第餐話 【ワタシを飲ンデ】

✝配役表一覧✝

●PC1 タイタス→男性

●PC2 マクベス→男性

●PC3 ジュリエット→女性

●NC1(ナレーション)→女性

●NC2(ナレーション)→男性(???①&???②兼役)


✝男女比率✝

男3・女性2(5人台本)


✝ジャンル✝

SF・ダークファンタジー【R-15G】

(※同性愛表現・残酷描写・鬱展開有)


✝所要時間✝

約40分


────────────────────────






NC①

──────【箱庭セカイ】をつづる【物語ストーリー】は静かにページめくる。



描かれるのは2人の少年と1人の少女の厳粛げんしゅく滑稽こっけいなお話……。



アナタは知っていますか?



の【物語ストーリー】が不条理に塗みれている事に……────────






NC②

永い後日談のネクロニカリプレイ風 声劇




『The Fake World of the End(ザ フェイクワールド オブ ジ エンド)』




第壱章『Columbine(コランバイン)~オワリのハジマリ~』


第餐さん話 【ワタシを飲ンデ】





NC①

見知らぬ場所で目覚めた貴方達3人は終わりの見えない深い闇が支配する螺旋階段を降りて行く。

途中で見つけた部屋で自分達の 【たからもの】と【記憶のカケラ】を手に入れながら進んで行く。

最初の入口なんて遥か彼方かなたで、もう見る事すら出来ない程遠ざかっている。

所々にある蝋燭ろうそくの明かりが妖しく揺れ、進めば進む程、深い深い闇が拡がる。

どれだけ歩いても先の見えない不安の中、無慈悲に鳴り響くオルゴールの音色と

足音は3人の自我を少しずつ侵食し、むしばんで行く。

そして何時間、経ったか分からない程、時が流れた。

貴方達は次第にこの螺旋階段がある建物が【塔】のようなモノだと理解し始める。



タイタス

「2人共、気付いてる?僕らのいる建物……どうやら【塔】の中に居いるみたいだね……」



マクベス

嗚呼ああ、しかもこの【塔】……

相当、高く造られてるね、最初の入口だった所なんて、もう全然見えないし。」



ジュリエット

「もう歩きたくなあぁあぁぁいぃぃぃ!!

一体何処どこまであるのよ、この階段!!

そろそろ出口が見えて来てもおかしくないでしょう?!」



タイタス

「オルゴールの音の大きさからしたら、あと少しで出口に着くと思うからもうちょっとの辛抱だよ。」



ジュリエット

「う゛ーーーーっ!!分かったわよーー!!行けば良いんでしょ?!行けばっ!!」



マクベス

「……おっと噂をすれば……皆、安心しなよ。ほら、出口が見えて来た。」



NC②

螺旋階段の先を見ると一際ひときわ蝋燭ロウソクの明かりにともされた、他の部屋の扉とは異なった大きさの白い扉があるのが分かる。

3人は外へ出られると期待して階段を駆け降りて扉に近付づくと、白い重厚な大きな扉が目の前に現われた。

扉には施錠せじょう箇所かしょは見えない。



ジュリエット

「この扉の先が外に繋がってるのかしらっ!?なんだかワクワクして来たっ!!!」



マクベス

「結構大きいんだな、この扉。見た感じは鍵は無いみたいだけど。」



タイタス

「これって多分だけど1人じゃ開ないんじゃないかな?

そうだっ!!3人で一緒に押してみるって言うのはどう?」



ジュリエット

「良いわよ、マクベスもやるでしょ?」

 


マクベス

「うん、勿論。私も手伝うよ。」



タイタス

「じゃあ行くよ……ぃいよぉぉぉいっしょぉぉぉおぉぉっ!!」



マクベス

「ぐッ、うおおぉぉおぉおぉぉぉおっ!!」



ジュリエット

「ふぬぬぬぬぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!」



NC①

3人は扉に両手を押し当て、力を込めて扉を開いて行く。

ギィィィっと音を立てながら扉は徐々に開き出すと、すると扉の隙間から小さく光が差し込む。

3人はグっと更に力を入れて扉を押すとバーンっと音を立てて扉が開いた。

その瞬間、眩しい光の洪水が貴方達に襲ってきた。

扉の先から放たれる真っ白な光が3人の瞳に入ってくる。



タイタス

「なっ!?!?何だっ!?!?」



マクベス

「これはっ!?!?」



ジュリエット

「えっ!?!?何コレ!?!?」




NC②

真っ白な光の洪水の中で3人は別々の異なるモノを見てしまう。

それは遠い遠い過去の一部。

夢と呼べる程の優しいモノではありません。

それは3人の自我と心に直接語り掛け、自分達の過去の遺物が洪水の様に流れ込んで忘れていた新たな【記憶のカケラ】を見せるでしょう。



さて、君達は一体何を見たのでしょうね?




