第蟲弍話 【楽園の華(キミ)】

配役表一覧✝

●PC1 タイタス→男性

●PC2 マクベス→男性

●PC3 ジュリエット→女性

●PC4 ラヴィニア→女性

●SV1 ???①(作中名称公開)→女性

●NC(ナレーション)①→女性

●NC(ナレーション)②→男性


✝男女比率✝

男3・女性4(7人台本)


✝ジャンル✝

SF・ダークファンタジー【R-15G】

(※同性愛表現・残酷描写・鬱展開有)


✝所要時間✝

約40分


────────────────────────


NC①

──────昔々、【神様】は人類ヒトを造りました。



【神様】は 人類ヒトに【楽園】を与え、

こう言いました。



【知恵の実】だけは禁じると……



けれど人類ヒトは【罪】を犯し、

教えに背いて【知恵の実】の禁を破りました。



ゆえに彼等は【罰】を与えられ、

人類ヒトは【楽園】を追われてしまいました。




─────────では、問題です。




何故なぜ、【知恵の実】は禁じられたのでしょうか?



【知恵】を持つ事が【罪】だったのでしょうか?



答えは【神様】の【思惑シナリオ】通り……───────





NC②

 永い後日談のネクロニカリプレイ風 声劇




『The Fake World of the End (ザ フェイクワールド オブ ジ エンド)』




『第弐章 Thistle(シィソー)~壊れた楽園の華~』




蟲弍じゅうに話 【楽園のキミ





NC①

4人は仲良く手を繋いで元の場所に戻ると

木々と植物のつたや無数の草や

枝がしげり、通る事は

出来なくなっていたはずの【鎮魂歌レクイエム】のへと

向かう道の障害物が無くなっていた。


確かにあったはずのものが無い事に、

不思議そうに4人が頭を傾げながら

その道の先を見つめると、道の向こうから

また【歌】が聞こえて来るでしょう。


声の主は明るく、優しく楽しげに歌う声には

敵意も悪意も殺意も感じない。


その歌声を聞いた4人はまるで蜜蜂や

蝶が花の蜜に誘われるように、フラフラと

鎮魂歌レクイエム】の先に続く道を

暫く進んで行くと、4人の眼下に現れたのは

一面美しい薄い赤紫色に染まった、

沢山の蓮華の花畑と巨大な桜の樹であった。


周囲を観察しながら花畑を進んで行くと

花畑に交じって辺りに無数の墓標を見つけるが、

古びた墓標からは何の気配もしない。


4人が桜の樹の近くまで来ると

その桜の樹がおよそ樹高じゅこう約20m、

幹囲かんい約10m。

枝の広がりはなんと東西25m、南北20m。

樹齢は少なくとも千年以上は経っているのが

分かるでしょう。

大きく広げた枝のそれぞれに豪華絢爛な

美しい桜の花が満開に咲いている。



風に乗って舞い散る桜の 花弁はなびらと聞こえて来る【歌】。



その桜の巨木の下で一人の可憐な少女が座っていた。



???①

「あれぇ????誰か来たぞぉ????

お客様かしらぁ????

お客様、おはよう、こんにちわ、こんばんわ。

ようこそ、名も知らぬ来訪者様。

【Ἑ.σ.π.ε.ρ.ί.δ.ε.ς.(ヘスペリデス)】の深部。

【E.D.E.N.(エデン)】へ。」



マクベス

「……やぁ、丁寧な挨拶、ありがとう……。

初めまして、ワタシはマクベス。

君は……誰だい???

此処ここには君だけしかいないのかい???」



???①

「あれれ???マクベスじゃないかぁ。

それにタイタスにジュリエットォ。

久しぶりじゃない???どうしたのぉ???

寝ぼけてるのかなぁ???」



タイタス

「な!!!???

僕達の名前を知っている!!!???」



ジュリエット

「アタシ、この子の事知らないし、

今初めて会ったのよ!!!??

なのにアタシ達の事を知っているなんて

どう言う事!!??」



???①

「んんん???

