第8話 オオカミ駆除④ 魔導師たちの会話

 外はすっかり暗くなり部屋の真ん中に蝋燭の火が灯る。


 その灯りが暗い部屋に2人の顔を浮かび上がらせる。


 魔導師のベルとメラニーだ。


 2人は作戦の決行までの時間を魔導師同士で過ごすことにしたようだ。


 「ねぇメラニー」  

 「何?ベル」

 「メラニーたちはジャンたちといつも駆除の依頼ばかりやってるの?」

 「そうね。でも、たまには掃除とかもやったりするわ」

 「掃除もやるんだ。ワタシたちなんかいつも人糞の処理ばっか・・」

 「アハハ・・あれ臭いし嫌よね」


 メラニーは人糞の処理を思い出して思わず鼻を手で覆う。


 「ケンに冒険者に誘われたときはアイツは偉そうなことを言ってたわ」


 ケンは冒険者になる際、街で売れない占い師をやっていたベルに偉大な冒険者になって大金持ちになろうと勧誘を持ちかけた。


 「それが始めてみれば、ローランには何の経験もないボンボンには掃除しかやらせられないって言われて毎日、糞の処理ばっか」

 「ケンってボンボンなの?」

 「アイツ、あれでパリの貴族よ。稀代のどら息子」

 「すごいわね・・」

 「アハハ今じゃただの貧乏人だけどね」


 ベルとメラニーは可笑しな話だと笑い合う。


 「ねぇメラニー。駆除依頼の魔導師としてのコツみたいなのってあるのかしら?」

 「コツ?そうね・・」


 メラニーはベルの質問にうーんと唸りながら頭を捻る。


 「やっぱり獲物の位置を知るのが肝だから、索敵魔法をどれだけ使いこなすかが大事でしょうね」

 「索敵魔法か〜」

 「ベルは何メートルの索敵ができるの?」

 「10メートルくらいかな」

 「ワタシは30メートル。ジャンたちの弓の腕前だとこれくらいの索敵範囲があれば十分なフォローになるわ」


 ジャンが弓を正確に当てることのできる距離。


 それが、30メートル程度だという。


 メラニーが索敵で獲物の位置を把握してジャンたちが構えて狙う。


 これがジャンたちの定石なのだ。


 「へ〜そこまで考えてるんだ」

 「そうよ、ただ闇雲に依頼をこなしても成功率は上がらないしね」

 

 メラニーは少し自慢気に語る。


 「ねぇメラニー。どうしたら索敵範囲って伸ばせるのかしら?」

 

 メラニーはベルが聞いてきたことに少し驚いている。


 冒険者という仕事に対して斜に構えていかと思えば意外と真剣な瞳で教えを乞うてきたからだ。


 メラニーは素直でないベルに思わずクスリと笑う。


 「いいよ。教えてあげる」

 「ん?なんで笑うの?」

 「気にしないで。さぁ、依頼まで少し時間あるから、やりましょ」

 「うん!お願いします」


 ベルとメラニーは依頼の時間まで索敵魔法の練習を始めた。


 メラニーのアドバイスを聞いて何度も索敵魔法を発動するベル。


 依頼の開始の時間が刻々と近づいてきた。

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