【機械兵士と七つの塔】 地球が太陽に飲まれたので 違う星に移住します〜 ワープした先はとてもファンタジーな世界でした〜

一日一話

一章 異世界転移編

第1話


 今、一つの銀河が終わりを迎えた。

 

 太陽がその活動に終わりを告げ、それから20億年と言う長い期間を使って膨張を続ける過程で、水星や地球と言った星々は太陽に飲み込まれてしまった。


 「これが地球の最後か……。あっけない物だな。なあ……ピリンキ」


 「そうですね。しかし、これで長い任務も終わりとなりました。これからどうしますか、セカンド」


 この中型星間遊泳船ニンジャに搭乗している一人と一匹は、西暦50億年……もとい大宇宙歴2023年の技術を持って作られた、超人力機械兵士サイボーグNIN002と、それを補佐する動物型ロボット……PRI703、通称ピリンキニウムの2体である。


 「そりゃあ決まってる。休暇だよ休暇。大佐の願い通りに地球を看取ってやったんだ。これで俺らを縛るものは無くなった。三百年くらい前にリゾートにピッタリな星を見つけといたんだよ」


「看取ったと言っても、何十億年もコールドスリープしてただけじゃないですか。まぁ、休暇には私も賛成です。早速、座標を入力して下さい」


 説教を免れたセカンドは、意気揚々と宇宙船のメインコンピュータに座標を打ち込んだ。


 「流石はピリンキ様……話が分かるロボットだ。さて、この星に着くまで100年位かかるからな。俺は寝るよ」

 

 「また寝るのですか。まぁ確かに、二人で100年もトランプをして過ごす訳にもいかないですからね。分かりました。では着く一年前には起こしますので」


 『頼む』と言い残して去って行くセカンドを見送り、ピリンキはワープ航法の準備に入った。


 「目的の銀河は……GN-z11ですか。これまた遠い所を選びましたね。それにしても100年ですか……。仕方ありません、ワープも連発出来る訳ではありませんからね」


 ブツクサと文句を言いながらも、ピリンキは自分の仕事を完璧にこなしていた。

 そして全てのチェック項目をクリアし、ワープ航法を起動する為に最終段階のメインボタンを押した時に異変は起こった。


 今、宇宙船のメインモニターには見慣れたワームホールの黒い穴ではなく、虹色に輝く何かが中型星間遊泳機ニンジャを飲み込まんとする映像が映し出されていた。


「エラー発生。全ての行動をキャンセル。これより緊急離脱プログラムを発動。3……2……1……失敗。緊急離脱プログラムが解除されました」


 得体の知れない何かの干渉により、中型星間遊泳船ニンジャの全てを掌握するピリンキにもうつ手が無くなり、後は見ているだけとなってしまった。

 そして、ピリンキが星間遊泳船ニンジャの全ての行動をキャンセルした事により、コールドスリープをする予定だったセカンドも、異変を察知してコントロール室になだれ込んできた。


 「ピリンキ! 一体何が……おいおい、新型のワープ航法を試すなら先に言えって言っただろ」


 「違います。あの虹色の光はデータにありません。あれに飲まれたら最後、休暇どころではないかもしれませんね」


 『かもな』と言いながら椅子にどっかりと座るセカンドの顔に恐怖の色は浮かんではいなかった。

 それは、超人力機械兵士サイボーグゆえに感情を抑制された影響か、はたまた本来の図太さゆえか。



 「まぁ、なるようになるだろ」

 「やれやれ。貴方には敵いませんね」


 そんな二人の会話を聞き終えたかの様なタイミングで、その虹色の何かは星間遊泳船ニンジャを飲み込んで、何処かへと消えてしまった。

 


 

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