第慾話 【狂気とアイ】

 ✝配役表一覧✝

●PC1 タイタス→男性

●PC2 マクベス→男性

●PC3 ジュリエット→女性

●NC(ナレーション)①&※???①(※後半名前判明、作中兼役)→女性

●NC(ナレーション)②→男性


✝男女比率✝

男3・女性2(5人台本)


✝ジャンル✝

SF・ダークファンタジー【R-15G】

(※同性愛表現・残酷描写・鬱展開有)


✝所要時間✝

約40分




────────────────────────





NC①

 永い後日談のネクロニカリプレイ風 声劇




『The Fake World of the End(ザ フェイクワールド オブ ジ エンド)』




『第壱章 Columbine(コランバイン)~オワリのハジマリ~』

 第 よん話 【狂気と愛】






NC②

君には生きていた頃のように【味覚】を感じてしまう。


【味覚】がある事に気付いてしまったジュリエットはワナワナと身体を震わせ、グラスを手から滑べり落してしまった。

ガッシャーンッ!!とグラスが割れる音が部屋中に響き渡る。



ジュリエット

「……本当に2人には【味覚】がないの……?」



タイタス

「……うん……僕にはジュリエットが言った【甘い】とか【酸っぱい】とか【辛い】って事が分からないんだ……最初は僕だけが無いって思ってたんだけど……まさか……マクベスも【味覚】が無いなんて思わなかった……」



マクベス

ワタシもジュリエットが感じた【味覚】って言うのは何も感じない……ただ何かを口にすると、何故なぜだか分からないけど不思議な満足感が沸き起こるんだ。

もしかしたら生前の物を食べる習慣が身体に残ってるせいかもしれないけど……」



ジュリエット

「じゃあ、どうしてアタシにだけ【味覚】があるのかしら……?」



タイタス

「もしかして僕達を此処ここへ導びいた【誰か】がジュリエットにだけ【味覚】の機能を残したのかも……いや、これは仮説に過ぎないから本当の事は分からないけど……」



マクベス

(一度死んだワタシ達を蘇せて【味覚】まで残すなんて……そんな事本当に出来るのか……?

それじゃあまるでオカルトじゃないか……有り得ない……)


「でもまぁ【味覚】があるって事は良い事なんじゃない?

味が分かるだけでも【生きてる】って実感出来るんだし。」



ジュリエット

「……それもそうね……アタシはもう死んじゃってるけどそんな実感が湧かないし、まだ自分が生きてるって想いたい気持ちが強いんだ……だぁぁぁぁぁぁぁぁぁーっ!!

ウジウジ考えたってキリがないっ!!この問題は後回しっ!!

ホラッ!!探索を再開するわよっ!!」



タイタス

(ジュリエット……気丈に振舞ってるけどまだ不安なんじゃないかな? 僕が彼女を信じて味方にならなきゃ!!)


「うん!!行こう、2人共」



NC①

3人は歩みを止めていた足を室内の最奥へと進ませた。

部屋の最奥に辿り着くと其処そこには大きな黒い扉と両サイドに置かれてある白と黒の2体の石像が目に入って来る。


その石像は2体共、女性の形をしているのが分かるが、その何方どちらも異様な姿をしていた。


最奥の部屋の向かって右側の女性の石像は、全身が白い身体に長い腰まである髪と、古代の時代の西洋の民族衣装のような服を、着ているがその少女の顔からは、両目をくり抜かれてしまったような瞳があった穴からゴポリゴポリと赤黒い液体をあふれ、止めどなく流しながら胸に短剣を刺した姿をしている。


また左側の女性の石像は全身が黒い身体に右側の石像と同じく、古代の時代の西洋の民族衣装を身にまとい、両手を天高く組み突き上げた、まるで祈りを捧げているかのような姿をしている。

しかし、その石像には首から上は無く、その首の切り口部分からドプリドプリと赤黒い液体を流していた。



タイタス

「何だこの石像は……こっちは両目がまるで抉られたみたいにポッカリと穴が空いてて赤黒い液体が涙みたいに流れてる……」



ジュリエット

「うわぁ……何、コレっ!?気色悪い……ひゃぁっ!?何か靴に付いた!!ヤダっ!!最悪っ!!」



マクベス

「首が無く祈りを捧げている……まるで殉教者みたいだ……って、おいっ!!ワタシにもその変な液体を付けようとするなよっジュリエットっ!!