そっちの子は知らない子だなぁ???

アナタはだぁれぇ???」



ラヴィニア

「え…………ボ、ボクは………」



???①

「うんうん………。

嗚呼、アナタがラヴィニアなんだねぇ。

創造主様カミサマ】と【司教様】が

教えて下さったから分かったよぉ。

宜しくね、ラヴィニア」



マクベス

(何だ……まるで見えない誰かと

会話をしていたかのように見えたが……

それに【創造主様カミサマ】と【司教様】とは一体……)


「すまない、ワタシ達には過去の記憶が

無いんだ……だから君の事も覚えてないし、

君が誰なのか分からないんだ。

もし良かったら君の事を

教えて貰えないかな???」



???①

「およよ???忘れちゃったのぉ???

じゃあ自己紹介しよっかぁ、

こちらの名前は【ヘレナ】だよぉ。

ヘレナはヘレナって言うんだよ、よろしくねぇ」



NC②

ヘレナと名乗った少女はオレンジ色に

地面までに伸びた長い長い髪と

深海の海のような蒼い瞳に白い肌。


頭部からは白と黒のロップイヤーの

ウサギ耳を生やし、ピンクの桜の花飾りを付け、

若草色のウエディングドレスのような服装に

身を包み、美しく愛らしくニコニコと

笑みを浮かべながら右にゆらゆら、

左にゆらゆらと揺れながら4人を見つめている。


その馴れ馴れしい声も反応も

君達にとっては取り戻した記憶を刺激せず、

ただ4人は混乱するだけだった。

ただの背景???それとも重要人物????

一体彼女は誰なのでしょう???



ラヴィニア

「ヘレナ様……???

あの、宜しくお願いします?????」



ヘレナ

「あははは。

ヘレナで良いよ、ラヴィニアァァァ。

ラヴィニアもタイタスもマクベスも

ジュリエットも忘れちゃったのぉぉぉ???

でもね、忘れちゃっても大丈夫だよ、

ヘレナは忘れてないからぁぁぁぁ」



ジュリエット

「……貴女はそうかもしれないけど、

アタシ達にしたら初対面なのよ。

悪いんだけど何か知り合いっぽいし……

どんな些細ささいな事でも良いの、

貴女はアタシ達の何を知っているの???

教えてくれないかしら???」



ヘレナ

「あらら、記憶が無い???それは大変だねぇ。

でもごめんね、それは無理で

駄目で教えられないのぉぉぉ。

教えてあげたいんだけど【司教様】が

【ルート分岐には早過ぎる。

近道もズルも認めないし許さない】って

仰ってるから教えられ無いのぉぉぉ。

導いて下さるのはヘレナじゃなくて

創造主様カミサマ】から仕方ないねぇぇぇ」



マクベス

「……さっきも言っていたその事なんだが、

すまないが【創造主様カミサマ】と【司教様】について

教えてくれないか???

ワタシ達の記憶の中にはその人物に

関する情報がないんだ」



ヘレナ

「あららら、皆ってば忘れん坊さんだねぇぇぇ。

創造主様カミサマ】は【創造主様カミサマ】で

【司教様】は【司教様】だよぉぉぉ」



タイタス

「えぇええ!!!??

あの、もうちょっと具体的に

教えてくれないかな???」



ヘレナ

「うふふふふ。

創造主様カミサマ】を信じれば良い事が

沢山あるんだよぉぉぉぉ。

創造主様カミサマ】は素直で信仰心のある

敬虔けいけんな信徒の良い子には

とても、とてもお優しくて。

【司教様】も仰ってたのぉぉぉぉ。

良い子には【寵愛ちょうあい】を下さるんだよぉぉぉぉ。

素敵だよねぇぇぇぇ」



ジュリエット

「……へ……へぇー……」



ラヴィニア

「凄い????ですね????」



NC①

右にゆらゆら、左にフラフラ。

まるで踊っているように不規則に身体を

動かしながら歌うヘレナの顔は始終、

ニコニコと微笑んでいる表情のまま。

更に彼女の口から繰り返しつむがれ零れる、

創造主様カミサマ】と【司教様】とは

一体何者なのかしら???