教えていただけますかな?






NC①

────マクベス 記憶のカケラ【雨の中】────



降りしきる雨の中に貴方はいる。

視界は雨でかすみが掛かったように見えない。

ザアザアと大粒の雨が貴方の顔を身体を濡す。

着ている服は冷たく、ぐっしょりと濡れ、重い鎧のように伸し掛かる。


貴方はうつろな瞳で視界を見渡すと赤く染った【誰かの身体】が倒れていた。

周りの水溜まりに赤い液体がジワジワと混じり、周囲を赤く染め、身体が次第に氷のように冷たくなっていくのが分かる。


貴方は降りしきる雨音に混じって誰かの声を耳にする。

その誰かは何かをしきりに、何度も何度も叫んでいる。

けれど何を言っているのか、聞こうとするが雨音でき消されて何も聞こえない。

聞こえるのは自分を責めるような雨音。



マクベス

「あ……ぁ……どう、し……て……?」



???①(NC②兼用)

「はぁぁ???如何どうして、だとぉぉ??

そんなの決まってるじゃないか。

……全部お前が悪いんだよ。

まぁ、でも……君のような惜しい人材を失うのは痛い損失だが……仕方あるまい。

やむを得えないが処理するしかない。

……嗚呼、安心したまえ。

お前の変わりに【この子】が【アレ】を引き継ついでくれる。」



マクベス

「やめて……くれ……その……ひとに……これ……いっ……じょ……を……」



???①(NC②兼用)

「さぁ……喜びたまえ、我々のいしづえとなる事を。

我々の探求を邪魔した者に下される罰に感謝したまえ……フフフッ……さらばだ……この裏切者ゴミが……」




マクベス

(────────誰かがワタシを見ている。

悲哀カナシミ憤怒イカリと絶望を抱いた瞳で誰かが私に何かをしきりに叫んでいる。


けれどもう、聞く事も尋ねる事も出来ない。

雨音が遠く聞こえる。


意識が次第に薄らぎ、身体の力が抜けていく。

そして私は酷く、悲哀カナシミを抱きながら消えていく。


嗚呼ああ………私は【アイツ】との約束も果たせず、【あの人】に何も言えずに何も出来ないまま……意識を無くした……)