ちょっ、やめろってっ!!」



ジュリエット

「だって、アタシのお気に入りの靴に付いちゃったんだもんっ!!

死ねば諸共もろともっ!!道ずれだぁあぁぁぁぁぁあっ!!」



タイタス

「いや、だから……僕達3人共もう死んでるんだってばってツッコミいるかな……って、ぎゃぁあぁぁぁぁぁあぁぁっ!!??

服に飛び散ちるから暴れないでぇぇぇっ!!」



ジュリエット

「ホレホレホレッ!!汁まみれにしてやるぅぅぅぅぅーーっ!!」



マクベス

「コラコラ……あんまりふざけけてたら怒るからね……??

ほら、後でちゃんと綺麗にしてあげるから……落ち着いて、ね?ジュリエット?」



ジュリエット

(目っ!!目がすわってる!!怖っ!!)


「アッ……ハイ……ゴメンナサイ……ってぇ!?マクベス!!

顔が近いっ!!近いっ!!近いっ!!真顔で顔を近付けないで!!

ちょっ、本当にぶつかるからっ!!」



マクベス

「分かれば良いんだよ、分かれば……。

何?もしかして……ヘンな事考えちゃった?」



ジュリエット

「ばっ、馬鹿っ!!そんな事考えて無いわよっ!!マクベスのエッチィッ!!」



マクベス

「はぁ?誰がエッチだよ、人聞ひとぎきが悪い。

そう言うジュリエットの方こそ……実はヤラしいんじゃないの?」



ジュリエット

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?ふっざけんなぁぁあぁぁぁぁぁ!!

ゴルァァァァァァァァっ!!」



タイタス

(良いなぁ………ジュリエット……。

僕もあんな風にマクベスに顔を近付けて貰いたいなぁ~……って……ハッ!!??何を僕は想像した!?あ゛ぁ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ーーっ!!

妄想するなぁあぁぁぁぁ!!)



ジュリエット

「ねぇ……マクベス……アタシ、今さっき思った事があるんだけど言っていいかしら?」



マクベス

「奇遇だな、ジュリエット。ワタシも言おうと思っていた所なんだ。」



タイタス

「えっ?えっ?何で2人共そんな冷めたで僕を見るの?

ぼっ、僕、何も言ってないよ???」




ジュリエット

「……多分一番アタシ達の中で隠れムッツリスケベって……」



マクベス

「タイタスなんじゃない??」



ジュリエット

「それなー。」



タイタス

「はぁぁあぁぁぁぁ!?

何で僕が隠れムッツリスケベなんだよ!?」



ジュリエット

「いやぁ……何か見た感じさぁ、ムッツリしてるって言うか……色々と脳内で妄想って……あっ……間違えた、考えてるんじゃないかなぁ~って思って。」



タイタス

「まさかの見た目ぇぇぇぇぇぇぇぇ!?そんな事ある訳ないじゃないかっ!!」


(心を読まれてる!?そんな馬鹿なっ!?僕は顔になんか出してなかったのに!?何でぇぇぇぇ!?)




マクベス

「………安心してよ、タイタス。

私は例えタイタスが隠れムッツリスケベだったとしても、君を嫌ったり避けたり、ましては変態だとかって思ってないから。


(それに……タイタスの可愛くて、意外な一面を知れて嬉しいしね……。



タイタス

「それ全っっ然っっ!!フォローになってなぁぁぁぁいぃぃ!!??

むしろ今変態って言ったよねっ!??!」



ジュリエット

「まぁまぁ、アレよねぇ~どんな妄想したかは聞かないであげる、フフフッ……」



タイタス

「だからそんなんじゃないってばっ!!」



マクベス

「ハハハッ、もうその辺りにしようよ、タイタスで遊ぶのは。

あんまり、からかい過ぎても面白味みが減っちゃうし。」



タイタス

「何サラッとそんな事言ってるんだよ!!

しかも面白がってたのかよ!!

