第贄話 【記憶のカケラ】

✝配役表一覧✝

●PC1 タイタス→男性

●PC2 マクベス→男性

●PC3 ジュリエット→女性

●NC1(ナレーション)→女性

●NC2(ナレーション)→男性


✝✝男女比率✝

男3・女性2




✝ジャンル✝

SF・ダークファンタジー【R-15G】

(※同性愛表現・残酷描写・鬱展開有)


✝所要時間✝

約40分


────────────────────────





NC②

永い後日談のネクロニカリプレイ風 声劇




『The Fake World of the End(ザ フェイクワールド オブ ジ エンド)』




第壱章

『Columbine(コランバイン)~オワリのハジマリ~』



話【記憶のカケラ】





マクベス

「……どうする?この先に進まなきゃ外には出られそうにないが……」



タイタス

「でもこのまま此処ここにいたって何も分からないし、それに何だかこの先に進まなきゃ行けない気がするんだ……

……まるで【ナニカ】に呼ばれているみたいな……」



マクベス

「え!!??君もかい???

実はワタシもだ。

導かれているように感じる……」



ジュリエット

「えっ、2人も!??!

アタシもそんな気がしてて……うーーん……よし!!!

そうと決まれば早く行きましょっ!!!

呼んでいるのが何なのか?導いているのが一体何なのか?

この先に向かえばその正体が分かるかもしれないし!!

それに、アタシ達名前以外まだ何も知らないんだもの……」



タイタス

「……そうだね、じゃあ先頭は僕が行くよ。

2人共足元暗いから気を付けて。」



マクベス

「ありがとう、タイタス。

ほら、ジュリエット。危ないから手を繋いであげるよ。」



ジュリエット

「べ、別に怖くないし!!1人だって大丈夫よ!!!

子供扱いしないでよ!!!……でも……どうしてもってなったら……お願いするわ……」



マクベス

「ハイハイ、ったく素直じゃないんだから。」




NC①

貴方達はゆっくりコツコツと螺旋階段を降りて行く。

オルゴールの音は鳴り止む事もなく、逆に奥へ進めば進む程その音色ははっきりと聴こえ、単調だったメロディーは美しい旋律となって響き渡っていく。

しばらく螺旋階段を進んで行くと蝋燭の明かりに灯された【Ⅰ(イチ)】とローマ数字で書かれた小さな薄汚れた白い扉を見つけた。

ドアノブに手を掛ければ自然と扉は開くでしょう。



タイタス

「中に入るけど……何が出るかは分からないから2人共用心して。」



マクベス

嗚呼ああ、分かった。」



ジュリエット

「オッケーッ!!任せてよ!!」



NC②

ドアノブを回すとガチャリと音を立てて扉が開く。

中に入ると其コンクリートで打ちっぱなしの無機質な部屋で、其処そこには粗末なほこりを被ったボロボロのシーツのあるベッド。

今にも朽ち果ててしまいそうなガタガタの木製の椅子と机があった。

君達はその机の上に真っ黒な小さいかたまりを見つけるだろう。



ジュリエット

「……なんか凄く殺風景でボロボロな部屋ね。」



マクベス

「家具やシーツなんかにも大量のほこりが積もっているな。

この部屋のぬしは居ないようだけどタイタスは何か見つけたのかい?」



タイタス

「……こ……これは……!?……なんて……なんて可愛いんだ!!!」



ジュリエット

「え?!?!可愛い??!!」



マクベス

「は……???今なんて言ったんだい、タイタス?」



タイタス

「ホラ!!!この子!!!

このエメラルドグリーンの瞳!!やかな美しいフサフサな毛並み!!!

ぷにぷに!!はぁぉぁぁ!!肉球!!!

嗚呼ああ、なんて可愛いんだろぉぉぉぉっ!!!」



ジュリエット

「えっ……ね、猫ぉ???……なんでこんな所に猫が……?」



マクベス

「ふむ……多分だけど、その子もワタシ達と同じ存在かも知れないね……見た感じ体温を感じないし。」



ジュリエット

「えっ、じゃあこの子はずっとこの部屋で一人ぼっちだったのかしら?

