第弐拾玖話:追跡2

竜人族の女につかまった俺はあることを思いついた。


彼女のレベルが俺より低ければもしかして・・・。


俺は固有魔技『鵺の咆哮』をつかった。


「ヒョォオオ!!」


「うあぅ・・・オカシイ?!キュウニカラダが・・・。」


そう言って女は気絶した。


「よし!今のうちに脱出だ!!」


だが、運転手まで巻き込む可能性を考えていなかったため、制御が効かなくなった車は途中で並走していた仲間の車にぶつかった。


ぶつかられた車は制御を失って横から侵入してきたバスにぶつかってその勢いで中央分離帯を飛び越えて反対車線を走っていた乗用車に思いっきりぶつかってその勢いで上下逆さまになった。


俺が乗っているワンボックスは、その後もあちこちにぶつかりながら加速していった。


このままではどこかに派手にぶつかるのも時間の問題だ。


「くっ、まずい!」


俺は意を決して屋根に上りそこからタクシーに飛び移った。


「待ちやがれ!糞坊主!!」


ふと後ろを見ると、後ろの強面のおじさんが青白くなった顔で必死に万能薬を飲んで回復し、ふらつきながらも運転手を無理やり後部座席まで引っ張り、自分が運転席に座った。


そして血気迫る勢いでそのスピードのまま追突を繰り返した。


「ぐあっ、しつこい!」


「まずい!渋滞だ。」


見ると高井戸駅あたりで車が密集して動けなくなっている。


「俺に任せろ!」


運転手はそう言うと、古めのリボルバーを取り出して最後尾に止まっていた車を積んでいないが8台分の車が収まるであろう大きめのキャリアカーに4発ほど発砲した。


すると車を乗せる2枚のロードプレート(地面に傾斜した状態で設置して車を乗せる物)を制御する装置が壊れて、あっという間に即席のジャンプ台が出来上がった。


「まさか?!」


父さんがそう言うと運転手はにやりと笑った。


「漢なら・・・やるよな?」


タクシーはぐんぐん加速していきキャリアカーをジャンプ台にして高井戸駅に向かって飛んだ。


運転手は俺らが恐怖で叫ぶのをよそにのんきにハレルヤを熱唱しながらホームに一度着地して急加速、あわや両方向から来た電車や待っていたお客さんとぶつかりそうになりながらも、その勢いのまま駅を飛び出して反対側で渋滞につかまっていた5台の観光バスのうちの最後尾の屋根に着地した。


後ろを振り返るとどうやら同じように飛んできたはいいものの、電車に道(?)をふさがれてそのまま突っ込んでしまったようだ。


「追手は来ないよし!このまま進むぞ!」


タクシーは5台のバスの上を突っ走り、交差点付近で道路に着地して走った。


―――追跡者視点―――


「畜生!」


「兄貴、すいやせん!ドジ踏みました!」


「心配するな、俺もだ。しかし、頼みの綱のもう一台は情けないことにキャリアカーの下で警護車に足止めを喰らってやがる。」


「それよりも、あのガキ鵺の咆哮が使えるとかいったい何者でしょうか?」


するとポリ公がドアをこじ開けてきやがった


「お前ら!早く降りろ!!」


「ハナセ!セイフノイヌメ!!」


「どこでそんな言葉を覚えたんだこの亜人女は・・・。」


俺たちは、複数の警察局の人間に囲まれて電車に突き刺さった車から引きずり降ろされた。


だが、俺たちにはまだ奥の手がある。


「おとなしくしろ!」


「フッ。」


「何がおかしい!?」


「計画甲がダメなら乙を発動するまでさ。」


「なにを言ってる貴様!?」


「今にわかるさ。」

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