僕は健全で無実だぁあぁぁぁぁぁあっ!!」



ジュリエット

「はいはい、分かったから次調べるわよ。」



タイタス

「……うん……グスン。」



NC②

3人は石像から離れ、黒い大きく豪華で重厚感のある扉へと近付いた。


しかし、扉には幾重にも重なり合った大きな銀色の鎖で周囲は囲われ、厳重な錠前によって閉ざされている。


まるで誰一人、通しはしないと言う強い意志を感じるだろう。

また黒い扉の表面には、赤いペンキに近いモノで勢い良くぶち撒まけたような跡があった。



ジュリエット

「何コレ……?鎖と錠前でガチガチに締められてる……全然動かしたり、外れる様子が無いわね……」



マクベス

「何だろうこの赤いペンキみたいな跡……近付いて見たら、ただのぶちけたあとくらいにしか見えないけど……あっ……コレは……文字だ……」



タイタス

「本当だ……確かに文字だ……遠くからちょっと離れて見て……何々、えぇっと……ぁっ……これ……」




マクベス

「コレは……確か……【地獄の門】の一節いっせつじゃないか?」



ジュリエット

「【地獄の門】?何それ?何か気味が……悪……ぃ……。



マクベス

嗚呼ああ、【地獄の門】は確か昔のある作家が書いた物語だったかな………。

その物語では主人公が古代の詩人と共に【地獄】を巡るってストーリーだったと思うけど……。

……タイタス?ジュリエット?ど、う……し……た……」



NC①

3人は突如として全身の動きがピタリと止まり、喰い入るようにじっと文字を見つめた。


見つめ続けながら3人は各々おのおの、自分の意志とは関係なく、勝手に口が開いていき言葉を発する。

それは、まるで何かが取り憑いたかのようで自分の声なのに自分ではない感覚に支配される。


貴方達は自分の身に起きている事態に対処出来ずに混乱するでしょう。



NC②

君達が困惑し、錯乱し、慌て喚くその姿。

嗚呼ああ、本当に見ていて楽しいですよっ!!!!!!

たのしいっ!!たのしいっ!!

さぁっ!!もっとっ!!もっと!!見せておくれっ!!




タイタス

「……─────我をすぐればうれいの都あり……我をすぐれば永遠とわの苦痛あり……我をすぐれば滅亡の民あり……」


(えっ……!?何で……!?口が……勝手に動く……!?)



マクベス

「……───義はとうとき我が造れり、しゅを動かし、聖なる威力、比類無き知慧ちえ、第一の愛、我を造れり……」


(なっ……!?言葉がっ!?どうしてっ!?止まらない……!?)



ジュリエット

「……───永遠とわのモノののモノとして我より先に造られしは無し……。

しかして我、永遠とわに立つ……」


(ヤダっ!?何っ!?2人共どうしちゃったの!?

アタシ…一体何を……言ってるのっ!?)





???①(NC1兼役)

【─────なんじ此処ここに入る者モノ、一切の望みを捨てよ─────】





ジュリエット

「……えっ……な……何が、起きたの……?

何でアタシ……こんな文字も……初めて見たのに……それに……マクベスが言ってた物語だって……今、さっき……初めて知ったのに……どうして……?!」



マクベス

「……ワタシだって、【地獄の門】って存在自体、ついさっき思い出したんだ……何故なぜだかボンヤリと浮かんで来て……まさか……こんな言葉を言うだなんて………」



ジュリエット

「……アタシ達……もしかして……この門に書かれている言葉……さっき口から出た文章を知っている……?!

だってっ!!まるで元から分かっていた……みたいに喋ってたわよね?!」



マクベス

「まさか……いや……絶対違うとは言い切れない………クソッ!!分からない事だらけじゃないかっ!!

……でも……ジュリエットの言う通り、その可能性はあるのかもしれないね……」



NC②

マクベスとジュリエットは黒い扉に書かれている文字と自分達の口から発した言葉について思考を巡らせながら話をしている中で、ただ一人、未だに全く瞬きもせず、じっとタイタスはマクベスを見つめていた。



タイタス

(……どうして?

どうしてマクベスは僕を見てくれないの?

どうしてマクベスはジュリエットばかり見ているの……?

如何どうして僕を見てくれないの?

どうして?どうして?どうして?

……嗚呼……嫌だ……嫌だ……嫌だぁあぁぁぁぁぁあぁぁっ!!!!

僕を見てよ……僕だけを見て……僕の事、ちゃんと見てよ……何で見てくれないの?

何で?何で?何で?なんで?ナンデ?