そうだとしたら可哀想だわ……」



タイタス

「じゃあ僕がこの子を一緒に連れて行くよっ!!

そうだな、名前は……フジ!!今からこの子はフジだ!!」



NC①

フジと名付けられた黒い子猫は名前が気に入ったのか、小さくニャーと鳴いてタイタスに甘えるように擦り寄った。



ジュリエット

「あれ?この子の首輪の所に何か付いてるわよ?」



タイタス

「本当だ、小さなメモみたいなモノが首輪にくっついてる。」



マクベス

随分ずいぶん小さなメモだね。

それには一体何が書いてあるんだろう?」



タイタス

「ちょっと待ってね。

この紙さっきの手紙と同じモノで出来てるみたいだけど、さっきのと比べるとこっちは更にボロボロだし、読みにくいなぁ。

……えーーっと……なになに……」



NC②

タイタスはそう言って首輪に付いていた小さなメモを外して内容を見てしまう。

其処そこに書かれていたのは紙一面に書かれた文字。

呪いと怨嗟えんさが混じったかのような言葉の羅列。

殴り書きされたのか?

赤黒いインクでびっしりと書かれた文字は、何かを訴たえるようだ。



【全部お前のせいだ 全部お前のせいだ 全部お前のせいだ 全部お前のせいだ 全部お前のせいだ 全部お前のせいだ 全部お前のせいだ 全部お前のせいだ】



そう繰り返されるメモを見てしまったタイタスは、激しい悪意が込められた恐怖を感じてしまう。

それは目覚めてから初めて体験する恐怖。

恐怖はタイタス、君の【心】を侵食していく。

そして君の忘れていた【記憶のカケラ】を呼び起こす。



タイタス

(っ!?!?なん……だっ!?!?これっ!?!?)





NC①

────タイタス 記憶のカケラ【嘘】─────




タイタス

(──────僕は【嘘】をいた。


僕は【嘘】をいてしまった。


本当は【嘘】なんてきたくなかったんだ。


でも、そうする事しか出来なかったんだ。


僕は【あの子】に【嘘】をいた。


僕は【あの子】を騙した。


この【嘘】は決してゆるされない。


ゆるしてはいけない僕の【嘘】。


嗚呼ああ、【あの子】は……僕の【嘘】を信じて……あれ……???


【あの子】……???【あの子】って誰なんだ???


分からない、分からない、分からない……


でも、確かに憶えているのは僕が【嘘】をいた。


ただそれだけ……それだけなのに……


どうしてこんなに苦しいんだろう……???────)





マクベス

「……タイタス……タイタス!!!

おい!!!しっかりしろ!!!」



タイタス

「……っ!?マ、クベス……?

あれ……?僕は……一体……今のは……?」



ジュリエット

「ど、どうしたのよっ!?急に黙り込んじゃって……アンタ顔色悪いけど……何かあったの?」



タイタス

「ごめん、うん、だい、じょうぶ……今のは……僕の……記憶……???」



マクベス

「何か思い出したのかい?

タイタスのその顔を見るとあまり良いモノじゃなかったんだろうけど……」



タイタス

「……僕は昔……【嘘】をいたんだ……

決していてはならない【嘘】を……でもそうする事しか出来なくて……だけどそれがどんな【嘘】で誰にいて、その理由さえも分からないんだ……」



ジュリエット

「【嘘】……ね……なんかタイタスって【嘘】をくイメージとは、ちょっと浮かびにくいわね……」



マクベス

「そうだね、まるで絵に描いたみたいな真面目ってイメージだが……」



タイタス

「僕は……一体……どんな【嘘】をいてしまったんだろう……?」



マクベス

「……今は分からなくても良いんじゃないかい?」



タイタス

「えっ……でも……それは……」



マクベス

「確かにワタシ達には記憶が無い。

自分達の過去の事も、君達の事も何も知らない。

それでも今は先に進むしか無い。

それにそんな中で1つ、自分に関する記憶を取り戻せて良かったじゃないか。

たまから今は無理して全てを思い出して分かろうとしなくても良いんじゃないかな???

