第烙話 【アナタはだぁれ???】

✝配役表一覧✝

●PC1 タイタス→男性

●PC2 マクベス→男性

●PC3 ジュリエット→女性

●PC4 ???①(作中にて名前発表)→女性

●NC(ナレーション)①&ヴァイオレンタ(作中兼役)→女性

●NC(ナレーション)②&???②(作中兼役)→男性


✝男女比率✝

男3・女性3(6人台本)


✝ジャンル✝

SF・ダークファンタジー【R-15G】

(※同性愛表現・残酷描写・鬱展開有)


✝所要時間✝

約40分




────────────────────────



ヴァイオレンタ(NC①兼役)

─────むかしむかし、【カミサマ】は人類ヒトを造りました。



【カミサマ】はある時、思い付きました。



人類ヒトの罪を自分ではない他の誰かに託す為に人類ヒトの中から選ばれた者との間にもう一人の【カミサマ】を造ろうと。




─────……では、問題です。




その造られたもう一人のカミサマは【シアワセ】なのでしょうか?



神様の代用品として造られ、いずれ人類ヒトの全ての罪を被らねばならないのに。



勝手に造られ、勝手に押し付けられて、

本当に【シアワセ】なのでしょうか?



そして【カミサマ】はどうしてそんな事をしたのでしょうか?



答えは簡単。



何も知らないもう一人の【カミサマ】も

罪に塗れていたからなのです。



何も知らない【カミサマ】とアナタは一緒ね。




無知は罪なのだから……──────





NC②

 永い後日談のネクロニカリプレイ風 声劇




『The Fake World of the End (ザ フェイクワールド オブ ジ エンド)』




『第壱章 Columbine(コランバイン)~オワリのハジマリ~』

 第獄ろく話 【アナタはだぁれ?】





NC①

突然、背後からガタゴトと音を立てて【ナニカ】が姿を表わした。

君達3人は先の戦闘の張り詰めていた緊張感が再びその身に走り、臨戦態勢を構えた。

するとその【ナニカ】は小さく身を震わせ、オドオドしながら口を開いた。



???①

「あっ……えっと……あの……おっ……お早う御座い……ます???」



ジュリエット

「えっ!?!?」



タイタス

「へ???」



マクベス

「はぁ???」



???①

「ひっ……あっ、あの……ごっ、ごめんなさいっ……おっ……怒らないで……下さい……ごっ、ごめんなさい……」



NC②

現われた人物を用心深く、警戒しながら君達3人は観察する。

陶器のような白い肌に白銀に薄い紫が混じった膝丈まである長い髪を一本の三つ編みと茨の王冠を被り、服装は白いレースの付いた襟と真ん中に紫のリボンと袖にレースとフリルの付いた長い姫袖のシャツに、白のレースとフリルがふんだんにあしらわれたパニエとコルセット付きの膝下まである、ジャンパースカートに背中には大きな紫のリボンで留められ、白い生地に銀で縁取りとボタンが付いたジャケットを身にまとい、同色のニーハイと靴を履いた可憐な人物の姿があった。


一見するとまるで【人形】のように見えるが、その人物の頭には白い猫耳と腰の付け根から白い猫の尻尾を生やし、背中には真っ白い羽根の生えた翼と胴体から下と右腕と右足にかけて緑の蔦が身体を覆って白、青、紫の薔薇が咲いていた。

そして瞳の色は宝石のような輝きを放つ赤。


誰もが見惚れてしまう、まるで【天使】を連想させる姿の人物はビクビクと怯えた眼差しと身体を震わせながら3人を見つめていた。

しばらくの沈黙の後3人はハッと意識を取り戻し口を開いた。



ジュリエット

「え……あの……アタシ達、別に怒ってないわよ???大丈夫よ、怖くないわよ。」


(……何……この子……???

まるで天使とかお人形みたいでちょっとビックリしちゃったけどアタシ達と同じ存在なのかしら……???

もしかしてさっきの箱の中身ってこの子だったんじゃ……)



タイタス

「大丈夫だよ、僕等全然怒ってないし

怯えないで……ね……???」


(この子……震えてる……相当怖いんだろうな……)



???①

「ほっ、本当……ですか……???

ぁっ……あの……すみませんです……」



マクベス

「申し訳ないんだけど……君はワタシ達の敵かい……?

ワタシ達はつい先程まで此処ここで戦い、戦闘が終わった直後に君が現れた。

タイミングが良過ぎる……。

君がワタシ達を襲う可能性だってある……どうなんだい……?

返答次第じゃ……ねぇ……???」



???①

「えっ!?!?せっ、戦闘っ!?!?