嗚呼……マクベス……君が僕を見てくれないなら……)


「こんな身体……いらない……」




NC①

ドロドロと湧き上がるいやしくて、醜くくて、狂おしい、身をがすように熱い想い。


マクベスに向けたタイタスの【恋心】は自身に起きた不可思議な現象が引き起こされた悪意によって歪み始め、狂気に染まり、その感情の渦は心を支配していく。


タイタスは自分の中に生まれた黒々とした言いようの無いぐちゃぐちゃになった想いを吐き出したくて……


ズブリと己の身体の腹部に自分の左手シザーハンズで勢い良く突き入れ、そのままブチブチっ!!ミチミチッ!!グチュリッ!!ブチュリッ!!グシャリッ!!と鈍く嫌な音を立てて、自分のはらわたを潰し、力任せに引き千切ちぎりながらき出した。



ジュリエット

「なっ!?タッ、タイタスッ!?

ちょっ!?アンタッ!?何してんのよ!?」



マクベス

「っ!?タイタス!?何をしてるんだ!?やめろっ!!タイタスっ!!」



タイタス

「……え……?嗚呼ああ……コレ???

アハハッ……おかしいんだよ……マクベス。

変なんだよ……僕、変なんだよ……こんな風に……僕の中身を出したのに……全然痛くないんだ……痛みが無いんだ……どうしてかな?何でかなぁ……?

ねぇ、マクベス……僕、如何どうしたら……君に見て貰えるのかな……?

僕の何が気にいらないの?僕の何が駄目なの?僕の何が悪いの?

……僕、君に見て貰えるならいくらでも壊すから……こんな身体モノ……いくらでも壊すから……だから僕を見て………僕を見て……」




NC②

赤黒くドロドロと流れ、溢れる液体とヌメヌメと怪しくテカった潰され、千切ちぎって引きずり、き出したはらわたの肉片をボタボタと零しながら今にも泣き出しそうな哀願する顔でタイタスはマクベスを見つめた。

その瞳は狂気に蝕まれ、完全に正気を無くしていた。



ジュリエット

「どっ、どうしちゃったのよっ!?

タイタス!?しっかりしなさいよっ!?」



マクベス

(もしや、さっきのでタイタスは気が動転して我を忘れて正気を失っているのか?!)


「しっかりしろよっ!!タイタスっ!!やめるんだっ!!」



タイタス

「ねぇ……マクベス……答えて……答えてよ……教えてよ……どうしたら君に必要とされるの?

僕が必要ないならっ!!マクベスに見て貰えないならっ!!

こんな身体っ!!いらないっ!!!!」



ジュリエット

「やめてっ!!!!タイタスッ!!!!」



NC①

タイタスは再び自身の腹に手を入れて中身をグチュリグチュリと弄って、はらわたに一層、グッと力を込めて握り潰そうとした、その瞬間。


マクベスは自分の衣服や身体が汚れるのも構わず、タイタスを自分の方へと引き寄せ、ぎゅっとその傷付いた身体を抱き締めた。


抱き締めながら片手を背中に手を回し、もう片手でタイタスの髪を撫でるその力は優しく、まるで幼子をあやすようで。


すでに死したその身体には、もうる筈の無いぬくもりで包みながら、とても穏やかな声でマクベスは震えるタイタスに語り掛けた。



タイタス

「ぁっ……ぁっ……マク……ベ……ス………?」



マクベス

「ねぇ……ほら……ワタシ此処ここにいるよ……ゆっくり……深呼吸してごらん……」



タイタス

「………あっ……あぁ……マクベス……マクベス……ぅあ……ぼ……ぼく……」



マクベス

「あのさ……一体、何時いつワタシがタイタスを必要無いっ言ったんだい?

そんな事一言も言って無いし、ワタシはずっとタイタスの事を見てるし、考えてるよ……

さっきワタシ達は目覚めて、出逢ったばかりでさ……互いの事を知らない事だって多い……

でも……それでも……ワタシはタイタスを必要としないなんて事は絶対に無い。

ワタシには君が、タイタスが必要なんだ……だからそんな風には自分を傷付けないで。そんな事をしてるタイタスを私は見たくない……」



タイタス

「ほん……とう……に……?

ほんとうに……本当に……僕を見てくれる……?

僕を必要としてくれる……?