タイタス

(う、うーん……会話が会話として

意味を成してない……)


「じゃ、じゃあ此処ここについて

何か知らないかな???

【Ἑ.σ.π.ε.ρ.ί.δ.ε.ς.(ヘスペリデス)】や

【E.D.E.N.(エデン)】とかこの場所は

何なのかな???

何かの実験施設跡なのは分かるんだけど……

それに君はずっと一人きりで

此処ここにいたの???」



ヘレナ

此処ここはねぇぇぇヘレナと

【コドモタチ】の【永遠のお家】だよぉぉぉぉ。

ヘレナも【コドモタチ】も4人に会えて

とっても嬉しいよぉぉぉ」



マクベス

(【寵愛ちょうあい】……???

確か【B.A.B.E.L.(バベル)】にいた

ヴァイオレンタも同じ事を言っていたが……

それに【永遠のお家】に【コドモタチ】???

何の事だ……???

彼女以外誰も見当たらないが……???)


「ん……???あっちを見てくれ、3人共。

彼女の背後の樹の先に道が見えるぞ!!!」



タイタス

「え!!!???本当!!!???」



ラヴィニア

「見えました!!!

確かに道があります!!!!

道の先は良くは見えませんが、

先に進めそうです!!!」



ジュリエット

「じゃあこの先に此処ここから脱出する

出口があるって事よね、よっしゃぁぁぁぁ!!!」



NC②

花畑を抜け、桜の巨木の少し先をマクベスが

指さす方向に視線を動かせば、

小さな、小さな細い小道が見えて来る。

拍子抜けするほどあっさりと見つかった

花園の出口。

その道を見た4人はようやく表れた出口に

安堵あんどし、期待の表情を浮かべた。



ただし。



その道は【彼女ヘレナ】の背後。




ヘレナ

「……駄目……あっちは駄目だよ……」



タイタス

「えっ……???」



ラヴィニア

「へ……ヘレナ……さん???」



ジュリエット

(空気が重い……何?!?!

さっきまでの口調と違う!?!?

急に雰囲気が一気に変わった!?)



マクベス

「駄目???

それはどう言う意味だ???

君は何を知っている???

まるであの道の先を知っているような

素振りだが……」



ヘレナ

「ううん、知らない。知らない。知らない。

でも【ヘレナ達は知っている】。


駄目だよ。駄目。駄目なんだよ???

あっちは危ないから行っちゃ駄目なんだよ???

あっちは危なくて、怖くて、怖くて、

恐ろしくて、恐ろしくて、苦しいんだよ???


何にも覚えてないんだね、可哀想に……

でも……うんうん。

忘れちゃったなら仕方ないよね。

大丈夫だよぉ、【創造主様カミサマ】は

皆が忘れた事をきっと許して下さるよぉ。

そうだぁ!!!

ヘレナと皆はこの【E.D.E.N.(エデン)】で

全部忘れたまま、何時いつまでも

何時いつまでも此処ここで暮らそう。

そうしよう、それが良いよね。

めでたし、めでたしぃぃぃぃL」



ラヴィニア

「忘れるって……それは困りますよ!!!

ボク達には思い出したい記憶と過去が!!!」



ヘレナ

「困る???如何どうして???

何で何で何で???

忘れたら思い出さなきゃいけないなんて、

誰が決めたの???

創造主様カミサマ】???

それとも【司教様】???

皆は犯した【罪】も【後悔】も

【痛み】も何一つ、覚えて無いのに。

思い出そうとするその記憶は綺麗な記憶???

綺麗な思い出なの????

思い出したら皆はシアワセになるの????

シアワセな真実はあったの????