NC②

───ジュリエットの記憶のカケラ【バラバラ】のシーン────



君はぼんやりと薄く瞳を開く。

熱くゴォゴォと音を立てて燃え盛かる炎。

ヒビ割れたガラスの破片が散らばり、壊れ崩れた壁とバチバチと切れた電線の音と幾つもの瓦礫がれきの山がそびえ立ち、辺り一面を真っ赤に染そめる血の海。

周りに目をやれば、見知らぬ人間の屍が転がっている。

ある者は頭が潰ぶれ、ある者は首だけが瓦礫がれきにぶら下がり、ある者は炎で焼けただれ、 皮膚がドロリと溶けた姿で無数の散らばる死体が重なり合うように転がっている。

潰れ、千切ちぎれ、破裂した肉片と焦げた生き物が焼けた嫌な匂いが立ち込める。


一体何が起きたか君には分からない。

君は激しい痛みの中で腕を伸ばす。

震える赤く染そまった腕を必死に伸ばす。




ジュリエット

「あ……だ……め……これ……だけ、は……」




NC②

遠くで【誰か】の声が、笑い声が聞こえる。

君にはその声の正体を知る事は出来ない。



【誰か】はわらう。

わらう、わらい続ける。



そして君はその声を聴きながら手を伸ばす。



その先に見えるのは君の手。

君の大事な大事な、大切な手。



君は君の左手を見つめるとキラリと光るモノが瞳に写った。

しかし手を伸ばしても届かない。

真っ赤な血の泉に浮かぶ君の左手は遠く。



そう。



千切れた君の左手が遠く転がっている。






ジュリエット

「わ……た……し……の……左……手……」




NC②

這いずろうとも力が入らない。

身体が動かない、意識が遠のいていく。

また、君はわらい声を耳にする。

まるでウレシそうに、カナシそうにわらう声を。




ジュリエット

(────誰かのわらい声が聞こえる。


でもそれが一体誰の声か分からない。


きっと知っていたのにもう何も分からない。


もう何も出来ない。もう何も動けない。


意識が消えていく。

まぶたが重くなっていく。


必死に左手に伸ばした右手がボトリと落ちた。


嗚呼ああ……アタシの足も腕も手も感覚がない。

だってアタシの身体はもう、バラバラになったのだから……)




NC①

────タイタス 記憶のカケラ【葬儀】─────



貴方はガラス張りの壁から先を見つめている。

その先にはある人物が真っ白な豪華なベッドの上で胸に手を組まれて眠っていた。


もう決して開かないまぶたともう何も写さない瞳。

そしてもう二度と言葉をつむがない、閉ざされたくちびる


まるで美しい眠り姫のように沢山の花に囲まれて眠るヒト。


綺麗な装飾と衣装に身にまとったその人物には幾つものチューブとコードが繋がっている。

そして数人の人々によってベッドごと何処どこかへと運ばれ始めた。

貴方はガラス越しにその光景を見つめる事しか出来ない。

運ばれて行く姿に貴方は耐え切れず、ガラス張りの壁に近付き、ドンドンっ!!と大きく何度も何度も叩く。

激しく何度も何度も拳を壁に叩き付ける。




タイタス

「嫌だっ!!嫌だっ!!嫌だっ!!

やめろっ!!やめろっ!!やめてくれっ!!

【その子】を連れて行かないでくれっ!!

駄目だっ!!駄目だっ!!駄目だっ!!

やめろぉぉぉおぉぉぉぉぉおぉっ!!!!」



???②(NC②兼用)

「……諦きらめろ……もう【あの子】はこうするしかないんだ。

君だって……それは望んだ事だろう?

今更……手遅れなんだ……我々に出来る事はもう【コレ】しかない……こうするしか方法は無い……仕方しかたがないんだ……」



タイタス

「……そんな……クソッ!!クソッ!!クソッ!!

畜生っ!!畜生っ!!ちくしょうぉぉぉおぉおぉぉっ!!!!

グッ、ゥグッ、う"わ"ぁ"ぁ"あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"っ!!!!」



???②(NC②兼用)

「……その痛みを忘れるな……

その痛みは君が選んだ、君が選択した【】なのだから……」





タイタス

(───僕は必死に何度も何度も壁を叩く。



何度も、何度も、何度も僕は叫ぶ。

何度も、何度も、何度も手を伸ばしてくう藻掻もがきながら。



何度も、何度も、何度も、何度も僕は【】の名前を叫び続ける。



声が枯かれても、叩き付け続けるその両手がボロボロになっても。



でも………………気付いたんだ……………。



】をこうしてしまったのは自分だと言う事に。



そう。



もう、僕の手は血と【】に塗れているのだから……………………。)







NC②

真っ白な光の中で見たモノは君達の自我を犯し、懐かしさと大きな恐怖を感じるだろう。


忘れていた、失われていた【】。


思い出したくて、思い出したくなかった記憶。

君達にとっては記憶とは自身とそれに関わる事を知る為にとても大切なモノ。



でも………これで理解しましたかな…………?



君達の記憶が優しくない事に。

】は何時いつだって残酷だと言う事実に。



マクベス

「……………今のは……………………?