なっ、何の事ですか?!?!ボッ、ボクはついさっき目が醒めて……。

真っ暗で何も見えなくて分からなくて……閉じ込められてて……ふたが開なくて……そしたら急に開いて……でっ、でもっ!!

ボクは皆さんと戦うなんて出来ませんっ!!

ぁっ、ごっ……ごめんなさい……」



マクベス

「だが君が戦えないと言う保証は何処どこにあるんだい???

口だけならば何とでも言えるんだよ……」



???①

「そっ……それは……」



ジュリエット

「ちょっとちょっとっ!!!!

マクベスッ!!アンタ何してんのよ!?!?

ほらっ!!その手に持って今にも切り掛かろうとしている刀を下げなさいってばっ!!!!

確かに警戒するのも分かるし、アタシ達を守ろうとする気持ちも理解出来るけど本人だってこう言ってるんだから、そんな殺気丸出しはやめなさいよ。

この子さっきより怯えちゃってるじゃない!!

大人気ないし、みっともないわよ。」



マクベス

「んなっ!?!?……だが……ワタシは……」



タイタス

「大丈夫だよ、マクベス。

何だかこの子、悪い子には見えないし、悪意も敵意も殺意も全然感じないんだ。

僕等の事を守ってくれようとしてるのは凄く嬉しいんだけど……もしかしたらこの子が何か知ってるかもしれないし……ねぇ……お願い……お願いだよ……マクベス……」



マクベス

「ゔっ……。」


(クソッ……タイタスにお願いされたら断れないじゃないか……)



ラヴィニア

「ぁ、えっと……その……あの……」



マクベス

「……はぁっ……分かったよ、 2人共。

……じゃあ、取り敢えず、君の事を教えてくれないかな???

ワタシ此処ここの2人は君の事は知らないんだ。

だから君の知ってる事を教えて欲しい。」



???①

「あっ……はっ、はい……わっ、分かりました。

ボッ、ボクの名前は……えっと……その…ラっ……ラヴィニアって……言います……そっ、それで……その……ごっ、ごめんなさいっ!!!!

ボク、自分の名前しか分からなくて……。

あの、皆さん……此処ここ何処どこなんでしょうか……?」



マクベス

「ラヴィニア……か……此処ここワタシ達にも分からないんだ。

ワタシ達が目覚めた時も君と同じで自分の名前以外も何も知らないし、憶えていないんだ……

さっき戦っていた敵はこの場所を【B.A.B.E.L.()】と呼んでいたけど……」



ジュリエット

「アタシもコッチのタイタスも貴女と同じ。

自分の記憶も過去も此処ここの場所も何も知らないの。

だからそんなに怯えないで、ね???

あっ!!アタシの名前はジュリエットっ!!

宜しくねっ!!ラヴィニアっ!!」



ラヴィニア

「えっ!?!?あっ、はっ、はいっ!!

宜しくお願いしますっ!!ジュリエットさん!!」



ジュリエット

「アタシに"さん"は要いらないわよ。

ジュリエットで良いし、敬語じゃなくても大丈夫よっ!!」



タイタス

「ジュリエットの言う通りだよ。

そんなに肩に力を入れなくても大丈夫だから。

僕はタイタス。タイタスで良いよ。」



マクベス

「じゃあ改めて、初めまして。ワタシの名前はマクベス。

さっきは怯えさせてすまなかった。」



ラヴィニア

「いいえっ!!ぁ……あのっ、ボッ、ボクこそびっくりさせちゃってごめんなさいです……

タイタスさん……マクベスさん……ジュリエットお姉様……よっ宜しくお願いしますっ!!」



ジュリエット

「えっ!?!?おっ、お姉様ぁ!?!?」



ラヴィニア

「あっ……ごっ、ごめんなさい……ジュリエットお姉様とお呼びする事はお嫌でしたか……???」



ジュリエット

「えっ!?あっ!?いやっ!そのっ!

全っっっっ然っっっっ!!!!良いよっ!!!!

むしろばっちこいよっ!!!ありがてぇてぇ!!

呼んで呼んでっ!!もっと呼んでっっっ!!!!!」



(えぇぇぇぇっ!?!?お姉様!?!?

お姉様って呼んでキターーーーッ!!!!

確かに先に目が醒めたのは順番からしたらアタシがラヴィニアより先に目覚めたけどお姉様っ!?!?

うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!

何かめっっっちゃくちゃ嬉しいぃぃぃぃ!!!!)



タイタス

(あれ???何かジュリエットのテンション高くない???変じゃね???)