まだまだ先は長いんだし。」



ジュリエット

「そうよ、アンタにはアタシ達がいるんだから大丈夫よ。

過去に何があっても、今が何だか分からなくてもアンタは一人じゃない。

だからそんな顔しなくて良いのよ。」



タイタス

「……ありがとう……マクベス、ジュリエット。」



マクベス

「ったく……何時いつまでもタイタスがしんみりしちゃその猫、フジ……だっけ???その子が心配しちゃうよ???

……それにワタシはずっとタイタスの傍にいるし、絶対離れたりしないよ。」



タイタス

「っっ!?……えっと……その……あっ、ありがとぅ……マクベス……」



ジュリエット

「あれ???何かタイタスの顔がちょっと赤くなった気がするんだけど気のせいかしら???

…ふぅ~~ん……なぁにぃ、マクベスってば意外とカッコイイ事言うじゃないぃ~。

もしかして……タイタスってマクベスに惚ちゃったとかぁ~???」



タイタス

「ふァ!?!?」



マクベス

「そうなのかい、タイタス???

……と言うか今ので惚れる要素なんてあったけ?」



タイタス

「んなぁ!?!?……ぅぅ……黙秘権ヲ行使シマス……」


(何でバレたんだ!?!?そりゃあんな事言われたら……惚れるに決まってるじゃないかっ!!!

あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛っ!!!落ち着けっ!!!

冷静になるんだっ!!!

あ"ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ーー!!!

でもでも今直接マクベスの顔を見るのは……何かドキドキするぅぅぅぅーーっ!!)



ジュリエット

「へーー……そうなんだぁぁぁ……ふーん………」



マクベス

「???そ……そうか……えっとそれで此処ここはこれ以上、他に何か出る気配もないし、次へ進もうか。」



タイタス

「そっ!!そうだねっ!!……って何時いつまで笑ってるんだよ、ジュリエット!!

うぅぅ~……さ、さぁ行こうフジ。」



ジュリエット

「ハイハイ、分かってるわよ、ぷぷっ。」




NC②

タイタスは黒猫のフジを自分の肩に乗せるとニャーとひと鳴きされ、3人は【Ⅰ(イチ)】の部屋を出て更に螺旋階段を降りて行く。

階段を降りる音に混じったオルゴールの音が空間に響き渡る。

未だに底は見えないまま、闇は静かに深いままで。

しばらく螺旋階段を降りて行くと、今度は蝋燭の明かりに灯された【Ⅰ(イチ)】の時と同じように【Ⅱ(ニ)】と書かれた、薄汚れた白い小さな扉を見つけた。

ドアノブに手を掛ければ……



マクベス

「今度はワタシが前に行くから2人は後から着いて来てくれ。」



タイタス

「分かった、宜しく頼むよ、マクベス。」



ジュリエット

「後ろはアタシに任せて頂戴っ!!!

アタシが2人を守ってあげるからっ!!!」



マクベス

「そりゃ頼もしいな、ありがとう2人共。

じゃあ開けるよ……」




NC①

そう言ってマクベスはゆっくりと慎重に手を掛け、扉を開いた。

その部屋は先程の部屋と同じ作りと家具があったが、中は異様で異質な光景が拡がっていた。


何故なぜか【ナニカ】でじっとりと濡れて湿った腐った匂いのするのシーツとベッド。


シーツや布団と枕……であろうモノにはカビらしきものが生えて、部屋の中心には天井から真っ直ぐに伸びた、首吊りをするような輪っかになった荒縄が、風もないのにギィギィっと音を立ててきしみながら揺れていた。



マクベス

「……これは……気味が悪いな……」



ジュリエット

此処ここには風も入って来ないのに……ロープが揺れてる……???

何で……???誰もいないのに……何か凄く不気味ね……」



タイタス

「……うわぁ……このベッドは【ナニカ】でぐっしょぐしょに濡れてるけど何でこんなに……?