………あれは………………一体誰だ………?」



ジュリエット

「アタシ………アタシの………腕が……アタシの手が………左………手が………。」



タイタス

「僕は……………何を…………どう、して………」




NC①

3人はうわ言のように呟やくと互いに顔を見つめあった。

互いの青ざめた顔を見ると、自分以外の人物の存在を認知してその姿を瞳に写すと、ゆっくりと時間を掛けて3人は正気を取り戻していく。

しかし不安なかげりだけはぬぐえず、気まずい空気が流れた。



マクベス

「…………皆…………その……もしかして何か見たのかい………?」



ジュリエット

「…………うん…………凄く懐かしくて………でも恐ろしい…………………。

そんなアタシの過去を見たわ…………。」



タイタス

「う、うん………僕も…………見たよ……………。」



ジュリエット

「…………そっか…………じゃあ……………皆、同じモノを見たのかしら……?」



マクベス

「いや、ワタシが見たモノと2人が見たモノは違うと思う………………。

さっきの光は多分記憶を強制的に思い出すようなモノだった…………。

だから皆、別々の記憶を見たんだよ。」



タイタス

「なるほど…………。」


(じゃあさっき見たあれは僕の記憶…………。

あの記憶の中にいた【】と【】は一体誰なんだろう…………?

それに如何どうして僕はあんなに必死になっていたんだろう……………。

分からない………………。)」




ジュリエット

「っ…………あ"ーーーーっ!

記憶が蘇るってのも困りものよねっ!!いきなりなんだもん!!」


(あの記憶の中でアタシは…………バラバラになってた…………?

如何どうして?それにあのわらい声…………。

一体誰なのかしら……………………?)




マクベス

「確かにね、ワタシもいきなりでビックリしたよ、せめて心の準備くらいしたいよ。


(………記憶の中のあの人物は誰なんだ?知っているような………。

でも誰だか分からない………。そして僕は雨の中で………。

】って、【】って言っていた……。

最初の記憶に関係しているのか?……クソっ、分からない事だらけじゃないか。

とにかく落ち着かなきゃ………。)



タイタス

「そうだね…………。あっ!?2人共怪我はない!?」



ジュリエット

「本当にタイタスってば心配性なんだから。

ほら、アタシもマクベスも全然傷一つ付いて無いわよ」



マクベス

「アハハハッ。タイタスってなんか心配性なお母さんみたいだよね。

フフフッ、大丈夫だよ。

でも心配してくれてありがとう、タイタス。」



タイタス

「えっ!?あっ………ぼっ、僕男なんだけどなんでお母さん??

…………ぅん、えっと、どういたしまして……。」


(うわぁぁぁぁあ!!??顔が近い近い近い!!!!)



マクベス

(フフフッ……顔赤くしちゃって可愛いなぁ、やっぱり………)


「じゃあ何時いつまでも扉の前にいる訳にはいかないし先に進もうか。」




ジュリエット

(うわぁぁ…マクベスって確信犯よねぇ。

それにタイタスってば、耳まで赤くしてる感じが伝わってくる。

って事はやっぱりタイタスはマクベスの事が好きなんじゃない!!

………デュフフッ……だっ駄目よっ!!アタシっ!!笑っちゃっ!!)


「そ、そうねっ!!何が出て来てもアタシが2人を守るっ!!

さぁ来いっ!!アタシが相手になってやるっ!!」




NC②

3人はしばしの談笑によって気持ちを落ち着かせ、なごやかになると開かれた扉の先に足を進めて辺りを見渡した。

オルゴールの音は何時いつの間にか止まっていて、その部屋の中はまるで教会の大聖堂のような造りをしていた。

石造りの壁に囲われた、ドーム状の大きな屋根のある広い部屋には天高い位置にステンドガラスの天井と薄暗い部屋で金の燭台にある黒い蝋燭ロウソクの炎によって明かりがボンヤリと灯されている。

更に部屋の中へと歩みを進めれば、地面には沢山の花が咲き乱れ、部屋の中央には清潔感が漂よう白いテーブルとその上に赤い液体が入ったグラスが3つあった。



タイタス

「この花、さっき僕達がいた箱の中にあったモノと同じ花だっ!!」



ジュリエット

「本当だ………しかも沢山咲いてる………。

何だか幻想的でとっても綺麗…………。」



マクベス

「ん……???…この花……良く見たら全部【】だ。

遠くからじゃ本物と区別が付かないけど、 相当に手が込んだ偽物フェイクだ。」



ジュリエット

「じゃあこの花から香る匂いも造りモノって事っ!?!?

】にしては、上手く出来過ぎじゃない?