マクベス

(まさか……もしかしてジュリエット……ソッチの気があるんじゃ……)



ジュリエット

「ちょっとぉぉぉっ!!!!何よ2人共っ!!!!

変な目でアタシを見ないでよねっ!!!!」



マクベス

「アハハハハハ……いや……何でもないよ……」



タイタス

「ウン。ナンデモナイヨ、ナンデモナイヨ。」



ジュリエット

「むぅぅぅぅぅぅぅぅぅーーー!!!!

ふんすっ!!!!ふんすふんすっ!!!!」



ラヴィニア

「えっ……えーーっと…あっ……はっ、はいっ……お姉様って沢山呼びま……きゃあぁぁぁああぁぁぁぁあっ!?!?

タッタイタスさんっ!?!?!?

大怪我してるじゃないですかっ!?!?

だだだだだだ大丈夫なんですか!?!?

はっ早くっ!!てっ、手当しないとっ!!!!」



ジュリエット

「あ゙ーーーーーーーーっ!?!?!?

そうだったっ!!忘れてたぁぁぁぁぁぁ!?!?

早く治療しなくちゃっ!!!!」



タイタス

「えっ!?!?……あっ……そう……言えばって……あれ……???

僕は…どうして……何で…こん…身体が………あっ……」



ラヴィニア

「タイタスさんっ!?!?

大丈夫ですかっ!?ふらついてらっしゃいますし、お顔色が真っ青ですよ!!」



タイタス

「…ごめん……アハハ……何か……力抜けちゃって……」



ジュリエット

「良いーーーーーから黙ってっ!!

謝るのはあとよっ!!

えっとえっとっ!!あっ!!これボロ布だけど包帯の代わりになるんじゃないっ!!

あとこのよく分かんない棒っきれを添え木にして、それにこの台みたいなの何か使えるじゃんっ!!

ほらっ!!タイタスッ!!

此処ここに座って足乗っけなさいっ!!

それとラヴィニアは包帯とかに使えそうな物をその辺から探して来てっ!!」



ラヴィニア

「はっ、はいっ!!お姉様っ!!

ボクッ、頑張って探してきますっ!!」



マクベス

「じゃあ2人が治療に集中するならワタシは辺りを警戒しつつ巡回してくるよ。他の敵が何時いつ、現れるか分からないからね。」



タイタス

「えっ!?でっでも、マクベスだってその傷……」



マクベス

嗚呼ああ、これかい?

これはアレだよ……名誉の傷……かな……?

気にしなくて大丈夫だよ、タイタス。

見た目ほどそこまで深い傷ではないんだ。

それに今は自分の心配を優先して欲しい……ワタシは君の身体に少しでも傷があるだけで嫉妬してしまうんだ……ワタシは……君の事を本当に……」



ジュリエット

「こぉぉらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!

もうストップッ!!ストップッ!!

ストォォォォォォォォプゥゥゥゥゥゥッ!!!!

マァァァクゥゥゥベェェェスゥゥゥゥゥッ!!!!

変に刺激入れてどぉすんのよっ!!馬鹿っ!!!!

イチャイチャするのはあ・と・でっ!!!!!!

早ーくー行・き・な・さ・いっ!!

hurry up(ハリーアップ)ッ!!!!」



タイタス

「イッ、イチャイチャッ!?!?えっ、ええ!?」



マクベス

「ハイハイ、仰せのままに。」



ジュリエット

「ハイは1回っ!!!!」



マクベス

「はーい、分かってるよ。」



NC②

───場面変わり マクベス巡回シーン──



マクベスは1人、戦闘の終わった跡の周囲をぐるりと見て回っていた。

周りには幾つも、幾つもバラバラになっている

肉片と瓦礫ガレキが転がっている赤い海を

バシャリバシャリと音を立てながら進んで行った。

そして戦いの跡を振り返りながら残骸ざんがいを見つめていた。








マクベス

(……あのヴァイオレンタは本気でワタシ達を殺しにきていたが……途中から刃を交えた時に感じた違和感……まるで戦う事を拒んでいたかの様にも見えた……【B.A.B.E.L.(バベル)】……恐らくはこの【】の事を言っているのは分かるが【寵愛】???【捨てないで】???【やめて】???

何故なぜ、突然あんなに発狂して……あれは一体何だったんだ……???)