僕はマクベスの傍にいても良いの……?」



マクベス

「何回だって言ってあげるよ……ワタシにはタイタスが必要だ……これからもこの先もずっと、ずっとワタシはタイタスの事を考えて想ってるよ。

タイタスはさっきの変な現象で不安になっちゃったんだよね?

大丈夫、ワタシがいるから……タイタスは私の事、信じられないかい?」



タイタス

「ぁっ……ぼっ……僕は……僕は……僕はっ!!僕をっ、見て、欲しっくてっ……!!

君にっ!!此処ここにいて良いってっ……言ってっ……欲しくてっ!!

ぅっ……ぅわぁぁあぁぁぁあぁっ!!!!」



ジュリエット

「もぅ……ったく……アタシは何を見せつけられてるんだか……ねぇ、タイタス。

此処ここまでしてくるマクベスがいるんだから信じてあげなさいよ。

タイタスの気持ちだって、これで伝わったんだし……」



マクベス

「タイタス……私は君を……────」



NC②

マクベスが抱き締めていた腕を解き、タイタスの頬に手を差し伸ばそうとした、その時────。



部屋中に突如としてパイプオルガンの大きな音が鳴り響き、その大きな音に驚愕する3人は思わず、咄嗟とっさに耳をふさいだ。

しかし、塞いでも鳴り響く音色は君達の思考をむしばみ、犯していく。



ジュリエット

「何っ!?……この音っ……!?気持ち悪いっ……!!」



タイタス

「うぅっ!!嫌だっ!!……何だよっ……!?これっ!?」



マクベス

「……これは………ぐっ!!頭に……直接っ……響いてっ……流れ込んでくるっ……!!」



NC①

部屋中に鳴り響くパイプオルガンの音色の中でマクベスとジュリエットは必死に意識をたもつようにあらがいながら、周りを見渡すと其処そこには今まで見ていたモノとは別の景色が広がっていた。


先程まで美しく幻想的に咲きほこっていた花々は消え去り、見渡す限りの全ての景色は赤、あかあかあかあか、アカ。


赤く、あかく、染まった血の池地獄のような景色が広がっている。



ジュリエット

(この音のせいで上手く思考が働かないっ!!もうっ!!一体何なのよっ!??)



マクベス

(なんだっ!!??さっきまでの情景とは違うっ!!??今まで見ていたのは一体!!??)



NC②

鉄錆てつさびうしおの様な、嫌な匂いが充満する中で大量の青白い誰かの千切ちぎれた腕やあし、眼球や手首やバラバラになった内蔵の一部、かつてヒトの形をしていたであろう部分がぷかぷかといくつも、いくつも、浮かんでいるまるで地獄絵図のような赤い海の中央にただ1人。



【誰か】がいた。



???①(NC①兼用)

「オ目覚めにナらレたのデスね……親愛しんあいなル、ワたクし達の寵愛ちょうあいちの子ラよ……」



NC②

突然、3人以外の人物の声が聞こえた。

3人はその声のぬしへと視線を動かすと其処そこには可憐かれんな1人の少女が微笑ほほえんでいた。


その少女は腰まである長く青い髪にいばらの王冠をかぶり、胸元がV字に開いた黒いコルセット付きのすそが所々にやぶけたロングドレスを身にまとった美しい姿であったが、ただ1つ普通の人間とは異なる部位が付いていた。

それは頭には白い鳥のような翼と、同じく白く長い鳥の尾の尻尾と思わしきモノが生ていた。


少女は両端のドレスを手で軽く持ち上げ、ゆっくりと頭を下げて口を開いた。



???①(NC1兼役)

「嗚呼……此度こたびのオ目覚め……誠に、オ喜び申し上げマス……ワタくし達の【寵愛ちょうあいノ子】らヨ。

愛しき、ワたクし達の始まリを告ゲる、忌(い)まワしキ、愚カな子らよ……」




ジュリエット

「……誰っ……よっ!?アンタっ!?」


(何時いつの間にっ!!??

一体何処どこからあらわれたのコイツ!?!?)



タイタス

「……誰……?」



マクベス

(この子は一体!?それにワタシ達を知っているのか??!!)