………まるで生きてるみたいに見えるし……。」



タイタス

「これだけ精巧せいこうな【】は初めて見たよ。

……って事はあの箱の花は元々は此処ここに咲いていたモノが入っていたって言う事だね。」



ジュリエット

「誰かがわざわざこんな御立派な【】を作って摘んで入れたって事?

一体誰がそんな事を……………?」



タイタス

「あっ!!見てよっ!!何かあるよっ!!」



マクベス

「なっ!?!?…………これは…………ワタシ達が入っていたのと同じ箱じゃないか………!?」



NC①

ひっそりと花々に守られるかの様に静かに鎮座しているその【】は君達が眠っていたモノと同じ分厚いガラスで出来たモノであった。

3人は近付き【】を良く観察する。

半透明で箱の表面には一際、大量のほこりが溜まり、刻まれているであろう文字はかすれ、読み取る事さえ出来ない。

】の外側の側面から中を見ようとするが中に敷き詰められた沢山の花々が邪魔をして中を見る事は出来なかった。

3人は目をこらしてわずかに花と花の間から中にいる【】の手が見えた。



タイタス

「中に誰かいるみたいだけど……花が邪魔して良く見えないや。」



ジュリエット

「うーーーん…………起こしてあげた方が良いのかしら?」



マクベス

「そうだね………もしかしたらワタシ達と同じかも知れないし、何か知ってるかもしれない。」



NC②

最初にタイタスが蓋に手を掛け、開こうとするが、どんなに力強く押しても引いても蓋はうんともすんとも言わず、ぴっちりと閉しまっていた。

タイタスは何度も何度も必死に力強く開けようとするが【】の蓋は固く閉ざしている。



タイタス

「ぐぉぉおぉおぉぉぉおおぉっ!!よっっっいっっせぇぇぇぇぇぇぇ!!!!

っあ゛ぁ゛あ゛!!………駄目だぁあぁぁ、全然開かないや……。」



マクベス

「お疲れ様、タイタス。

じゃあ次はワタシがやってみるよ。

………いっせぇぇぇのぉぉおぉぉおぉぉ!!」



タイタス

「頑張れっ!!マクベスッ!!」



ジュリエット

「根性出しなさいよっ!!ホラッ!!もうちょっとっ!!」



マクベス

「ふぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎっ!!う゛う゛ぅ゛う゛っ!!

しょお゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛っ!!

………だっ、駄目だぁぁあぁぁぁぁぁっ!!

全っっっ然っっっ開かないよ………。」



ジュリエット

「えーー!?ちょっと2人共全然力が無いんじゃないのぉ?

駄目ねぇ、ったくぅ。アタシに任せなさいっ!!

見てなさいっ!!こんなのアタシに掛かればっ!!

どおぉおぉぉぉりゃぁあぁぁぁぁぁっ!!」



タイタス

「おおっ!!??これはもしかしてもしかすると開くんじゃないか?!」




マクベス

此処ここに来る前にもそのちっちゃな身体には似合わない馬鹿力で開けたんだから今度もイケるんじゃない?」




ジュリエット

「ちょっとぉぉぉっ!!誰が馬鹿力ですってぇぇぇぇ!?

マクベスゥゥゥゥゥゥッ!!あとで憶えてなさいよぉぉぉぉぉぉっ!!

んもぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!

開あかないんですけどぉおぉぉおおぉっ!!」




NC①

マクベスとジュリエットもタイタスと同じように【】の蓋を手にし、精一杯、力を掛けながら蓋を開こうとするがまるで蓋は貝の口のように隙間なく、ピッタリと磁石で重なっているように閉じられている。

ギチギチと不快な音が鳴るだけで全く開く気配が無かった。

まるで見えない鎖で縛られ、鍵で閉められているかのように。



ジュリエット

「はぁっ……はぁっ……はぁっ…………。

あ゛ぁ゛あ゛ぁ゛あ゛ーーっ!!

もぅっ!!全っっっ然っっっ!!開かないじゃんっ!!