NC①

するとマクベスは遠くの方でキラリと光る物が目に入って来る。

その光に導かれるように歩み、近付いて光る正体を見つけた。

それは一振りの刀。

恐らくはヴァイオレンタと名乗っていたであろう少女の武器で持ち物だったのだろう。

だが今はそのヴァイオレンタの面影さえない。


マクベスはゆっくりとその一振りの刀を見つめた。

刃はこぼれも無く、傷やヒビも入っていない、とても良い状態で残っていた。



マクベス

「これはさっきのヴァイオレンタの持っていた刀か……今後、この先また戦うかもしれないし、用心に越した事は無いな。

ヴァイオレンタ……君には悪いが持って行かせて貰うよ……」




NC②

その刀は己の腰元にある日本刀とは異なり、とても殺傷能力に長たけたモノであった。

名刀とでも呼ぶ代物しろもの

君はその刀を手にし、ゆっくりと地面から引き抜き、突き刺さっていた地面の周辺を見回し、観察すると散らばった肉片と瓦礫ガレキに混じって刀の鞘を見つけ、マクベスは抜き身の刀を鞘に納めようとする。



刀身に自分の顔が写ったその瞬間。

マクベスの脳裏にある映像が流れ込んで来る。

それは、かつてあった【誰か】の記憶。



その記憶の洪水が止めどなく流れ込み、マクベスの自我を犯して行く。





───ヴァイオレンタの記憶のカケラ 【冤罪】のシーン───




ヴァイオレンタ(NC①兼役)

「……ぃ、今……なんて……?」



???②(NC②兼任)

「おやぁ???聞こえなかったのかい???

君には【N.E.P.H.I.L.I.M.(ネフィリム)】になって貰う事にしたのだよ。

君にとっても嬉しい事だろう?光栄に思うと良い。

本来、君がした行為は決して赦される事では無いけれど償う機会と慈悲を与えなければと考えてね。」



ヴァイオレンタ(NC①兼役)

「……いっ、いやだ………いやだ……

いやぁぁぁあぁぁあぁっっ!!!!!!」



???②(NC②兼任)

「………さぁ、連れて行き給え。」



ヴァイオレンタ(NC①兼役)

「いやぁああああぁぁぁぁっっ!!!!

いやっ!!いやっ!!いやっ!!いやっ!!

離してっ!!!!離してっ!!!!

離してぇぇぇええぇぇぇぇぇええぇえっ!!!!

ヤダっ!!!!ヤダよぉっ!!!!!

私っ!!!!私っ!!!!

【N.E.P.H.I.L.I.M.(ネフィリム)】なんかになりたくないっ!!!!

いやぁぁぁぁぁぁあぁぁあぁあぁあっ!!!!!」



???②(NC②兼任)

「君の容姿ならば【G.R.I.G.O.R.I.(グリゴリ)】の彼等もきっと喜んでくれるだろう。

嗚呼、安心してくれ給え。

君が駄目になったらちゃぁんと治してあげよう。」



ヴァイオレンタ(NC①兼役)

「やだやだやだやだやだっ!!!!

やだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁあっ!!!!

助けてっ!!助けてっ!!助けてっ!!

助けてっ!!助けてっ!!助けてっ!!

ごめんなさいっ!!!!

ごめんなさいっ!!!!

ごめんなさいっ!!!!

【N.E.P.H.I.L.I.M.(ネフィリム)】だけはやめてぇぇぇっ!!!!

【N.E.P.H.I.L.I.M.(ネフィリム)】なんかになりたくないよぉぉぉぉぉぉっ!!!!

いやあぁぁあぁあぁぁあぁあぁあぁっ!!!!」





マクベス

「っ!?!?なっ、なんだ……っ!?!?」


(何だっ!?今のはっ!?!?

あれは……まさか……あの幼い少女はヴァイオレンタ……!?!?

面影がはっきりと残っていた……あれは確かにヴァイオレンタだ……必死に助けを求めて泣き叫んでいた……それに【N.E.P.H.I.L.I.M.(ネフィリム)】???

【G.R.I.G.O.R.I.(グリゴリ)】???

一体何の事なんだ???

それにあの記憶の中のもう1人の人物は一体誰だ?ノイズが酷くて顔は分からなかったが……いや……そもそもどうして彼女の記憶が流れ込んで来たんだ……???)