???①(NC①兼用)

「ワタくしは【】。

此処ここ、【B.A.B.E.L(バベル)の番人】。

そして、わタたクし達の、愛シい、ムベキ寵愛ちょうあいの子らノ為の

始マりの終わリ……ソう……ワたクシは、貴方達ヲ……ころす者ぉぉぉぉォォオォっ!!」



NC②

うやうやしく頭を上げ、せた瞳を開いた少女の瞳はまるでエメラルドグリーンの様に美しく、妖しく、輝きを放つ。

そしてヴァイオレンタと名乗りを上げた少女の声に合わせたかのように大量のバケモノの群れがゴポゴポと赤い海から音を立てて、き現われた。


赤い海から現われれたバケモノのれはあるじである少女をまるで喝采かっさいするように不気味なうなり声を上げる。


大量の腐った身体のゾンビのれと首だけの赤い粘液をしたたらせる、歪んだ笑みの少女の顔をしたドラッグイーターと赤黒く汚れた軍服にガスマスク姿の銃を構えたソルジャー。

そして2体の機械化された犬の姿をしたハウンド。

そのバケモノ達をひきいる、ヴァイオレンタの瞳は激しい悪意と殺意と狂気を込めた、歪んだ眼差しのまま、顔だけは微笑みを浮かべていた。



それは君達が目覚めて初めて対面する、まぎれも無い【殺意】だ。



ジュリエット

「なっ、何っ!!コイツらっ!?一体何なの??!!

ひぃっ!?ゾッ!?ゾンビッ!?

バッ、バッケッモノッ!!!???」



マクベス

(【B.A.B.E.L.(バベル)の番人】……???

まさか……この【塔】の事を言っているのかっ!??!

だとしたら……この場所にワタシ達を閉じ込めていたのはこの少女なのか……???

まずい……まだタイタスが正気に戻りきっていない状態で戦闘なんて……クソッ!!やるしか無いのかっ!!)


「……ジュリエット……タイタスは私がフォローする……だから武器を構えろ……」



ジュリエット

「えっ!?タイタスがまだおかしくなってるこの状況で戦うって言うの!?

待って!?まだ敵かなんて分からないわよっ!?

きっと相手だって何か誤解してるのよっ!!

だから……話してみれば戦わなくても良いんじゃっ!!」



マクベス

「現実を見ろっ!!ジュリエットっ!!

……感じるだろう……あのバケモノ達から滲み出る殺意を……彼奴あいつらは私達を確実にころそうとする絶対的な意思がある……られる前にらなきゃ此方こっちが危ないんだっ……!!」



タイタス

(……やられる前にやらなきゃ……?

何でまた僕を見てくれないの……?

如何どうして?如何どうして?

………嗚呼ああ……そうか……)


「……コイツらが悪いんだ………。」



ジュリエット

(なん、なのっ……!?何なのっ!?

このバケモノの軍勢!?それにあの娘……アタシ達をころすって……如何どうしてっ?!

……怖い……怖い……怖いっ!!)



NC②

アッハッハッハッッ!!!!

……嗚呼ああ、本当におろかですねぇぇぇぇぇっ!!!


本当にお優しくて可憐かれんで、純粋な【】の君はまだ突然の敵意と悪意と殺意に言い知れない恐怖を感じるでしょう。


狂ったバケモノ共のうめわめく、まるで君達を嘲笑あざわらうようにわらうその声が木霊こだまする中、ジュリエットの恐怖に怯えて震える手にそっとマクベスの手が重なる。

重なるてのひらから伝わる今は無き幻のような、でも確かに感じるぬくもりがジュリエットの心を和らげた。



マクベス

「怖いかい……ジュリエット……」



ジュリエット

「……えぇ……凄く……怖いわ……あのバケモノとあの娘が怖くて、怖くてたまらない……彼奴あいつらアタシ達をころすって……如何どうしてなの……?!

アタシ……アタシ…アタシッ、如何どうしたっ?!」




マクベス

「……大丈夫だよ、ジュリエット、落ち着いてワタシの話を聞くんだ。

アレがワタシ達に悪意と敵意と殺意を向けるなら立ち向かえば良い、あらがえば良いんだよ……。

怖くても、怖くても目をそらさないで。」




ジュリエット

「……マクベスは怖くないの……?