それにカビっぽいモノも生えてるや。」




NC②

3人はその部屋の異質さと異様さを受けながら、辺りを見渡した。

するとマクベスが地面に1枚の破けた小さな切れ端を見つけた。

その小さな切れ端は少しでも力を入れれば、砕け散ってしまいそうであった。

ふと、裏面に何かが書かれているのに気付いたマクベスは裏返して中身に目を通した。



そう、目を通してた。通してしまった。



裏面びっしりと隙間無く書かれた文字。



【ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい】



その悲痛な謝罪の言葉にマクベスは理由も分からず、罪悪感を強く抱き、支配される。

その罪悪感の中で【記憶のカケラ】は呼び起こされた。



マクベス

(なん……だ……これはっ……!?!?)




NC①

───マクベス 記憶のカケラ【秘密】────




マクベス

(─────誰にも言ってはいけない。


誰にも話してはいけない。


誰にも知られてはいけない。


誰にも諭されてはいけない。


誰にも決して告げてはいけない。


駄目だ。


駄目だ、駄目だ、駄目だ。


この【秘密】は誰にも話してはいけない。


この【秘密】だけは隠さなければっ……!!!


【アイツ】と約束したんだ。


【あの人】にすら伝えれないんだ。


あれ……????


いや……ワタシは一体何を隠している?


【アイツ】……???【あの人】……???


誰なんだ……???


分からない……ワタシは何を【秘密】にしている……?



私は……一体……何を…───)」






タイタス

「マ…クベス……マクベス……マクベス……大丈夫……?」



NC②

小さな切れ端を左手でキツく握り締めるマクベスの手をそっと握り締め、焦点の合っていない彼の視界に入る。

心配そうに見つめる眼差しに、ハッと正気を取り戻し右手で顔を押さえながら、頭を軽く振った勢いで左手の中にあった切れ端はバラバラになってしまっていた。



マクベス

「あっ……嗚呼ああ……タイタス……???

……どうかしたのかい……???」


タイタス

「えっと……それは……」



ジュリエット

「それはコッチの台詞よっ!!!

アタシ達が何回も話しかけても全然マクベスが反応しないから心配したんだから!!!」



マクベス

「そう、だったのか……ごめん……その……1つ思い出したんだ……」



ジュリエット

「ええっ!!??マクベスも記憶を取り戻したのっ!?」



マクベス

「いや……思い出したとはいえ、あれは小さなカケラのようなモノだ……全てを思い出した訳じゃないんだ。」



タイタス

「僕の時もそうだった……わずかな小さな小さなカケラみたいな記憶が浮かんだくらいで、それ以外の事は何も分からないんだ……」




ジュリエット

「そう……なんだ……それでマクベスは何を思い出したの???」



マクベス

「……それは……その……」



ジュリエット

「あっ、そのっ、いっ、言いたくないなら無理して言わなくて良いからっ!!?

それに今は混乱してそれどころじゃないだろうしっ!!!……あーー……その……ごめんなさい……」




タイタス

「僕もジュリエットと同じ気持ちだよ……言いたくないなら無理して話さなくて良いよ、マクベス。

待ってるから……」



マクベス

「謝らないで、ジュリエット。

大丈夫だよ、ちょっとびっくりしただけだから。

それに話せる時が来たらちゃんと2人には話すから。

だからもう少しだけ待ってて欲しい……」



ジュリエット

「うん、分かったわ。約束だからね!!」



タイタス

「マクベスが話せるまで待ってるから安心して!!」



マクベス

嗚呼ああ、ありがとう2人共。」


(……あの記憶……どうやらワタシは何かを【秘密】にして隠しているようだが……それは2人に関係する事なのか……???

【アイツ】……???【あの人】……???

一体何なんだ……???)





NC①

マクベス、貴方が思考を巡らせているとふと、キラリと何か光るモノが目に入った。

近付いて割れ物に触れるかのように、そっとソレを拾い上げてみる。

それは長方形の鉄で至る所に小さな傷が付いて、かすれ薄汚れた銀色の首飾りで、それには白い紐が付いていた。



ジュリエット

「何か見つけたの???……何その板……??」



マクベス

「多分……ネームプレートか何かだと思う。」



タイタス

「ネームプレートって事は誰かの名前が書いてあるのかな???