NC②

マクベスは頭に流れ込んで来た記憶に耐えるように、一度大きく頭を振って顔に片手を当てながらグッと狂気に飲み込まれ、引き込まれそうになるのを堪えた。

そして、はぁっと一息の溜め息を零すとマクベスはかつてのヴァイオレンタがいたであろう場所を見つめた。

其処そこには真っ赤な液溜りの周辺ではブクブクと泡が立ち、バラバラになった肉片は何も物言わずに転がっているだけだった。



マクベス

「……ヴァイオレンタ……君がどうしてワタシ達を殺そうとしたかは分からない……けれど……もしかしてあの時、苦しんでいたのは戦う事を恐れていたからなのかい……?」




NC①

答えるモノなど何もない空間に、マクベスはボソリと小さく呟いくとその場所に背を向け、3人の元へとゆっくりと歩み始める。



マクベス

(……もう二度とヴァイオレンタのように壊れるタイタスをワタシは見たくない。

あんな風にタイタスが傷付けられるのは我慢が出来ない……嫌だ……だから私はタイタスを守らねば……そうか私はタイタスの事が……)


「さよなら……ヴァイオレンタ……」



NC②

後ろでブクブクと泡立っていた音は次第に小さくなり、完全に音がしなくなった。

まるでマクベスのその声に対して声無き声で

答えたような。



……そんな気がした。




NC①

───場面変わり タイタス 治療中のシーン───




タイタスはボーッとした意識の中で自分の身体がジュリエットによって治療されていく姿を眺めていた。

ジュリエットとラヴィニアの2人によって、両足は別方向に曲がっていた箇所をその辺に転がっていた木々やナニカの骨だったモノで添え木され、深手の傷跡にはボロ布で包帯代わりに止血され、グルグル巻きにされていた。


また偶然、ジュリエットが見つけた強固な金属製のトランクの中から裁縫セットを見つけ、傷を負った箇所を縫われ、手当てされながらタイタスは天井をゆっくりと眺めていた。



タイタス

(……僕……どうしちゃったんだろう……?

確かマクベスとジュリエットと一緒にあの大きな黒い扉を見ていたんだけど、其処そこから記憶が曖昧だけど、でもマクベスを守らなきゃ、守らなきゃって気持ちが強くなっていって……)



NC②

するとポタポタと音がタイタスの耳に届く。

それは戦闘時に天井まで飛び散った赤い液体の雫が零れ落ちいた。

そしてその零れ落ち続ける雫のる一適がピチョンっと音を立て、タイタスの右目に落ちた。



タイタス

「!!!???眼に何か入ってっ!?!?」



NC①

突然の事に驚いたタイタスは咄嗟とっさに片手で自身の右目に手を当てた。

すると閉じたはずの片目の真っ暗な視界の中でタイタスの脳内にザーッと音を立てて、ある光景が浮かび上がって来る。



それは自分ではない誰かの記憶。

その記憶はまるで走馬灯のように流れ、タイタスの自我を蝕み始めた。




NC②

──ヴァイオレンタの記憶のカケラ

【破滅の足音】のシーン──────



カチコチ、カチコチ。時計の針が時を刻む。


カチコチ、カチコチ。無常に時を進める。


冷酷に。残酷に。無慈悲に。無感情に。


時が流れる。


一体、何時間の時が流れたか【彼女ヴァイオレンタ】には分からない。


無機質な部屋の中で言い知れぬ孤独を感じながら怯えと抗えない恐怖に震える彼女は、じっと俯いたまま声を殺して耐えていた。



またカチコチ、カチコチ。時計の音がする。



ヴァイオレンタ(NC①兼役)

(……【あの子達】は大丈夫かしら……???

嗚呼……どうかどうか【カミサマ】……お願い……どうか、どうか……無事でいますように……でも……私……これからどうなっちゃうのかしら……???

怖い……怖いよ……誰か……)



NC②

カチコチ、カチコチ。時計の音に混じってカツカツと誰かの足音が聞こえ、その足音はゆっくりとジワジワと彼女の元へと向かって来る。



その足音と足音の主を彼女は知っている。



ヴァイオレンタ(NC①兼役)

(この足音はっ!?!?……まさかっ!?!?ど、如何どうしてっ!?!?

何でっ!?!?何でっ!?!?だっ、だって今日はっ!!!

ぃ、いや……来ないで……やだ……怖いよ……)



NC②

カツカツと近付いて来た足音が止まり、部屋の扉がゆっくり開いた。


其処そこには微笑みを浮かべた【死神】が立っていた。





タイタス

「っ!?!?!?!?!?」



ジュリエット

「……ィタス……タイタスってばっ!!

ちょっと大丈夫?凄い顔色悪いけどまだ身体が痛むの???」



タイタス

「……ぇ……???……あ、あれ???ジュリエット……???どうしたの???」



ジュリエット

「もうどうしたのってそれはコッチの台詞よっ!!!!

急に瞳に手を当てたから傷が痛むのを我慢んじゃないかって心配したんだからっ!!!!

ホラッ、ちょっと見せて。」



タイタス

「ぁ……うん……分かったよ……」


(今のは何だったんだ……???

あれは一体誰なんだ……???

