第2話


 かつて、その星には神が創りし様々な種族と動物達が手を取り合って暮らしていた。


 神はそれを見て良しとされた。


 しかし、神のしもべの一人が神に一つの質問をした。


 「おお! 偉大なる神よ! 愛深き父よ! 貴方様が創ったしゅの中で一番優秀なのはどれか!」


 神は答えた。


 「我が息子。忠実で勤勉な御使よ。私が創りし種に優劣は無い。また、比べてもならない」


 しもべは『はい』と答えた。

 しかし、好奇心旺盛な僕は納得してはいなかった。


 どうしても答えを知りたがったしもべは、下界に降りて全ての種を焚き付けた。


 「神は言っておられる。誰の家族が一番主を信仰しているか。そして、主の寵愛を受けるに相応しいのは誰か! 優れた種族は誰かと!」


 森と共に生き、魔法の神秘に愛されたエルフが言った。


 「我等こそ、主の寵愛を受けるに相応しい」


 鍛治と酒を愛するドワーフが吠えた。


 「儂等こそが、主と共にあるのだ!」


 異形の民、魔力と活力に溢れた魔族が囁いた。


 「主は……私達こそを望んでいる……」



 そして、最も神に似せて創られた

 人間がこう宣言した。


 「ならば決めようぞ。真に選ばれし民は誰なのか!」


 その時、平和を愛する小人が叫んだ。


 「争いはやめましょう! 主はそんな事を望んではいません!」


 しかし、小人の声は小さく、誰も小人の声を聞き入れはしなかった。


 そして戦いの火蓋は切って落とされた。


 エルフの魔法が、ドワーフの武器と怪力が、魔族の暴力と狡猾さが、そして人間の知恵と意思の力が激しくぶつかり合った。


 あれだけ仲の良かった種族同士が、まるで親の仇の如く争いあった。

 かつしてそれは見るに耐えないものであった。


 しかし、一人だけそれを見て楽しむ者が居た。


 「これだ……これこそ私が見たかったものだ。ふふ……ふははは!」


 神の御使であるしもべはとても喜んだ。

 長年の疑問に答えがでる最良の時になると信じていたからだ。

 しかし、遂ぞその時が訪れる事は無かった。


 何故なら、その光景を天から眺めていた神が大いに悲しんだからだ。

 

 その悲しみの涙は大雨になり、大地を洗い流す程の洪水となって、小人以外のほぼ全ての種族を海へと還してしまった。


 そして、神はこの争いの原因を作った御使に向かってこう言った。


 「我が息子。忠実で勤勉なる僕よ。また以前の様に全ての種族が手を取り合って暮らせる日が来るまで……お前を地の底の底へと封印する」


 しかし、僕は食い下がり、許しを求めた。


 「おお! 偉大なる神よ! 愛深き父よ! そんな日はもう来ません! どうか慈悲を」


 神は答えた。


 「なれば我が息子よ、千年に一度、一年間だけ人の身で現世に留まる事を許そう。その時のお前の行動が全てを決めるだろう」


 神はそう言い終えると、親愛なるしもべを大地の底の底へと封印した。

 

 その後神は自らの行いを悔い、二度と直接下界に手を出さない事を誓い、天界へと帰っていった。

 

 この全ての事象は、唯一神に許された種族である小人の探検家 ヨンファイム・サザーランドの著書【創世新書】に残されて後世にまで語られる事なった。

 

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