もしかしてマクベスの過去に関係するモノかも!!!」



マクベス

「いや、残念ながら傷だらけで文字もかすれてて名前どころか、文字や記号さえ読めないようだよ。」



ジュリエット

「そっかぁ……何かヒントになるかなぁって思ったんだけど……」



マクベス

「まぁ、そんなに落ち込む必要無いよ。

このネームプレートを持ってると不思議と安心するんだ。

だから1つ収穫有り、かな。」



タイタス

「僕のフジと同じなんだね。僕もフジがいると凄く安心するんだ。

多分、この先ジュリエットも僕等が手に入れた心の拠所よりどころみたいなモノが見つかると思うよ。

……さてと……じゃあ、次に進もっか。

他にめぼしいモノはないしこの部屋に何時いつまでもいたくないし……」



マクベス

「そうだね、ワタシも先に進みたいな。

この部屋には長居はしたくないからね……

じゃあ、ついでにこのネームプレートを首にかけてっと。」



ジュリエット

「そうね~こんな薄気味悪い部屋、さっさと出ましょう!!!

何かこの部屋って幽霊とか出そうな感じだし……」



タイタス

「ひぃぃぃぃっ!!!幽霊怖ぃぃぃぃぃっ!!!

……ちょっ、幽霊なんていないよっ、何言ってるんだよぉジュリエット。」



ジュリエット

「ふーん…………そうね~…………」



マクベス

「んんん???そもそもワタシ達って、1度死んでるみたいだし今更幽霊なんて怖くないよ。

ジュリエットはもしかして幽霊怖いのかい?」



ジュリエット

「ん??何で??アタシは別に怖くないわよ。

ただそう言うのが出てきそうってだけよ。

……ってタイタス???何で明後日の方角を見てんの???」



タイタス

「別二。ナンデモナイヨ。ハハハハハッ。

……そうだった!!僕死んでるんだった!!!

でも幽霊怖ぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!」



マクベス

「ふーーーん……


(やっぱり幽霊怖いんだなぁ、可愛いなぁ)



ジュリエット

「へーーーー……」


(意外とタイタスってホラー系駄目なのかしら?)



NC②

そんなやり取りをしながら3人は【Ⅱ(ニ)】の部屋をあとにし、更なる下層へと足を進めた。

未だに螺旋階段の最深部は見えないが既に入口は遥か彼方でもう視界では見る事が出来ない程、遠ざかっている。

コツコツと階段の降りる音と鳴り続けるオルゴールの音は大きく響く。


もはや一体、何時間歩いたか分からない。


時間の感覚もなく、ひたすら下へと降りて行く。

不思議と足の疲れを感じる事も無く、3人は降りて行くと、またもや薄汚れた小さな【Ⅲ(サン)】と書かれた白い扉を見つけた。

今までの部屋と変わらず、ドアノブに手を掛ければ自然と扉は開いてくれるだろう。



ジュリエット

「じゃあ次はアタシが前を進むわ!!!

2人共ちゃんと着いて来るのよ!!!」



タイタス

嗚呼ああ、後ろは僕とマクベスに任せて。

でも無茶しないでね、ジュリエット。」



マクベス

「タイタスは心配性だね、大丈夫だよ。

ジュリエットは見た目はまぁ、ちっちゃくて可愛いロリコンホイホイを凝縮した幼女だけど、身体とはアンバランスなあの銃があれば平気だよ。

さて……今回の部屋は【Ⅲ(サン)】か……何かこの場所について分かる情報があれば良いんだけど……」



ジュリエット

「……今何か盛大に馬鹿にされた気がするわね……あとでマクベス100回シメてやるんだから……覚えてなさいよ……じゃあ、開けるわよ……」



NC①

ドアノブを回し、警戒しながら部屋の中に入ると、その部屋も今まで同じだった。

ただ其処そこにある木製の椅子だけは何とか原型を留められていた。

椅子の上には小さなピンク色のウエストポーチが置かれていた。



マクベス

「……此処ここも他の部屋と同じか……」



タイタス

「そうだね……どの部屋でもそうだったけれど、一体どのくらいの年月が経っているんだろう……?