あれはヴァイオレンタともう1人…誰かがいたような……でも僕には関係ない…関係ないんだ……)



ジュリエット

「あーちょっと赤くなってるわね……一応、念の為に片目だけに包帯を巻くから じっとしてるのよ。」



タイタス

「ぅ、うん。ありがとう、ジュリエット。」



ジュリエット

「お礼はマクベスとラヴィニアにも言ってあげなさいよっ!!!!

特にっ!!!!マクベスには最大級のお礼をして上げるのよっ!!

例えば……そうね……暫く手でも繋いだら???」



タイタス

「えぇ!?!?それってお礼になるの!?!?」


(マ、マ、マ、マクベスと手を繋ぐ!?!?)」



ジュリエット

「充分お礼になると思うわよ!!

なんなら恋人繋ぎをして貰いなさい!!

アタシはもうちょっとタイタスの治療に使えそうな物を取って来るから。

アンタは絶対っ!!此処ここを離れないようにっ!!」



タイタス

(こここっ!?!?恋人繋ぎぃぃぃぃ!?!?)


「ぁっ……ぅ、うん……分かってるよ。」




NC①

───場面変わり ジュリエット探索シーン───


タイタスから離れたジュリエットは無数に散らばる瓦礫ガレキの中からタイタスの治療に使えそうな物を手当り次第、無心にき集めていた。

赤い海の中にぷかぷかと浮かぶ、かつてヒトであった筈の誰かの一部に君は目を向ける。



ジュリエット

「…………………っ」



NC②

ジュリエットの心に暗い影がじわりと侵蝕する。

自分達は今回戦いに勝利したが、もし自分達がヴァイオレンタに敗れていたら この散らばる無数のヒトであったモノと同じように無惨な結末になっていたかもしれない。

そんな不安がジュリエットの心にぎってしまう。

それを脱ぎ払うように視線を外し、赤い海にジュリエットの顔が写ったその瞬間。



ジュリエットの脳裏にノイズが走る。



それは誰か《彼女》のかつての記憶。

それは誰か《彼女》の忘れたかった思い出。



ジュリエットの自我に流れ込んで来る感情。

それは深い深い闇。



ジュリエット

「っ!?!?な、何っ!?!?」




NC①

───ヴァイオレンタの記憶のカケラ【け口】のシーン────



???②(NC②兼任)

「やぁ、調子はどうだい?あまり成績が良くないと聞いたからね、様子を見に来たのだけれど……御楽しみ中だったかな?」



ヴァイオレンタ(NC①兼役)

(……痛い……痛い……苦しい……苦しい……怖い……怖いよ……やめて……やめて……やめて……)


「もぅ……や、めて……くださ……おねが……」



???②(NC②兼任)

「何を言ってるんだい???

まだ彼等は君をしみたくて待っているんだよ???

全く何の為に折角、君を【N.E.P.H.I.L.I.M.(ネフィリム)】にしたと思っているんだい???

さぁ、今日のノルマは100人。まだたったの10人じゃないか?

こんな事で根を上げてどうするんだい?」




ヴァイオレンタ(NC①兼役)

「ぁ゛ぁ゛……たす……けて……」



???②(NC②兼任)

「やれないならば処分するだけだよ?

棄てられたいかね?他の【N.E.P.H.I.L.I.M.(ネフィリム)】達のように、ね……???」



ヴァイオレンタ(NC①兼役)

「……ぃや……やだ……捨て……ないで……ごめ……なさ……ゆる…して……」




NC②

無数の手と無数の身体が彼女に覆い被さって

襲い掛かる恐怖と悪意に、少女は悲鳴を上げる事も出来ず、痛みと苦しみと絶望が支配する。


醜く暗いいやしく、汚い欲望が彼女の全てを奪い、喰らい尽くす。

彼女は毎日犯され、なぶられ、けがされる。


毎日、毎日、毎日。何度も、何度も、何度も。

繰り返される地獄の日々。

終わらない陵辱りょうじょく

終わりのない欲望のけ口。

い底の瞳で彼女は【カミサマ】に祈る。




ヴァイオレンタ(NC①兼役)

「おねが……かみ……さま……こ…ろ……して……」





ジュリエット

「っ!?!?何、今の……!?!?

ヴッッッッ!!!!…ウグッ……おぇっ……ゲェッ……ゲホッ、ゲホッ!!!

何て……むごくて酷い事を……」


(あれはヴァイオレンタッッ?!?!

でも凄く幼くてこれはヴァイオレンタの記憶???

でも……あれは……誰なの???

