第5話
「歩けど歩けど、木と虫ばかりだな。おいピリンキ、サンプルの解析は終わったか?」
セカンド達が森の中を探索してから、既に一週間が経過していた。
その間、ピリンキは手当たり次第に植物や虫を体内に取り込み、効能や毒の有無などの解析に専念していた。
「ええ、あらかたは終わりました。例えばこの草……x草と仮定しますが──これには傷の治りを促進する作用が──」
自分から聞いたセカンドだったが、まったく興味が無かったので右から左へと聞きながしていた。
「そんな事より、もっとこうポンポンと物語に出てくる様な怪物達が襲って来るのが定番だと思ったんだがな」
「そんな事……。ああ、そう言えば【ニンジャ】に送った翼竜の解析も終了していますよ。まぁ、そんな事はセカンドに興味は無さそうなので関係ないですね」
ぶっきらぼうにピリンキがそう言い放つが、セカンドはまるで気にしていなかった。
「おお、終わったか。っで、魔法はどうなったんだ? やっぱり魔石は定番か? 竜の肉は美味いのは本当だったか?」
矢継ぎ早に質問するセカンドに思わずため息が出そうになるピリンキだったが、グッと我慢した後に淡々と喋り出した。
「魔法についてはまだサンプルが少な過ぎるのでなんとも言えませんが、翼竜の心臓の位置にセカンドが言う【魔石】と言う物があったのは確かです。その魔石を解析装置にかけた結果……あの風の刃を放った時には2.00GJものエネルギーを断続的に放てる優秀なエネルギー機関だと言う事が分かりました」
「そいつは凄い。しかし、そんなのがゴロゴロいたら簡単に世界は滅ぶな」
「同感です。今、私達が他の生物に出くわさないのは、ここら辺一体があの翼竜達の縄張りだったからかも知れませんね」
「かもな。さて、俺のMAPアプリによればそろそろ森を抜けるはずなんだが……」
そう言いながら、セカンド目の前に現れた地図情報を流し見しながら再度歩き出した。
この7日の間にナノテクドローンによる地形情報もアップデートされており、当初より更に精密な地図が出来上がりつつあった。
「セカンド、街道に出ればその格好は目立ちますので見た目を変更して下さい。こちらがこの世界の一般的な旅人の格好になります」
セカンドやピリンキはバイオナノテクロノジーを応用したETE細胞を埋め込んだ合金によって身体を改造されているため、見た目をある程度好きな様に変える事が可能だった。
「はいはい……って、何十億年前の格好してんだよ。ちょっとアレンジしていいよな?」
『お好きに』とのピリンキの返答を聞いたセカンドは、何とか自分が許せる範囲の見た目になる様に奮闘していた。
それから一時間もの間、セカンドのファッションショーを見せられたピリンキの堪忍袋が切れそうな頃にようやっと納得する服装が完成したようだ。
「まぁ、こんなもんか」
鼠色のサルエル風のパンツと白い麻のシャツ、その上から少し大きめな黒いマントに身を包んだ不審な男が誕生した事をピリンキは大いに悲しんだが、これ以上時間を取られるのは酷だったので口を閉ざす事にした。
その後二人は特に会話もなく黙々と歩き始めた。
MAPアプリの情報どおり小一時間も歩けば、今までの荒れ果てた獣道では無く、恐らくは人の手が入っているであろう少し整備された道が見え始めた。
「セカンド、私達の大冒険が終わりを迎えそうですよ。ほら、森の切れ目が見えて来ました」
「ちくしょう。こんな事ならさっさと飛んで行くんだったな。
『だから最初からそう言いましたのに……』っと、ピリンキが半ば呆れながら森を抜けると、既に日は落ちかけ、綺麗な夕焼けが二人を照らし始めた。
「……まぁ、この夕日に免じて許してやらなくもないな」
「別に、誰もセカンドに許して貰いたく無いと思いますが……。おっと、どうやらこの先に生体反応がありますね。どうしますか、セカンド」
『そりゃあ行くしか無いだろ」とセカンドが反応のあった方に駆け出した。
そして何がいるのか辺りを見渡すと、いきなり木の上から三体の人影が飛び降りて来た。
「お〜っと、ここからは通行料がかかるんだわ!」
「見た目がダセェ兄ちゃんよぉ〜! 金か命か選べやぁ〜!」
「あ〜ん? そっちの鉄みたいな猿はなんだあ〜ん?」
セカンド達の前に現れたのは、本にしか出て来ない様な見た目をした山賊達であった。
「クッ! 楽しみにしてた最初の現地民がこんな奴等だとは……。
「セカンド、落ち着いて下さい。宇宙憲法第七条をお忘れ無く。こちらから現地民に手を出すと厳罰ですよ」
ピリンキに
「何をブツクサ言ってやがる!」
「もう3日も飯を食ってねぇんだ!」
「金を寄越せ〜!」
ナイフを携えた山賊達が会話をする暇もなく襲いかかって来たのを、これ幸いとばかりに返り討ちにした結果、セカンド達の目の前には気絶した山賊達が並んでいた。
「ちゃんと録画したか? 正当防衛だからな」
「しましたよ。まったく……仕方ありませんね、貴方は」
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