無い。無い。無い。無いんだよ。

無いんだよ、何にも無いんだよ、ヘレナ達には」



タイタス

「………へ、ヘレナ………???」



ヘレナ

「ね。ね。ね。

ねぇ、シアワセだったら

こんな体になってないよね?

苦しくなかった、泣かなかった、でも痛かった。

怖かった。辛かった………

………………そうでしょう???」



ラヴィニア

「そんな事は!!!!

………わっ、分からないですが!!!!

でも!!!!!」



ヘレナ

「でしょでしょぅぅううう。

そんな昔の事なんかより【創造主様カミサマ】に

毎日毎日お祈りした方がシアワセなんだよぉぉ。

【司教様】が教えてくれたのぉ。

此処ここにいればミンナ、みんな、

皆、とってもシアワセになるんだよってぇ」



マクベス

「……………すまないが、妙な話をして

俺の【家族】に吹き込まないでくれないかな、

ヘレナ…………」



ラヴィニア

「マクベス父様……???」



タイタス

「マ、マクベス……????」


(マクベスが怒ってる……???!!!!)



ジュリエット

(あのマクベスがブチギレておられる??!!)



ヘレナ

「……へぇ……それは如何どうして……???」



マクベス

「君の言葉にその言葉が【真実】なら、

この状況を作り上げた

【誰か】がいると言う事だ。

この場所の事も、俺達の事も、オマエの事も。

【Ἑ.σ.π.ε.ρ.ί.δ.ε.ς.(ヘスペリデス)】、

【E.D.E.N.(エデン)】、

【第4次 新型異種 混合 合成超生物

──Χ.ί.μ.α.ι.ρ.α.(キメラ)開発実験計画 V.e.r.ð.a.n.d.i.(ヴェルザンディ)──】。

これらについて君が言う、

その【創造主様カミサマ】や【司教様】が

俺達が目覚めた理由やそれらについて

何かを知っているのかもしれない。

だったら俺達は先を

進み続けなければいけないんだ。」



ヘレナ

「それがヘレナを置き去りにする理由なの???」



マクベス

「置き去りにするとは言わないが、

着いて行きたければ好きにすればいい。

……俺達4人は前に進んで、【真実】が

知りたいだけだ。

過去がシアワセかそうでないかは自分達で決める。

へレナにも【創造主様カミサマ】や

【司教様にも、誰にも決められる事では無い。

だから此処ここにはいられない、それだけだ。」



ヘレナ

「……教えたらみんな、此処ここから

出て行っちゃうんでしょ???

ヘレナは行けないのに……ラヴィニア。

ラヴィニアはヘレナを置いて

行ったりしないよね???ね???ね???

ラヴィニアは優しいからヘレナを悲しませたり、

泣かせたりしないよね????」



ラヴィニア

「え………そ、それは…………」



ジュリエット

「ちょっと!!何よその言い方!!

相手の罪悪感に付け込む真似は卑怯よ!!!

ラヴィニアの優しさに付け込むのは

許さないわよ!!」



NC①

戸惑い。怒り。敵意。

様々な感情が入り混じる。

そんな感情も思いも関係なくヘレナは、

貴方達の混乱、困惑なんてまるで知らんぷり。

まるで楽しそうに見定めているようにも、

何も考えていないのか、何か考えているのか、

その表情からは読み取れない。

するとヘレナは少し沈黙した後、

にこやかに口を開き、微笑みながら涙を流した。



ヘレナ

「……【司教様】は言いました……

4人にヘレナの知る【全て】を教えなさいと……

4人の【七と十三の試練の咎人】に

【七と十三の試練】を与えなさいと……」



マクベス

(【七と十三の試練の咎人】???

どう言う意味だ???

……試練??咎は罪を表すが……)



ジュリエット

(ヘレナ……如何どうして泣いてるのかしら……???