このほこりの量だと1年や2年……いや、もっと経ってるかもしれないなぁ……あっ、ジュリエット。何か見つけた?」



ジュリエット

「んぎゃわいぃぃぃぃぃぃぃっ!!!」



タイタス

「へ?????」



マクベス

「あれ?この流れさっきもあったが……あれ???デジャブ???」



ジュリエット

「見て見てっ!!!このポーチっ!!!超可愛くない!!!めっちゃ良くない!!!」



タイタス

「えっ!?!?あっ、えっとぉ……」



マクベス

「……何ソレ……???」



ジュリエット

「へっ、へぇぇぇぇーーんっ!!良いでしょうーーっ!!!

さっき椅子の上に見たらあったんだけど滅っ茶苦茶可愛いくないっ!!!可愛いでしょっ!!!

可愛いよねっ!!??可愛いだろっ!!!

可愛いと言えっ!!!!!!!」



タイタス

「う……うん……かっ……可愛いね……」



マクベス

「かっ……可愛い……んじゃないかな???うん、良く似合うよ……」



ジュリエット

「そうでしょっ!!そうでしょっ!!

ホラっ、アタシって武装が銃じゃない???

タマは銃に装備されてるけどそれとは別にストックを入れるモノが無くて、どうしようかなぁ~って思ってたんだけど丁度良いのを見つけたのっ!!!

ちょっとがほこり付いてるけどそれ以外はけてもほつれてもなくて

状態も悪くないしっ!!!ホラっ!!!全部入ったっ!!

ねっ!!!良いでしょーー!!!」



タイタス

「ぅっ、うん、よっ、良かったね、 ジュリエット。」



マクベス

「……君が見つけて気に入ったならそれで良いんじゃないかな???」



ジュリエット

「でしょでしょーー!!!ってぇ事でコレは今日からアタシのモノって事でっ!!!

はいっ!!!決まりーーっ!!!」



タイタス

「凄いゴリ押しだね……」



マクベス

「うん、テンション高い女の子って怖いんだね……」



ジュリエット

「2人共どうしたの???急に静かになって互いの顔見つめ合って???」



タイタス

「イヤ、ナンデモナイヨ、ナンデモナイ。」



マクベス

「イヤ、ナンデモナイヨ、ナンデモナイ。」



ジュリエット

「んんん???」



マクベス

「うん、そうそう。ジュリエット、世の中には知らなくても良い事があるんだよ……」



ジュリエット

「んんん???まぁ良いわ。

それじゃあ早速このポーチを腰元に着けようって……ん???

……何かしらこの文字……?」



NC②

ジュリエットは目をハートにしてご機嫌して気付かなかったウエストポーチを腰元に着けようして【ソレ】の存在にやっと気付く。


木製の椅子に刻まれた文字を見てジュリエットはその笑顔を一瞬でピタリと固まらせた。

小一文だけ書かれた小さな文字がジュリエットを心を貫いた。




【────誰が コマドリ 殺したの???───】




これを見たジュリエットはその文字からいいようのない強い悪意と恐怖がその身に走った。

そして、かつてその言葉を言ったかのような既視感きしかんを感じる。


知らないのに何故なぜか知っている。

こんな言葉を言った覚えはないのに何故なぜか懐かしくて、恐ろしい。


言葉には出来ないドロドロとした感情の渦がジュリエットにある自我をむしばみ、狂気は重く閉ざされたジュリエットの【記憶のカケラ】を暴き出した。



ジュリエット

(何っ!?……これ…はっ!?)






NC①

──ジュリエット 記憶のカケラ【双子】────




ジュリエット

(────アタシにはもう1人の【アタシ】がいる。


同じ姿をしたアタシの片割れ。


同じ日に生まれた、アタシの分身。


同じ血の繋がったアタシの半身。


アタシともう1人の【アタシ】の間には不思議な絆がある。


お互いに相手が何を考えているか、相手が何をしているのか何となく分かってしまう。


だからもう1人の【アタシ】が何処どこかにいる気がする。


でもその子の名前も性格も声も分からない……


アタシにいたのは兄???弟???

