第肆拾弐話:東京駅

俺たちを乗せた車は東京駅に向かって進んでいた。


「父さん、携帯ある?」


「あるぞ。誰かにかけるのか?」


「うん!真紀ちゃんのお父さんの電話番号ある?」


「あるぞ、何かあった時のために交換してもらったんだ。」


俺は真紀ちゃんのお父さんに電話をした。


『もしもし、私は大日本帝国内務省警察局捜査1課課長、杉村幸一です。』


「もしもし、真紀ちゃんのお父さん?僕だよ。悟!」


『ああ、悟君か。どうした?』


「あのね、聞きたいことがあるんだけど今どこに向かってるの?」


「どうしてそんなことを聞くんだい?」


「あー、真紀ちゃんが布田月家に監禁される危険性もあるから僕も協力したいんだ。」


「たしかに、あいつなら娘を人質に取りかねんからな。いざという時の戦力も必要だ・・・よし教えてやる。」


「ありがと!」


「今向かっているのは新潟県の直江津ってところだ。今しがた怪しいトラックが関越道から上信越道に入ったという方が入ってな。軽井沢辺りで行われていた検問を無理やり突破したから、間違いなく布田月のトラックだと思う。」


「そうなんだね。でも、なんで直江津ってわかったの?」


「通信を傍受したからだ。どうやら直江津港にある廃屋に工作員が集まっているらしい。新幹線で行くのかい?」


「うん!今からじゃ速度超過しないと間に合わないからね。」


「はっはっは!なるほどな・・・布田月家の仲間はほぼ全員捕まったと思うが、くれぐれも気を付けるように。」


「わかった!」


そうこうしているうちに俺たちは東京駅に着いた。


新幹線なんて久しぶりだな。


案内板を見ると北海道や樺太へ行く東北・北海道・樺太新幹線なる物があったり、東海道・山陽新幹線の案内の横に小さく、対馬・朝鮮新幹線、満洲高速鉄道というおおよそ前世の東京駅いや新幹線駅では目にできないような光景が広がっていた。


「豊原に敷香、京城、平壌、新京まで行く列車まであるの!?」


「ここはすごいぞ、時間と金さえあれば飛行機なしで今悟が言ったところまで行けるんだ。」


鉄道オタクでもある俺としてはぜひ乗りたい路線ばかりだが今日はそんなのを楽しんでいる暇はない!


「北陸新幹線にのって上越妙高駅で乗り換えれば・・・。」


「北陸新幹線?ああ、長野新幹線の事か。たしかにあの路線は妙高まで行くという話はあるが。」


慌てて案内板を見るとなるほど長野新幹線と書いてあった。


北海道まで行くやつはあるのに北陸無いんかい!まあ、おそらく北の方に行くやつは軍事的な理由で建設が早まったのだろう。


「ああ、行けたらいいなーってね。ハハハ・・・。」


しかもこれまた面白いことにほくほく線は、国鉄から分割民営化した帝国臣民運輸鉄道(通称民鉄)がそのまま建設を継続して北越線として開業しているらしい。


父さんが窓口で直江津までの全員分の切符を買った。


俺はそれを改札に通した後で大事にしまって、自分の心配が杞憂であることを祈りながら新幹線に乗った。

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