まるで祈りを捧げてるみたい……)



ヘレナ

「【司教様】は4人の失われた過去と

真実を手にする手助けとして、

【七と十三の試練】を与えれば、

失われた記憶を思い出すと仰ったの。

でもね………ヘレナはそう想わない。

ヘレナはね、教えたくないの。

ヘレナはね、手助けしたくないの。

ヘレナの知る全てをヘレナは教えたくないの。

だって教えて知ってしまったら、助けてしまったら、

此処ここから皆、出て行っちゃうもの。

ヘレナを見捨てて、

【また置いて行かれてしまう】もの。

ヘレナはもうね、置いて行かれるのも、

見捨てられるのも嫌なの」



ラヴィニア

(【また置いて行かれる】???

ヘレナさんは一体何を言って………???)



タイタス

(ヘレナの過去に一体何が……???

様子がどんどんおかしくなっていってる!??!)



ヘレナ

「あはははは!!!

ヘレナには無いの。ヘレナには何にも無い。

だから皆が羨ましい、妬ましい。

ヘレナは欲しい。歩いて踊れて走れる足が。

抱き締めて触れてぬくもりを感じる手が。

欲しい。欲しい。欲しい。ヘレナは皆が欲しい。

ヘレナは皆に此処ここに、

【楽園】にいて欲しい。

ヘレナを独りにしないで。

ヘレナを置いていかないで。

ヘレナを見捨てて遠くに行かないで」



NC②

おやおや。

一体何をわめいているんでしょうね、

この木偶人形ガラクタは。


これだから出来損無いは困るんですよぉ。

おや???

彼女の言ってる意味が分からない???


いえいえ、どうぞお気になさらず。

台本通りの演技しか出来ず、

許されない脇役モブの分際で喚く、

筋書き違いの妄言なんて理解するに値しないのです。


クズはクズらしく、

ゴミはゴミらしくしているべきなのですから。




ヘレナ

「ヘレナはね、皆にされた事、忘れないよ。

ヘレナはね、皆にされた事、忘れるよ。


ヘレナはね、4人に何をされたか、忘れないよ。

ヘレナはね、4人に何をされたか、忘れるよ。


もうヘレナはね、ヘレナはね、

ヘレナはね、もう嫌だ、嫌だ、嫌だ、

あんな事、アんな事、あンナ事、もう嫌なの。


だからお願い、忘れないで、お願い、

忘れて、お願い、忘れてよ。


………ヘレナ達は【今度こそ忘れるよ】。

ヘレナ達は【今度こそ忘れないよ】。


4人の【全て】を許さないよ、許すよ。

だからずっと一緒に此処ここにいて。


……あ゙……ぁ゙ぁ゙ぁ゙……

あ゙ぁぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙!!!!

ずっと、ずっと、ずっと、

一緒に、一緒に、一緒にどうか【楽園】に、

【楽園】に、【楽園】にいてよ!!!


………………ねぇ、タイタス。

如何どうしてヘレナを【見捨てた】の???


ねぇ、マクベス。

如何どうしてヘレナを

【助けてくれない】の???


ねぇ、ジュリエット。

如何どうしてヘレナは

【お気に入り】になれないの???


ねぇ、ラヴィニア。

如何どうしてヘレナは

【お前じゃない】の???


ねぇ、如何どうして???

ヘレナは【まだ救われない】の ………???」



タイタス

(【見捨てた】???【助けてくれない】???

【お気に入り】???【お前じゃない】???

【まだ救われない】???

一体何を言ってるんだ????)


「ちょ、ちょっと!!!

一体、僕達が君に何をしたって言うんだ!!??」



ラヴィニア

「お、落ち着いて下さい、タイタス母様!!!

少し冷静になりましょう!!!

落ち着いて話せばきっと分かり合えます!!!

彼女はきっと混乱しているんです、だから!!!」



ヘレナ

「うっふふふふ、優しいなぁラヴィニアは。

優しい優しい慈愛に満ちた可愛い可愛い、

【何も知らない可哀想な真っ白な子】。

でも皆は此処ここから出て、旅立って

行こうとするんでしょう???