もぅコレは後回しっ!!次行きましょうっ!!次っ!!」



マクベス

「うーーん、2人でも開かないならもうどうしようも無いなぁ…………。

コレは諦らめて次に行こうか。」



タイタス

「そうだね……また後でチャレンジしてみよう。

もしかしたら次には開くかもしれないし。」


(何かおかしい…………。

僕達が入っていたあの【】は力を入れたら直ぐに開いたのに、これはまるで開かれるのを拒絶しているみたいだ…………。)」



ジュリエット

「フッフッフッ……………マクベス……………。

アタシに何か言う事あるんじゃなぁぁい?」



マクベス

「…………………………あっ」



ジュリエット

「誰が馬鹿力……………だってぇ……………???」



マクベス

「えっ………とぉ………それはぁ………ねぇ、タイタス。」



タイタス

「えぇっ!?ぁっぼっ僕ぅ!?何で僕に!?………ぁ、いや……………。

僕に振られても……。」



ジュリエット

「………言いたい事はそれだけかしら?」



マクベス

(うわぁ……めっちゃ満面の笑顔だけど目が笑ってない……)


「あの…………その………ご、ゴメンナサイ?」



ジュリエット

「ゴメンナサイ?……じゃないわよっ!!

ごめんなさいよっ!!何で過去形にしてんのよっ!!現在進行形よっ!!

今度馬鹿力なんて言ったら眉間に風穴を付けてあげるから覚悟しなさいっ!!」



マクベス

「…………ぅ、うん………わっ、分かったよ……。

もう言わないからその手に持ってワタシの眉間に押し当ててる銃を下げてくれないかな?」



タイタス

「あわわわわっ!!

…………ジュ、ジュリエットぉ……もう、謝ってるんだし………マクベスを許してあげて………ね………?」


(超ぉ怖ぁっ!!こっ、今度からジュリエットを怒らせちゃ駄目だっ!!)



ジュリエット

「………………………分かったわよ。けどこれにりたら気を付けてよね。」



マクベス

「……………はい。」



タイタス

「…………えーーっと…………っ、次はコレかな?!

ホラッ、テーブルの所に何かあるよ?!」



NC②

そう言ったタイタスが指差した方には部屋の中央に置かれた白い清潔感がする丸い円錐状の形をしたテーブルだった。

テーブルの上にはこの場所の装飾とは一見すると場違いなシャンパングラスが3つあり、全てに均等の量に入っている赤い液体が注がれていた。

シャンパングラスの前には白いメッセージカードが置かれていて、テーブルにはホコリが1つも付いておらず、グラスを手に取るとほのかに冷たいと言う感じがするだろう。

メッセージカードには一言。

Drink me 】と書かれていた。



ジュリエット

「真っ赤な飲み物…………かしら?しかもアタシ達の人数分が用意されてる。」




タイタス

「それにこのテーブルもあの手紙が置いてあったのと同じでほこりが全然無いし、綺麗にされてあるね。」



マクベス

「【Drink me 】……………ねぇ…………。

飲まなきゃ駄目って事かな?」



タイタス

「でも毒が入ってるかもしれないよ、迂闊うかつに飲まない方が良いんじゃないかな?

罠かもしれないし………。」



マクベス

「けど罠だったとしても、もしかしたらこの飲み物を用意した誰かに会えるかもしれないよ?

確かにタイタスの言う通り毒って可能性もあるけど、ワタシ達1度死んでるんだから毒が効くか分からないよ?」



タイタス

「それは……言われてみればそうだけど……」



ジュリエット

「まぁまぁ。そんなに不安にならないでよ、タイタス。

3つもあるんだし、3人で一緒にせーので飲んじゃったら分かるんじゃない?」



タイタス

「うーーん……でもなぁ……。」



ジュリエット

「何か異常が出たらスグに報告する事!!

タイタス、それなら文句ないでしょ?

もしアンタが毒を飲んでもアタシ達がなんとかするから心配しなくても大丈夫よっ!!」



タイタス

「……分かった、2人を信じるよ。」



マクベス

「それじゃあ皆グラスを持って。ワタシは一番左のグラスを飲むよ。」



タイタス

「じゃあ僕は真ん中にするよ……………何かドキドキするね……。」



ジュリエット

「アタシは右のにするわ。覚悟決めなさい、タイタス。

行くわよ… いっせぇっのっっせ !! 」



NC①

タイタスは恐る恐ると、手を震わせながらグラスを持ち、瞳をぎゅっと力強くつむってグラスの中の赤い液体を一口だけ口の中へ流し込み、マクベスとジュリエットは何事も無いように手慣れたり素振りでグラスを持つとスッと赤い液体を口の中へ入れた。



…………一瞬の少し間を空あけて、時が経たつ。



数秒後、ジュリエットは苦虫を潰したかのような顔をして、眉間にしわを寄せて赤い液体を口から勢い良く吐き出した。



ジュリエット

「ブゥゥゥゥゥゥゥーーっ!!!!ゥオエェェッ!! なぁにぃこれぇぇぇぇっ!?

