人にならないように言った筈なんだが……仕方のない、お母さんだな。」





NC①

─────タイタス ガゼボ調査のシーン─────





その頃、タイタスは小さな白い石柱で出来たガゼボの中に入ると息を飲むほど美しいモノを見た。


ガゼボの周りには小さな小さなピンク色をした薔薇バラが石柱を覆い、ドーム状の屋根の天井には色とりどりなステンドガラスがめ込まれ、光が当たるとキラキラと幻想的な輝きを放ちながら、中には白く小さな花が咲き誇っている。



タイタス

「うわぁぁぁ~っ!!!綺麗だなぁぁぁぁぁっ!!!

ステンドガラスに光が当たって色んな色があって凄い……こんな綺麗な所があったなんて……

ん……???あれ???何か光って……」




NC②

突如、足元の小さく白い一輪の花が光を放ち、その光の中でタイタスは懐かしい光景を見るだろう。





─────────光の中で見るかつての記憶。





あれは遠い遠い安らぎの日々。

遠い遠い忘れられない日々の記憶。



君の大切で大事な儚い願いと祈りの日々。



君の忘れたくなかった記憶。

君の忘れてはならない思い出。



しあわせだった、幸福だったあの日。



本当に永遠にこの時間が続けば良いと望んでいた日々。



そう、君の【罪業あやまち】の記憶。






NC①

─────タイタスの記憶のカケラ

​ 【婚礼】のシーン──────





──────それは泣きたくなるような静寂と優しい夜の日でした。





夜風は冷たく、庭園に差し込む夜闇の月。

星はきらめき、満月の月明りに照らされた花畑。

貴方のそばにいる【その子】は嬉しそうにはしゃいでキラキラと瞳を輝かせる。



???①(ラヴィニア兼役)

「わぁっ!!!空が凄いキラキラしてますっ!!!

とっても綺麗ですっ!!!!!」



タイタス

「気に入ってくれて嬉しいよ、此処ここは【俺】の秘密の場所なんだ。

さぁ。こっちにおいで、もっと凄いものが見えるよ。」



NC②

小さなランプにともる灯りを手に、【その子】の手を握ってゆっくりとガゼボの中に入る。

小さなベンチに2人で座り、輝くステンドガラスの輝きの元でたわいもない話をする。


この忘れられた場所を見つけた時から今日まで準備して来たのです。



誰にも分からないように。誰にも邪魔されないように。

誰にも見つからないように。誰にも気付かれないように。



そっと2人で寄り添い合いながら貴方は【その子】の頭にそっと真っ白いベールを被せた。



不思議そうに、嬉しそうに笑う、愛しい【その子】。



愛おしくて愛おしくて、切なくて苦しくて。

怖くて怖くて、恐ろしくて。

貴方はぎゅっと【その子】を抱き寄せ、優しく抱き締める。



タイタス

「君は……病める時も、健やかなる時も、富める時も、貧しき時も、 俺を愛し、敬い、慈しむ事を誓うかい……?」



NC①

幼稚なごっこ遊びのような問い掛けに、【その子】は笑顔で答えてくれました。

貴方はそれがとても嬉しかった、だから。

【その子】の手を握り、抱き締めながら口付けました。




???①(ラヴィニア兼役)

「……はい……ずっと、ずっと貴方のそばに居ますよ……」



タイタス

「嗚呼……ずっと……一緒に居よう……────」





NC②

───────彼は【罪】を犯し続けます。




例えそれがどれだけ罪深い事であっても彼は祈り続けました。



この想いだけは【真実】だと、このまま2人で遠くに行けたらと望む、ささやかな祈りは最後まで叶わぬまま………───────





???②(NC①兼役)

「─────……【ウソツキ】……─────」





NC②

嗚呼、彼の記憶は【シアワセ】なのでしょう。


愛しいモノへの感情と【心】を宿す、【恋慕れんぼ】なのですから。


けれど今のタイタス、君にはもう【関係ない】。

何故なぜなら君はもう【死んでしまっている】のですから。


死んで蘇った君にはもう【関係ない】。

終わってしまっている君にはもう【関係ない】。

死から蘇り、目覚めた君にはもう【関係ない】。



【誰かを愛し、愛される資格は無い】のない君が愛するのは【家族】だけ。



さて、彼の愛が本当に【愛】なのか?

それは次回の【物語ストーリー】にて語りましょう…………。





NC①

獸壹話じゅういち話 【名無しの箱庭ガーデン




~終演~




──to be continued(トゥ ビィ コンティニュード)…………───




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