ならやっぱり駄目だよ、駄目、駄目、駄目。

そんな悪い子には【創造主様カミサマ】のバチが当たるよ」



ジュリエット

「……そんなのいない、【創造主様カミサマ】なんていない。

此処ここに貴女の【創造主様(《カミサマ》】はいないのよ。

……さっきもマクベスが言っていた【Ἑ.σ.π.ε.ρ.ί.δ.ε.ς.(ヘスペリデス)】、

【E.D.E.N.(エデン)】、【

第4次 新型異種 混合 合成超生物

──Χ.ί.μ.α.ι.ρ.α.(キメラ)開発実験計画 V.e.r.ð.a.n.d.i.(ヴェルザンディ)──】。

此処ここに来るまでの沢山の廃墟にあった

数々の人体実験の資料を見れば分かるわよ………

そいつらはただ人間を自分勝手に

道具オモチャ】のようにもてあそんで

なぶり続けた鬼畜のバケモノよ…。

貴女の【創造主様カミサマ】なんかじゃないわ」



ヘレナ

「あはははは、【創造主様カミサマ】はそんな事しないよ。

何時いつでも、何処どこでも

ヘレナ達に酷い事をするのは………

【アナタ達】じゃない」



タイタス

「え???……僕達……???」



ヘレナ

「……何時いつだって優しくて、

慈悲深くて、慈愛に満ちて、崇高すうこうで、

尊くて、気まぐれで、分からなくて、無慈悲で、

平等で、愛してくれて、突き落として、理不尽で、

残酷で、不平等で、怖くて、恐ろしくて、

依怙贔屓えこひいきして、

ヘレナ達以外どうでも良くて。

信じても、信じても、信じても。

裏切って、裏切って、何度もヘレナ達を

痛ぶり尽くして、決して助けてくれなくて、

救ってなんかしない………。

それが【七と十三の試練の咎人】である

【アナタ達】でしょ????」



ジュリエット

「……そ、それは……」



ラヴィニア

「……ジュリエットお姉様……」



NC①

ヘレナはくらい深淵の闇をたたえるような

光の無い瞳のまま真っ直ぐに4人に向かって、

首をかしげて問い掛けた。

その瞳からは赤い血の色の様な体液が零れ出す。



ヘレナ

「ねぇねぇ、もう一度聞くよぉ。

この【楽園】でずっとずっと一緒に

全部全部ぜぇぇんぶ忘れて、

ヘレナ達とシアワセに暮らして今度こそ、

【ヘレナを救って助けて】」



NC②

嗚呼、実に!!!!実に!!!!

あわれでみじめですねぇぇ!!!


まだあの壊れた人形は君達に

縋り付くつもりのようですねぇぇぇ!!!!!!


しかしぃ!!!

何と荒唐無稽こうとうむけい

猿芝居なんでしょう!!!!!!


君達にはる素晴らしい【心】が

彼女ヘレナには無い!!!!!!


ですから!!!

君達はわざわざそんな三文芝居に

付き合う必要など無いのです!!!!

次の舞台に立てない大根役者など

知った事では無い!!!!!!


楽園に引きこもるだけのツマラナイ【脚本ノベライズ】なんて

だぁぁぁあああれぇぇええが

喜ぶのですかぁぁああ????


そんな出来損ないの頭でも


分かる筈なのにねぇええ???

嗚呼、無惨で滑稽こっけい

醜いですねえええええ!!!!!




マクベス

「ジュリエット……

何の記憶を思い出したか、

今は聞かないがヘレナの言葉をまともに

受け取らない方が良い……

それに、もうヘレナの心は……」



ジュリエット

「分かってる……ごめん、マクベス……」



ラヴィニア

「……ごめんなさい……ヘレナさん……

それは出来ません……」



タイタス

「ラヴィニア……」



ラヴィニア

「……きっとボク達の過去にヘレナさんに

何か酷い事をしてしまったんでしょう……

でもっ!!!!でもっ!!!!!