ペっ!! ぺっ!!まぁぁぁずっっっ!!

ぁあんまぁああっ!!やだっ!!気持ち悪っ!!最っっっ悪っ!!」




タイタス

「ちょっ 、ジュリエットっ!!汚いってっ!!服が汚れちゃうからっ!!

うわぁっ!!こっち飛ばさないでっ!!」



マクベス

「何?大丈夫???ジュリエット、そんなにマズいの?」



ジュリエット

「まぁぁぁずぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!

不味いっ!!不味いっ!!不味いっ!!まぁぁぁあぁあずぅぅぅぅいぃぃぃっ!!

もうっ!!何なのっ!?このジャムにコンデンスミルクとか生クリームとか

シロップとか、ありとあらゆる甘いもモノをぶち込んで煮詰めたみたいな甘い味っ!!

本っっっ当に最っっっ悪な味っっっ!!

うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!まだ口ん中に残ってるぅぅぅぅぅぅぅ!!」




マクベス

(えっ!?………【】………だとっ………!?)


「……………………ふむ………。

ねぇ…………ジュリエット。ちょっと試しにって言うか、口直しとしてワタシとタイタスが飲んだやつも飲んで貰えないかな?」



ジュリエット

「はぁっ…はぁっ…はぁっ……………。

………えぇっ?マクベスとタイタスのを?」



マクベス

「うん…………ちょっと確かめたくてね………。頼めないかな?」



タイタス

「………僕も丁度ジュリエットにお願い出来ないかなって思ってたんだ。

駄目かな?」


(ジュリエットは今さっき………【】って言ったよね……。

もしかしたら……僕とマクベスと考えてる事が同じなのかも………。)



ジュリエット

「んん???別にアタシは良いけど………。

でもさぁ、アタシがマクベスのグラスに口付けて飲むって事は間接キスする事に

なっちゃうんだけど………それでも良いの、タイタス?」



タイタス

「えっ!?………かっ、かかっ、かかかっ、間接…キスゥゥゥゥゥゥ!?」



マクベス

「えっ???それだったらタイタスもジュリエットと間接キスする事になるけど……って何で固まってるのタイタス???

何か問題なのかい???」



タイタス

「あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛あ゛ぁ゛~っ!?

…………そっ、そのっ、だっ、大丈夫っ!!

うんっ!!大丈夫っ!!僕は気にしないからっ!!

ってか今はそんな事で言い合ってる場合じゃないんだし!!だから問題ないよっ!!」


(マクベスと間接キスとかっ…………う、う、うらやましいぃぃぃぃっ!!

良いなぁ良いなぁ!!僕もマクベスと間接キスって………ヲイィィィィィィィっ!!

馬鹿っ!!ばかっ!!バカっ!!何を考えてるんだっ!!!!

余計な事は考えるなっ!!僕ぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!)




マクベス

「あっ、さっき飲んだ飲み口を拭いた上で飲み口を変えれば良いんじゃないか?

そしたら間接キスなんて気にしなくても済すむし。」



タイタス

「ハッ!!??その手があったか!!

流石マクベスっ!!凄いねっ!!」



ジュリエット

「………もしかしてタイタスって馬鹿って言うか、アホの子って言うか………。

うん…………天然なんじゃない?」



マクベス

「いや………多分全部じゃない??

さぁ、そんな天然ちゃんは置いといて飲んで貰っても良いかな?」


(まぁ、そんなタイタスがすっごくイイんだけどね………フフフッ……)



タイタス

「えっ……………?」


(あれ?何か僕ディスられてる???)