それに【N.E.P.H.I.L.I.M.(ネフィリム)】って一体……)



NC①

ジュリエットは赤い海に写る自分の顔を見つめながら小さく頭を振った。

赤い海は何も語らず、ただただジュリエットを写す鏡のように揺らめいていた。



ジュリエット

(落ち着いて……落ち着くのよ。

アタシは大丈夫、アタシは大丈夫、アタシは大丈夫。

だってあれは彼女であってアタシじゃないんだから……)



ラヴィニア

「ぉっ、お姉様???ジュリエットお姉様???

だっ、大丈夫ですか???

顔色がとても悪いです、何処どこかお身体がすぐれないのですか?」



ジュリエット

「ラヴィニア……大丈夫……アタシは大丈夫よ……」



ラヴィニア

「ほ、本当ですか……???

とてもそのようには見えませんが……あちらにいらっしゃるタイタスさんやマクベスさんをお呼びしましょうか???」



ジュリエット

「……だぁーかぁーらぁーっ!!

大丈夫だってばっ!!平気っ!!平気っ!!!

でも心配してくれてありがとうね、ラヴィニアッ!!

さぁ、タイタスの治療に使えそうな物も集まったし戻ろっかっ!!」


(……アタシは負けない……あんな悪夢なんかにアタシはどんな事があっても絶対に負けたりしない……何があっても3人を守ってみせる、絶対にっ!!!!!!)



NC②

ジュリエットの心の中にともほのおが熱く、暖かく宿やどる。

それは新たな決意の誓いの心。

決して絶望には屈しないと決めたジュリエットの新たな力である【負けない心】。



けれど、ジュリエット。



貴女はまだ【何も知らない】。


貴女はまだ本当の【絶望】を知らない。


貴女はまだ本当の【真実】を知らない。


貴女はまだ本当の【罪】を知らない。




──────嗚呼、何時いつか全てを知るの日に。




ジュリエット。



貴女は【】を言えるのかしら………???──────





NC①

場面は代わり、ジュリエットはタイタスから離れて周囲の瓦礫ガレキを探り始めている最中さなか、タイタスはポタポタと雫の音に混じってまるで他人事のようにその音に混じってヴァイオレンタへの感情を切り捨てしまう。



まるで【】ように。


ぼーっと手を見つめるタイタスがいる場所に周囲の警戒を終えたマクベスが戻り、心配気な瞳でタイタスにかたわら寄り添って来た。



マクベス

「お待たせ、タイタス。傷の方は大丈夫かい?」



タイタス

「お帰りなさい、マクベス。

うん、平気だよ、全然痛くないし。

それにジュリエットとラヴィニアが手当てしてくれたお陰で傷も塞がったから。

それよりマクベスこそ大丈夫なの…???」



マクベス

ワタシは大丈夫だよ、それよりほら……タイタス……」



NC②

マクベスはタイタスに顔を至近距離で近付けながら優しく両手で包み込むようにタイタスの手を握った。

傷付かないように、まるで壊れモノに触れるかのように。

かすかに震える想いを込めたてのひらからは死した肉体であっても、まぼろしであっても、其処そこには確かな暖かなぬくもりが込められていた。



タイタス

「えっ!?!?!?ちょっ!?!?

ちょっとマクベス!?!?か、顔が近いんだけどっ!?!?

ど、どどどうしたのっ!?!?」


(うわぁぁぁあぁぁぁぁっ!?!?!?

何コレッ!?何コレッ!?何コレッ!?!?

何コレェェェェェエエェ!?!?!?)



マクベス

「……タイタス……ワタシがどれだけ心配したか分かるかい……???

平静を装っていても戦いの中で君を失ってしまうんじゃないかって怖かったんだ……何度言ってもタイタスはワタシを庇い続けていた……君に何も出来ず、守られたままで……君を失うのが怖くて、怖くて、恐ろしくて胸が張り裂けそうだった……」



タイタス

「そう…だったんだ……ごっ、ごめんなさい……僕………戦ってる時の記憶が凄く曖昧あいまいで、ほとんどよくおぼえてなくて……それで……本当にごめんなさい……」



マクベス

「別にタイタスを責めている訳じゃないんだ。

君が正気を無くしていたのは理解していた。

ただ、これはワタシ不甲斐ふがいなさに腹が立ってるだけで八つ当たりじゃないんだ……それだけは分かって欲しい……」



タイタス

「マクベスは不甲斐ふがいなくなんて無いよ!!

マクベスは僕やジュリエットを守ろうと必死でっ!!一生懸命でっ!!頑張っててっ!!

誰より責任感が強くてっ!!僕には無い強さがあってっ!!!!

