第6話


 気を失った盗賊三人組は、セカンドやピリンキの外骨格を覆っている【メビウス合金】と同じ素材の拘束具で身体を拘束されていた。


 「なぁピリンキ、こいつらが目を覚ますまで久しぶりに飯でも食うか? 竜の肉でも焼いてみようぜ」


 身体の八割を改造されているセカンドは本来なら食べ物を摂取しなくても生きていけるが、娯楽としてたまに美味いものを食べるのが趣味だった。


 「かまいませんよ。解析の方も終わっていますしね。豚や牛より、どちらかと言えば鳥に近い味になるとcpuは予想しています」


 「それは楽しみだ。まぁ、大体の物は焼いて美味い調味料をかければ食えるだろうしな」


 『身も蓋もない……』と嘆くピリンキを気にせず、セカンドは既に解体済みの翼竜の肉を【カプセルホイホイ】から取り出すと、身体から分離したメビウス合金をフライパンの形に変えて肉を焼き出した。


 辺りには翼竜の肉がバターと共に焼ける良い匂いが充満していた。

 それは空腹の盗賊が目を覚ますには丁度良い刺激だった様だ。


 「う〜ん、なんか良い匂いがするなぁ」

 「ああ、最後に美味い物をたらふく食いてぇな」

 「グギュルルルルゥゥ〜」


 盛大にお腹の音を鳴らした盗賊達に気づいたセカンドは、『はぁ〜』と溜め息を吐きながらも追加で肉を焼いてあげる事にした様だ。


 「おいピリンキ、しょうがないから拘束を解いてやれ。肉を食わせてやる代わりに情報を貰おうぜ」


 「分かりました。しかし、貴方にしては甘いですね」


 『まあ、たまにはな』と言いながら肉を焼き続けるセカンドを横目に、ピリンキは盗賊達の拘束具を解除してこちらに来る様に促した。


 「貴方達、私の主人が肉をご馳走するとの事です」


 盗賊達は初め、喋るメタリックカラーな猿に驚いていたが、空腹には勝てなかったのか駆け足でセカンド達の元へとやって来た。


 「へへ、すまねぇな。俺はヤスハランだ」


 「助かったぜアニキ! それにお猿様も! 俺はサブノーリト。宜しくな!」


 「ハチベェールダー……。腹減った……」


 今さっき襲った事を無かったかの様にした態度に再度溜め息が出そうになったが、考えるだけ無駄だと切り替えたセカンドは、ピリンキが用意した皿に焼き上がったばかりの竜のステーキ肉を乗せて三人に出してやった。


 「よし、ヤスにサブにハチベェだな。それを食ったらこっちの聞きたい事に答えろよ。嫌とは言わさんからな」


 しかし、盗賊達は既に話を聞いてない様で、出された肉を『うめぇ、うめえ』と泣きながら貪り食う始末だった。


 「セカンド、せっかくのステーキが冷めてしまいますよ。船から持って来たシラーズの赤ワインも一緒にどうぞ」


 『おっ、気が効くねぇ』と言いながら、大きくカットしたステーキ肉を頬張ると、かつて経験した事がない程の上質な旨味がセカンドを襲った。


 「こいつはヤバいぞピリンキ……。この肉を奪い合うために戦争が起きてもおかしくはない」


 『そんなアホな』と思ったピリンキだったが、食べては飲み、肉が無くなったら焼いて食って飲むを延々と繰り返すセカンドと盗賊達を見ていると、あながち嘘ではないのかもと思い始めて来てしまっていた。


 「やれやれ……すっかり日が暮れてしまいましたね。私達に睡眠は必要ありませんが、このグースカ寝ている三馬鹿はどうしますか?」


 盗賊達は久しぶりの食事とお酒をたらふく飲んだおかげで気絶する様に寝ってしまっていた。


 「まぁ、一緒に飯を食った仲だからな。このまま放っておく訳にもいくまい。仕方ない今日はここで野宿だな」


 ピリンキは『そうなりますね』と言いながら、少し大きめなテントの姿になってセカンド達を覆った。


 「お前、動物型のクセにテントなんかになっていいの?」


 「いいんですよ。私は貴方と違って九割がメビウス合金で作られてますからね。見た目は自由自在です。それにほら、顔はタヌキになってますし」


 セカンドは『……まぁ便利だしいいか』と言ったあと、横になって目を瞑った。


 セカンドは眠る必要は無いが、眠れない訳では無いので仮眠を取る事にした様だ。


 「やれやれ。数億年も寝続けたクセにまだ眠るのですか」


 返事を期待していなかったピリンキは、各地に散らばったドローンから送られてくる情報を整理する事にした。


 時間を忘れて作業に没頭していたピリンキの目に朝焼けが見え始めると、ピリンキはテントの姿から猿へと変化してセカンド達を起こしてまわった。


 「今日こそは街にたどり着けるといいのですが……」


 

 

 

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