NC②

ジュリエットは、2人から手渡されたグラスの口を指で軽く拭き取るとまずはマクベスのグラスを手に持ち、グラスを傾けて一口ゴクリと音を立て、赤い液体を口の中へ流し入れる。

するとジュリエットは首を右に傾けて眉間にしわを寄せ考え込んだ。



ジュリエット

「うーん……さっきよりは全然飲みやすいけど何だろう………この味ぃぃ??

】し【】し、でもなんかちょっと【】……変な味ね………。」



マクベス

「……【】と【】…………ね……………。」



タイタス

「……じゃあ次はこっちを飲んでみて。」



NC①

次にジュリエットは、タイタスのグラスを手に持って再び飲み口を拭き、同じ要領で一口またゴクリと音を立てて赤い液体を口の中に流し込んだ。

すると今度はジュリエットの瞳がキラキラと輝き出す。

今までのは一口だけ飲んでいたが、ゴキュゴキュと喉のどを鳴らして一気に飲み干した。




ジュリエット

「ンッ ンッ ンッ………プファァァァァァァァァッ!!!!

何コレ超美味おいしいっ!!凄っく【から】て私好みの味じゃないっ!!

良いなあぁぁぁぁぁぁぁ~私も最初からこっちのにすれば良かったぁ。」




タイタス

「えっ今度は【から】のっ!?コレっ!?」



マクベス

「最初は【甘味あまみ】………次に【》】と【】で今は【】か……………。」



ジュリエット

「うん。めっちゃ美味しいけど……って、タイタス、アンタ良くコレ飲めたわね。

アンタじゃ絶対耐えられない位の【から】よ?

…………もしかしてアンタ………変なやせ我慢してるんじゃないでしょうね??」



タイタス

「いや………そうじゃなくて………。

そのっ、ほっ、本当にジュリエットは【から】って感じるの………………?」



ジュリエット

「だからぁ、本当に【から】んだってばっ!!疑わないでよねっ!!」



タイタス

「いやっ、ジュリエットの事を疑ってる訳じゃ無いんだ……

だけどっ、そのっ、ただ……」



マクベス

「……そうか……そう言う事か……やっと理解出来た

……全く何だよコレは……」




ジュリエット

「えっ???ちょっ、何???ど、如何どうしたのよ2人共???

何かアタシ変な事言った???」




マクベス

「ジュリエット……私達はさっきまであの箱の中にいたよね……」



ジュリエット

「ええ、そうよ。暗いわ凄くせまいわで、しかも蓋は開なくてめっちゃ大変だったわよ。」



タイタス

「僕達には記憶も無いし、ジュリエットは僕やマクベスの事も自分の事も知らない。

そして僕達は気付いてしまったよね……?」



ジュリエット

「えっ、そうだけど……気付いたって……アタシ達が全員死んでるって事でしょう?

って……そんなの……あ、あれ………?」



マクベス

「……ジュリエット。

君はさっき、ワタシ達が飲んだあの液体の色々な味について感想を言ってたよね……」



ジュリエット

「えっ、ちょっ、ちょっとっ!!

まっ、待って……そんな……まさか……」



タイタス

「おかしいと思ったんだ……

僕達は【】から【本来在】が消えていても不思議じゃないんだ……」



ジュリエット

「つまり……それって……」



マクベス

「……嗚呼ああ……

ワタシとタイタスには【味覚が無い】。

君だけが、ジュリエットだけが【味覚】を感じるんだ……。」





NC②

そう!!その通りだとも!!

ピンポンッ!!ピンポンッ!!

正解、正解、大正解っ!!

この問題は簡単なただの間違い探しっ!!

【ジャンク】のタイタスと【ソロリティ】のマクベスには【味覚】は無いっ!!




だって……【一度死んでいる】のだからっ!!




普通の、【生きている人間】のような【味覚】を感じる必要は無いのですっ!!

だって君達は【死体】なんですからっ!!

死体に【味覚】なんて必要いらないんですよ??




けれど、【アリス】のジュリエット。

君だけは2人とは違う。

決定的に君だけは違う。



君も彼等と同じように既に【一度死んでいる】のに、失っている筈なのに君だけは【味覚】持っている。




如何どうしてかな??




さぁ、君達も皆も一緒に考えてご覧らん?





NC①

さん話 【ワタシを飲ンデ】




~終演~




──to be continued(トゥ ビィ コンティニュード)…………───

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