あんなバケモノ達と戦って……本気で勝てると思うの?」




マクベス

「もちろん……ワタシだって怖いよ……

でも、勝てるって気がするんだ……だって私は1人じゃない。

ワタシには君とタイタスがいるじゃないか。

ワタシとタイタスが前線で戦ってる間、君は奥の敵を狙える。

ワタシ達が危なくなれば、後ろにいる君が私とタイタスを守ってくれる……それだけでどんなに心強いかワタシは知ってる。

君がワタシ達を守ってくれるとは信じているんだ。

だからジュリエットもワタシ達を信じてくれないかな?」



ジュリエット

「……まだ怖い……けど、2人がいてくれるって分かったら何か安心しちゃったわ。

ありがとう、マクベス。もう、大丈夫よ。」




NC①

そう言うと2人の重なり合ったてのひらをぎゅっと強く握り返したジュリエットは覚悟と決意がこもった眼差しで前方のバケモノ達をキッとにらんで、己の背に背負っていた銃を構える為に2人の後方に下がった。



ジュリエット

「奥の敵はアタシに任せてっ!!

マクベスはタイタスをフォローしながら前衛の敵の撃破をお願いっ!!でも無理はしないでっ!!

さぁて、ちゃっちゃと倒すわよっ!!」



マクベス

嗚呼ああっ!!こっちはワタシ達に任せてくれっ!!

フフフッ……でも、奥の敵の分はワタシにも出番を残しておいてくれよ……それにワタシはちょっと怒ってるんだよ……ヴァイオレンタとかって言ったな……お前、ころころすと……ワタシの大切なモノをころすと……その言葉…そっくりそのままお前に返してやるっっっ!!」




タイタス

「……はぁ……折角マクベスが僕を見てくれていたのに……お前達のせいで……お前達のせいで……お前達さえいなければまたマクベスは僕を見てくれる……上手くお前達をころす事が出来たらマクベスは今度こそ……僕を見てくれるんだからっ!!」



ジュリエット

「ちょっとぉ!?やっぱりまだタイタスの様子がおかしいんですけどぉぉぉぉっ!?」



マクベス

「アハハハハッ、でも良いんじゃない?

る気バッチリみたいなんだからさ。」



ジュリエット

「笑い事じゃないわよっ!!困るのはマクベスなんだからねっ!!

んもぉぉぉぉぉーーっ!!なりふり構ってられないわねっ!!

ちゃぁんと元に戻してよねっ!!

さぁ……来なさいっ!!このバケモノ共っ!!」



NC②

3人は各々おのおのおの武器を手にしながら迫り来る敵をにらみ付ける。


ジュリエットは自分が背負っていた長物の銃口がいくつも連結した巨大なアンデッドガンをヴァイオレンタのる場所へと向けた。


ジュリエットの前に歩み出たマクベスは腰に下げていたさやから長物の日本刀を引き抜き、グッと両手でを握り締めながら構えて敵のひしめく前線へと歩みを進め、タイタスもマクベスの隣に立ち、背中に背負っていた鉛色のスコップを手に持って敵の方へと向け、銀色に輝く鋭利えいりな爪が付いた義手であるシザーハンズを構えてマクベスと同じく敵と対峙する。




ヴァイオレンタ(NC①兼用)

「あぁあぁぁぁぁぁあぁぁぁあっ!!

ワたくシ達のぉぉぉぉイとシキぃぃぃぃ

ちょぉぉぉぉぉ愛ぃぃぃぃノぉ子らヨォオォぉぉっ!!

さぁっ!!さぁっ!!さぁっ!!さぁっ!!

ころし愛ましょうぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!

ウフフフフッ……アヒゃひャひゃヒャひゃヒゃッ!!!!!」







NC②

──────君達はこんな所で【脱落ゲームオーバー】する訳にはいかないんですよ。




NC①

貴方達が【舞台ステージ】を降りる事は決してゆるさない。




NC②

さぁっ!!さぁっ!!

御樂おたのしみは此処ここからっ!!

序幕スタート】の幕が上がるっ!!

気高く、美しく、可憐かれんで醜く、あわれで強くてはかないっ!!

そのとうとき、おろかな悪意と敵意と殺意の【演目ショー】を舞まってご覧なさいっっっ!!!!

そんな壊れたけがらわしいモノとワタシ達の愛憎いとしいっ!!愛憎いとしい【ドール】の君達とは出来の違いを見せつけておくれっ!!




NC①

貴方達があらがう姿こそがワタシ達の最高の【慰み《イケニエ》】なのだから……。






NC②

よん話 【狂気とアイ】




~終演~




──to be continued(トゥ ビィ コンティニュード)…………───

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