実体験 事故の奇跡

つよし

第1話 20年以上前の交通事故

 交通事故はいつどこで起こるのか分からない。

 そして、それがどんな結末が待っているのか分からない。


 僕は当時、17か18歳の頃に、交通事故にあった。

 それは、お盆の時だった。その頃、僕は高校2、3年の頃で、父方の親戚に13日にお邪魔をし、父の運転するワゴン車で、その夜に母方の親戚に行く予定だった。

 

 僕は姉と弟がいるが、姉には用事があって、今回は親戚宅に遊びに行かなかった。

 その為、父と母と4人で、父方の親戚に遊びに行くことになった。


 高速道路を使って、3時間は掛かるだろうか。渋滞していなければ2時間弱だろうが、この時期は大概渋滞している。

 それもあって、着いた時にはいつも昼を過ぎる。その後に、親戚等が20人くらい挨拶を交わし、昼食を食べ、お坊さんがお経を唱え、祖父の墓参りをして、ゆっくりしていると、晩御飯の時間帯になる。

 そして、あれやこれや談笑を混じえると、結局夜の9時か10時に帰ることになる。

 この日もそうだった。しかし、一つだけ違ったところがあった。


 それは父がお酒を飲まなかったことだ。いつもは呑兵衛であり、丁度その頃アルコールの厳罰化で、酒気帯び運転は30万という罰金の話があり、350ml缶ビール1本だったら大丈夫だとか言われていた。

 時効だから話すが、それまでは父はお酒を飲んで、みんなを運転して帰っていた。

 それほど父はお酒が好きだった。


 しかし、この時は、親戚が進めるも、断固として父は断った。そのことが不思議だった。

 まあ、僕としては、酔っぱらってヘラヘラしている父よりも、素面の方が好きなのだが。

 そして、夜の9時頃に父方の家を後にした。親戚の人が車のパーキングまで見送ってくれる中、今度は母方の親戚にお邪魔する。もちろんお泊りだ。

 父方の親戚から母方の親戚まで高速で飛ばしたら、約2、3時間は掛かる。しかし、この日は非常に空いていて、渋滞は全くなかった。

 僕と弟は車内のテレビに夢中だった。毎週見ているバラエティー番組を食い入るように観ていたのを覚えている。

 父が運転する車は高速道路の右車線を走り、左には十トンはあるだろう、トラックがゆっくり走っている。

 

 そこに、

 ズドーンと、音が鳴ったかも覚えていないが、一気に車は直線道路で、右に揺れた。

 後部座席に乗っていた僕は、シートベルトをしてなかった為、右に寄れて思わず肩を打った。

 右の中央分離帯に激突すると、今度は左に車は向きを変え、必死になっている父、助手席に座っている母の身体を抱くように、左肩を持ちながら、片手で運転をしていた。

 左の壁に進むときには、本当に突き破って落ちるんじゃないかと思った。

 そんな時、スローモーションになる。脳が危機を感じ、色んな処理を働かせるのか分からないが、あの時の母と弟と僕の叫び声が、いまだに頭の中に残っている。

 実際には左の壁に当たって、その余力で少し進んでようやく止まった。


 エアバッグが自動的に作動し、ワゴン車は大破した。7人乗りのどっしりとした車が、こんな簡単に損傷するとは思わなかった。


 原因は何かというと、酔っ払っていた、ヤクザらしき人が、160キロのセダンを猛スピードでトラックとワゴンの間に突っ込んだのだ。

 トラックとワゴンが左右に分かれると、その間を激走した。

 だが、そのセダンも無論、大破しており、僕らから80メートル先に、止まっていた。

 

 もう一台、トラックの前に走っていた乗用車もセダンと接触し、被害の車は3台となった。

 3台は路肩部分で止まり、全員車から降りて、トラックの運転手は会社に連絡、そして、もう一台の乗用車からは40代くらいのおじさんが、「大丈夫だったか?」と、話しかけてくれた。

 緊張と興奮が入り混じっていた。父が携帯電話で警察を呼んだ。そして、両親戚に電話をする、両親……。

 父の運転が上手かったようで、その40代くらいのおじさんがいうには「普通だったら、車に火がついても可笑しくなかった」と父を褒めていた。


 警察が来るまで15分は掛かった。何しろ、高速道路の真ん中だ。中々位置情報も分かりにくい。

 そんな中、ツナギを来た若い男の人がこちらに近づいてきた。別に喋りかける様子もなく、現場を見ている。

「知り合いの方ですか?」と、母親は四十代くらいのおじさんに言ったのだが、「いいや」と、首を傾げた。


 そこから、またツナギの男は急にいなくなり、警察が来る前に、その加害者のセダンは車を走らせた。

「あいつ、逃げおった!」と、おじさんが言ったのだが、警察が来て、事情を説明し、逃走車を探したのだが、すぐに見つかった。こんなにボロボロの車が夜道に走っていたら、簡単に見つかる。

 そして、その運転手が警察に付き添われ、僕らに対しても謝ったのだが、かなり酔っぱらっていた、強面の方だった。



 まあ、これが僕が実体験した中で一番大きな事故だったが、今にも不思議なことがある。

 それは父がその日お酒を飲まなかったこと。

 後で、母が父になんであの時飲まなかったのかを、聞いていた。

 だが、父はあの時は何か飲みたくなかったと怒ったので、それ以上、母も聞くことはなかったのだが。

 しかし、この事故が起こることを予想して、先祖が父にメッセージを送ったのだろうか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

実体験 事故の奇跡 つよし @tora0328TORA

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る