第59話
「ルシア! この
「誰が暴力男だ。王女さんもまだ無理はするな。横になってた方がいい」
フォスカの頭を鷲掴みにするセカンドを見て、ルシアの顔にも笑みが浮かびだす。
「ふふっ、あまり私の仲間をいじめてくれるな。それとセカンド殿……迷惑をかけたようだな……。お詫びにはならないが、さっきまでの話の続きは私から話そう─────」
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「ワーレス副長! 貴様は負傷者をまとめろ! 我等は王妃と王女を連れて先に行く!」
「承知しました! ご武運を!」
副隊長の返事を聞いたダリオは、副隊長の小隊を負傷者の護衛に残すと、足早に行軍を開始した。
襲撃者は全て討ち取ったとはいえ、二回目の襲撃が必ず来るとダリオは確信していた。
「ダリオ! ダリオ! 一体何がどうなっているのですか! 説明なさい!」
ダリオは心の中で舌打ちをした。
なぜなら、ダリオの苦手な王妃付きの侍女長から声がかかったからだ。
しかし無視する訳にもいかないダリオは、馬足を緩め王妃達が乗る馬車と並走した。
「キヤーナ侍女長、説明が遅れてすまない。今し方、賊の襲撃を受けた。また襲撃が来ないとも限らないと判断した
「……そうですか。ですが馬車と言う物は、この様に速く駆けるられる様に設計されていません。サランバラ様もルシア様も、お身体を壊してしまいますよ」
ダリオは『状況を考えろ!』と怒鳴りつけたい気持ちをグッと我慢した。
「分かりました……。ならば、少し速度を落としましょう。サランバラ王妃、ルシア様……暫しご理解のほどを……」
ダリオが横窓の隙間から見えた王妃とルシアにそう伝えると、キヤーナを押し退けてルシアが窓から顔を出してきた。
「ダリオ! お尻が二つに割れちゃうわ! どうにかして!」
「まぁ、はしたない! 淑女がそんな事を言ってはいけませんことよ!」
キヤーナにペシリと頭を叩かれるルシアを見て、ダリオの張り詰めていた緊張の糸が少し緩まっていった。
「ハハハッ! ルシア様には敵いませんな! しかし御安心下され! 王国が誇る、七聖の中の七聖……次期勇聖のダリオが付いていますから!」
「え〜、次期じゃん! 今じゃないなら不安〜!」
『何ですか、その言葉使い!』と、またまた頭を叩かれたルシアのおかげか、今まで不安そうにしていたサランバラ王妃にも笑顔が見え始めた。
「ふふっ。ルシア、少し落ち着きなさい。それとダリオ……嫌な予感がします。最大限に注意を払いなさい……」
「御意……。では、私は戻りま────『敵襲ー! 敵襲ー!』」
ダリオの声を遮る様に、偵察にと先行させていた部隊が角笛を鳴らしながら戻ってきた。
見ると、偵察部隊の背中を追う様に、数百を超える人と魔物の混合部隊が襲いかかって来るところだった。
ダリオは焦りを隠せなかった、何故なら今いる場所はいまだ山道の中腹辺りで、街道に出るにはもう一つ山を降り、森を抜けねばならなかったからだ。
「キヤーナ侍女長! 二人を頼みます! 絶対に外へ出さないで!」
コクリと頷いたキヤーナを一瞥し、ダリオは襲撃に対応せんと、自らを光の鎧で覆い始めた。
「我が先祖たる光の勇者よ……。我にこの困難を打ち破る力をお貸し下さい……」
七聖の中で唯一世襲制を認められているのが、勇者の末裔と噂されるシン家の一族達だ。
光の勇者よろしく、光系統の魔法に特化したダリオが自慢の愛剣を天にかざすと、太陽と見間違えるほどの眩しい光が戦場を襲った。
「敵から光は失われた! 続け! 王国を守る剣達よ!」
後手に回っていた兵士達を鼓舞すると、ダリオは敵陣の中央へと一騎で斬り込んで行った。
「隊長! お戻り下さい!」
「ダリオ様! 危険です!」
しかし、ダリオは各小隊を纏める騎士達の声にも耳を貸さず、士気を上げる事を選択した。
「来い……光の聖剣よ……。敵を滅ぼす希望とならん」
ダリオが自身の愛剣に光の魔力を纏わせると、2mを超える光のオーラが刃状に伸びていき、触れただけで消滅しそうな高密度な魔力が激しく猛り出した。
ダリオが
「見ろ! ダリオ隊長の代名詞……光の聖剣だ!」
「我等も続けー! 王妃様とルシア様をお守りしろー!」
「「「うおぉぉぉぉおおぉぉぉ!!」」」
計算通り士気が上がったのを確認したダリオは、低位の魔物は部下達に任せ、己はオーガ等の高位の魔物を倒しつつ、この魔物達を操作しているであろう元凶を探し始めた。
「ええい! 次から次へと召喚しおって!」
やはりこのままではジリ貧だと判断したダリオは、元凶である召喚術師を見つける事を優先した。
すると、丁度襲いかかって来たAランクのサイクロプスを消滅させたダリオを、真っ白な外套に身を包んだ女性らしき人物が攻撃を仕掛けてきた。
「貴様! 何者だ! その仮面を取って顔を見せよ!」
瞬時に相手の攻撃を弾いたダリオは、右手に魔力を集めると光線として発射した。
「ちぃ、忌々しい光の一族め! 黙って殺されておればいいものを!
ダリオの攻撃によって仮面を飛ばされ、露わになった女性の顔には、額の所に小さな角が生えていた。
「魔族……だと……」
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