それとも姉???妹???


アタシには一体……誰がいたの……???)






マクベス

「ジュリエット……ジュリエット!!しっかりしろ!!!」



タイタス

「ジュリエット!!気をしっかり持つんだ!!」



ジュリエット

「……アタシ……???……あれっ……?今のは……??」



マクベス

「……見たんだな……自分の記憶を……」



ジュリエット

「今のが……アタシの記憶なの……???」



タイタス

「どんなモノを見たかは分からないけど……それはジュリエットの記憶の一部だろうね……」



ジュリエット

「アタシ……アタシにはもう1人の【アタシ】がいるの……アタシの半身で片割れで、アタシの一部が何処どこかにいるの……」



タイタス

「もう1人のジュリエット???」



マクベス

「……どういう事だ……???」




ジュリエット

「分からない……でもアタシの大切な、大事な存在だったんだ……だけどそのもう1人の【アタシ】がどんな名前で、どんな顔で、どんな声で、どんな子だったか全然分からないの……」



タイタス

「……そう、なんだ……でもっ!!記憶が戻って良かったじゃないかっ!!!

今は混乱して分からないかもしれないけど、次第に記憶も元に戻るよっ!!!

だから、そんなに気を落とさないで。」



マクベス

「そうだよ、さっきジュリエットが言っていたじゃないか。

もう一人のジュリエットが何処どこかにいるって。

少なくともこのまま進んで行けば、何時いつかは逢えるさ。

時間は掛かるかもしれないけどゆっくり記憶も、そのもう1人の君も見つければ良いんじゃないかな???

焦らなくてもジュリエットにはワタシとタイタスがいる。

だから一人ぼっちじゃないよ。」



ジュリエット

「うん……そうね……そうだよね!!うん、大丈夫。

……もう平気よ、ありがとう2人共。

さぁて……ちゃっちゃとポーチ着けて次行くわよ、次っ!!」



タイタス

「良かった……ちょっとは元気が出たみたいで……」



マクベス

「ジュリエットは元気で少しうるさいくらいが丁度良いんだよなぁ……それじゃあ、行こうか。」



タイタス

「うん、そうだね。この部屋にはもう探すモノも見当たらないし。」



ジュリエット

其処そこ、イチャイチャしないで早く行くわよー!!!」



マクベス

嗚呼ああ、今行くよ。」



タイタス

「いちゃ!?!?べ、別に変にイチャついてなんか、ああもう!!!今行くよ!!!」



NC①

ジュリエットは腰元にピンクのウエストポーチを着けて、タイタスとマクベスは後をおって【Ⅲ(サン)】の部屋を後にする。

3人は再び長い長い螺旋階段を音を立てながら降りて行く。

暗闇の中で未だオルゴールの音色は鳴り止まず、その音色は3人の心を蝕んでいく。


貴方達は更に下へ歩みを進める。

まるで奈落の底に落ちていくように。



下へ。



下へ。



下へ。


深く、深く。



暗く、深く。



落ちていく。



ちていく。



ちていく。




NC②

───……さぁ、君達の【後日談】はまだまだこれからですよ……



まだまだ始まったばかり。




これは【物語ストーリー】の【序章スタート】でしかないのですっ!!!


君達の為の【役者ピース】はご用意しましたっ!!!!!



NC①

貴方達の為の【舞台ステージ】も相応しい【演目ショー】も整えたわ……。



さぁ、早く【此処ここ】までおいでなさい。



ワタシ達の愛憎いとしい【ドール】達……




NC⓶

さぁ、始めましょうっ!!!!

この【巻末オワリ】の無い虚偽マチガイだらけの正気カナシミ狂気ヨロコビ喜劇ホンモノ悲劇ニセモノの【遊戯ゲーム】をっ!!


フフフ……アッハッハッハッハッハッハッ!!!!






NC①

話【記憶のカケラ】




~終演~




──to be continued(トゥ ビィ コンティニュード)……───

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