第弐拾肆話:奇襲(主人公視点)

「暗闇の世界での会話を聞く限りどうやら陽動は成功しているようだな。今なら本物の俺が出てきても大丈夫そうだ。」


刀がぶつかる音と影が着られ消滅する感触、ぬらりひょんの痛がる声で大体の戦局が分かる。つくづく便利な能力だよこれは・・・内務大臣の麻生さんが使ってたのも頷ける。


だが、念には念を入れるために長い手を出現するイメージで真っ黒な無数の手を周囲に出現させた。暗闇なのに手の輪郭はちゃんと見えているのはこの特殊魔技のおかげなのか。


「よし、いくか。」


俺は無数の手をぬらりひょんめがけてつかみに行くように脳内で指示した。


すると指示通りにつかんだようで、ぬらりひょんの悲鳴が聞こえたと同時にナターシャの『痛っ!』という声が聞こえた。どうやらぬらりひょんが驚いて彼女を手放したようだ。


「いまだ!」


俺は高くジャンプするイメージで地面から飛び出て、ぬらりひょんにつかまっていた彼女を御姫様抱っこで救出した。


「助けに来ましたよ。お嬢さん。」


「ふぇ?!す、スパシーバ(ありがとう)。」


赤面している彼女を優しく降ろして、俺は高まる高揚感とぬらりひょんに対する憎悪をつつ、奴に近づいていった。


「く、来るな!!ひ、ひれふモガッ!!」


俺は、奴の口を黒い手で押さえてしゃべれないようにしてやった。


「同じ手が二度も通用するかよ。」


そう言いつつ俺は奴の体内に赤く光る玉のような部分めがけて体ごと斜めに切った。


途端に奴は悲鳴を上げながら崩れ落ちた。どうやらさっき切ったのは核だったようだ。


俺は切ったと同時に奴にまとわりついていた黒い手を消してやった。


「ハッ、ハアッ・・・ば、バカな・・・この私がこんな小僧ごときに!!!」


聞きたかった捨て台詞を吐きながら奴は後ろ向きに倒れた。


周囲を見渡すと影は全員いなくなっていた。


奴・・・いや、ぬらりひょん。恐ろしい敵だった。


「吾!」「吾さん!無事でよかったわ!!」


頭が冷静になり始めた頃、二人が声をかけてきてくれた。


「やったよ。父さん、ナターシャさん!俺、ぬらりひょんを倒せた!!」


「ああ、さすがは俺の息子だ!」


「ええ、もうだめかと思ったわ。」


「さ、ぬらりひょんの解体と行きますか。」


ぬらりひょんの解体を終えて残骸が地面に吸収されていったその時、地響きが起こり何事かとあたりを見回すと、入口と反対方向から岩の柱がせり出してきた。


その上に乗っていたのは赤い液体が入った瓶だった。


「あれってもしかして!?」


「ああ、もしかしなくても神秘薬だ!!」


俺と父さんは足早に神秘薬のもとへ駆けていった。


「ウゴクナ!」


ナターシャさんの叫ぶ声と銃を構える音がして俺は立ち止りとっさに振り向いた。


そこには険しい顔で二丁の拳銃を両手で構えている彼女が見えた。

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