僕はそんなっ!!そんなマクベスっ!!!!」



マクベス

「ありがとう、タイタス……ワタシは君が好きになってしまったみたいだ……」



タイタス

「……えっ???……今……何て……???」



マクベス

ワタシは君がワタシを想ってくれている以上に、君の事が……タイタスが好きだって今、はっきり自分の気持ちが分かったんだ……嫌だったかい……???」



タイタス

「ううんっ!!!!いっ、嫌じゃないよっ!!!!

僕もっ!!マクベスの事がすっ、好きだし …… ど、如何どうしよう……嬉しい……これ、夢じゃ無いよね???」



マクベス

「フフフッ、夢じゃないよ。

ワタシは正真正銘、タイタスが好きだよ。信じられないかい???」



タイタス

「そっ、そんな事、無いよっ!!!!

僕は一度だってマクベスの事を疑った事なんてないよっ!!!!!!

僕はマクベスを信じてるから……」



マクベス

「……タイタス……」



タイタス

「あっ……マクベス……」



ジュリエット

「……あのー、お二人さーん。

さっきからアタシ達ずぅぅぅぅぅぅっといるんですけどぉぉぉぉ????

ちょっとそろそろ二人の世界から帰って来てくれないかしらぁぁぁぁ????」



タイタス

「!?!?!?!?!?

うわぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁっ!?!?

びびびびっくりしたぁぁぁぁぁぁっ!?!?

ジュジュジュリエット!?!?!?!?」



ラヴィニア

「ぁっ…あの……ボッ、ボクもお姉様と一緒にいます。」



タイタス

「ララララララッ!?!?!?

ラヴィニアァァァァァァ!?!?!?

い、いい何時いつの間ぃ!?!?!?」



ジュリエット

「マクベスがタイタスに顔近付け逢って、手を繋いで告白大成功辺りからずぅぅぅぅぅぅっと居たけどアタシ達、完っっっ璧っっっに空気だったわよ、ねぇラヴィニア。」



ラヴィニア

「はっ、はい。タイタスさんの怪我の手当の物を持ってお姉様と一緒にお二人の元に来たら

お二人がお話されてて……えっと……上手く言えないんですけどお二人は仲良しさん???なんですねっ!!!」



タイタス

「ぃぃぃいぃやぁぁぁあぁぁぁっ!!!!」



ジュリエット

(おぉ…タイタスが絹を割いた乙女の叫びをあげてるわ……)



マクベス

(これはひどい……)



ラヴィニア

「ど、どうされたんですかっ!?タイタスさんっ?!」



タイタス

「ぃぃぃいいやぁぁぁぁあぁぁっ!!!!!

お願いだよラヴィニアっ!!!!

そんな純粋な眼差しで言わないでぇっ!!!!

あとジュリエットもその白い目で僕を見ないでぇぇっ!!!

マクベスも何か言ってよぉぉぉぉっ!!!

うわぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁっ!!!!

恥ずかしぃぃぃっ!!穴があったら入りたいぃぃぃっ!!!!!」



ジュリエット

「えーっと……ドンマイ☆タイタスッ!!

良かったじゃん、これで晴れて両想いになれたんだしアタシもラヴィニアも2人を祝福するわよっ!!

いやーめでたい、めでたいっ!!!!

今日は赤飯かしらー???」



ラヴィニア

「はっ、はいっ!!!!

何だかよく分かりませんがお二人共おめでとうございます!!!!」


(告白???両想い???って何だろう???

お二人はもっと凄く仲良しさんになったって事なのかな???

あと赤飯ってなんだろう???)



NC①

そんな穏やかで暖かな雰囲気の中、4人はしばしの休息を取る事にした。

戦闘で負った傷と疲労を癒しながら、時に下らないお喋りにきょうじて互いに互いの心を通じ合わせていく。



けれどそんな中、マクベスは彼女ヴァイオレンタに見切りを付け、タイタスは彼女ヴァイオレンタの見捨て、ジュリエットは彼女ヴァイオレンタを拒絶した。




NC②

自分には【関係ない】と見切りをつける事も、自分には【分からない】と見捨てる事もそんなものはこの世界では【良くあること】。




NC①

アナタも彼等も同じモノ。

何時いつだって一番大切なのは【今あるモノ】。




何時いつだって自分に関係ないモノは【見て見ぬフリ】をした方が楽で、【余計に無駄に傷付かないで済む】のだから。




NC②

ですが………其処そこのアナタはどう思いますか???



彼らの行いは【正しい】と思いますか???




彼等を責めれますか???

それとも憐れみますか???




それは次の【物語ストーリー】までお預けしましましょう………





NC①

ろく話 【アナタはだぁれ???】




~終演~




───to be continued(トゥ ビィ コンティニュード)…………───

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る