過去に何があってもボク達はそれでも前に、

先に進みます……進まなきゃいないんです……

それがどんな苦しい事であっても。

だから…ヘレナさんの望みを叶えられずで

ごめんなさい……。

優しくなくて、ごめんなさい……」



タイタス

「まだだよ!!!!!

まだ間に合う!!!

まだやり直せるんだ!!!!

あのさ、もしヘレナが良いなら

一緒に行かないかい???

一人でこんな所にいたら寂しいよ…………

だから僕達と一緒に行こうよ!!!!

置き去りになんかしない!!!!!

僕達がヘレナを【今度こそ助ける】よ!!!!」



ヘレナ

「……ヘレナを助ける……???

ヘレナの事、見捨てたのに……???

お気に入りになれないから捨てられたのに???

ヘレナはお前じゃないのに????

救う……???助ける……???

本当に???本当に助けてくれるの???」



タイタス

「嗚呼!!何度だって君の、

ヘレナの手を掴んでみせるよ!!!」



ジュリエット

「……ったくぅ、しょうがないなぁ。

こうなったタイタスは超頑固モードになって

アタシ達だって手がつけれないんだから……

例え記憶が無くったって、

そんなの分かるんだから。

拒否権なんか言わせないわよ、ヘレナ!!」



マクベス

「まぁ……道案内は必要だからね。

ヘレナ、先程は少々キツイ事を

言ってすまなかった……

だが、ワタシ達は【家族】なんだから

誰1人置き去りにもしないさ。」



ラヴィニア

「ヘレナさん……

いえ、ヘレナお姉様……さぁ、一緒に……」



ヘレナ

「あ、ああ……ヘレナは……ヘレナは……────」



NC①

戸惑いながらも震える手て、

4人から差し出された手を握り返そうとする

ヘレナの脳内に突如としてノイズ混じりに、

ある映像と共に声が響き渡った。


その映像は黒い炎を上げながら、

焼き果て尽くされてしまった

無惨な【楽園】の姿が流れる。




NC②

〘────あらあら、

また【忘れて】しまったんですか???



全く、これで【何度目】でしたっけ???



アナタは【役割】を果たさなければ

ならないんですよ???



それが【我等の偉大なる家族のおさ】から

命じられた【務め】。



これでは何の為の【楽園】か、

分かったもんじゃ無いですねぇ……〙




ヘレナ

「……あ……さま…ぁ……ぁぁ……

ごめ……わたしは……ヘレナは……」




NC①

〘────可愛い可愛い【歌姫ヘレナ




アナタの【楽園】の【コドモタチ】は




【どうなった】の……???──────〙




ヘレナ

「……嗚呼……そうだった……。

そうだ、そうよ、そうなんだ、そうだよ……

みんな……みんな【悪い子】だ……」



マクベス

(ん??何だ……???

今何か誰かと話していたような……???

それにこの地響き音は一体……???)


「ヘレナ???どうし……ヘレナっ!?

何を!!??」



ジュリエット

「避けて!!!!タイタス!!!!

ラヴィニア!!!!」



NC②

突如、ドオオオオオォォォォォンっと

轟音が鳴り響く。

ラヴィニアとタイタスのいる場所の地面が

大きく抉られ、まるで【ナニカ】に

力強く叩き付けられたかのように

それまで美しかった花畑はぐちゃぐちゃに

潰されてしまった。


そして4人はブツブツと呟き続ける

ヘレナに視線とゆっくりと動かすと、

其処そこには先程までの可憐な姿には

相反したモノがあった。


それは無数にうごめき、胎動する【触手】。


ヘレナの両腕がある筈の所から不気味な

色をした何十、何百本もの異形の手が

生えていたのです。



嗚呼、それにしても何て野蛮で下品で

恐ろしく醜い怪物でしょうっっっ!!!!!!!


綺麗に造られた芸術作品の君達が

傷付かなくて良かったですねぇぇぇっっ!!!



特にタイタスとラヴィニア。

君達2人は愛すべきの声が無ければ、

じかに食らっていたでしょう。


あとでお礼を言っては如何いかがですかな???

【2人のお陰で肉ミンチにならずに済んだよ、

アリガトウ☆】ってね。



ラヴィニア

「えっ……???きゃぁああっ!!!??

……ひぃっ!!!!???

あっ…へ、レナ姉様……

如何どうなさったんですか……??」



タイタス

「うわぁあああっ!!??な、何だっ!!??

こ……これはっ!?!?

……へ、ヘレナ……な、何で……???」



NC①

貴方達は突然の異変と衝撃に一歩、後退あとずさる。

すると今まで静かで優しかった花畑は、

悪夢のような景色へと変わって行く。

足元の花が、周囲の緑が、あんなにも

美しい世界がおぞましい有様になってた。

蠢く毒々しい花と大地をうねる巨大な木の根。

墓標の下から大量の死者達が目覚め、

ヘレナを崇めるように歓喜の声を上げる。

そして4人を見つめるヘレナの瞳には

狂気と悪意と殺意と敵意に支配され、

【誰一人、生かして出さない】と言う

強い意志が籠っていた。



ヘレナ

「そう……タイタスもマクベスもジュリエットも

ラヴィニアも皆、ヘレナ達を苦しめて傷付けて

沢山沢山、ヘレナ達を……!!!!

何も無いヘレナを。何も持ってないヘレナを。

またヘレナ達から【奪うんだ】……………

此処ここは【創造主様カミサマ】と

【司教様】が与えてくださった【楽園】。

此処ここにいれば辛い事も、悲しい事も、

痛い事も無い、この【楽園】にいれば

苦しみも無い、死ぬ事も壊れる事も無いの。

だから過去なんて忘れて良いのに、

昔の事なんて失くして良いのに。

皆はそんなに綺麗に造って頂いて、

自分達で地を踏み締めて歩ける足があるのに、

誰かを抱き締めて繋ぎ合えて、

触れる両手があるのに。

なのに……なのに、なのに、なのに。

如何どうして???如何どうして???

如何どうして???

嗚呼……そうか、皆、みんな…………

ミンナ【悪い子】だ……」



NC②

嗚呼、何と言う事でしょうっっっ!!!!!


君達の心を癒したかつての【楽園】は

地獄のような醜悪になってしまった!!!!!


けれどお気になさらず!!!!!

所詮【楽園】なぞ、

偽りの見せかけの鳥籠っっっ!!!!!


終わった世界こそが君達に相応しいぃぃぃっ!!!!


ヘレナ

「罪には罰を。罰にはとがを。

罪にはあがないいを。罰にはむくいを。

そうだ、そうよ、そうなんだよ。

罰をあげなくちゃっ!!!!

許さない。許さない。許さない。

ヘレナ達を置いて行く悪い子は【創造主様カミサマ】と

【司教様】の代わりにヘレナが

ミンナにお仕置きしてあげる。

そして皆で【創造主様カミサマ】に

お祈りをしないとね。

【祈り】と【祝福】と【寵愛ちょうあい】と

【呪い】を込めて………フフフ……

アハハハハハハハ!!!!!

そうだね!!!そうなんだね、【創造主様カミサマ】!!!!!


…………そうだね、足を取らなきゃ。

そうすれば、皆、何処どこにも行けないね。


そうだね、腕を取らなきゃ。

そうすれば、皆、ヘレナとお揃いだね。


そうだね、肩も取らなきゃ。

そうすれば、這う《は》事も出来ないね。


そうだね、頭も取らなきゃ。

そうすれば、余計な事は考えないからね。


そうすれば、何にも出来ないね。

そうすれば、どうする事も出来ないね。


そう。そうだよね。そうなんだよね。


アハハハハハハハハハハ!!!!!!

嗚呼!!!【創造主様カミサマ】!!!!!

偉大なる【創造主様カミサマ】!!!!!

アハハハハハハハハハ!!!!」




NC①

蟲弍じゅうに話 【楽園のキミ




~終演~




──to be continued(トゥ ビィ コンティニュード)…………───




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