第弐拾弐話:後世世界の麻生閣下

暗闇の中でふいに声をかけられたので驚いて振り向くと、そこには前世の某空港にてゴスロリ漫画を手に取ったことで有名な人物がいた。


「麻生・・・さん?」


「おうよ、俺は大日本帝国内務省内務大臣の麻生影狼(あそうかげろう)様だ。・・・とは言っても俺は単なるデコイだがな。」


「そうなん・・・ですか?」


「あたりめーだろ?大臣様がこんなところで油売ってちゃ陛下や臣民に申し訳が立たん。本物は執務室でちゃんと仕事してるぜ。というか、ここにいるってことは俺と同じ『暗黒導師』持ちか?」


「え、ええ・・・まあ。」


下手に弁解するより認めた方がいい気がしたので頷いた。


「なるほどな。小僧、一個だけ忠告してやる。この『暗黒導師』は大人でも極めて扱いが難しい代物だ。」


「・・・・・。」


「こいつは、文字通り影や闇を操る魔技だ。むろん自分や他人の心の闇をも操ることができる。だが、心の闇が強ければ強いほどこの魔技は暴走しやすい。今後は気を付けて発動しろよ。」


「わかりました。」


「ところでお前さん、ここに何しに来た?」


「3級迷宮に出現したぬらりひょんの攻撃をかわすためにこの空間に潜ったのです。奴にも固有魔技があるのですが、視界にいないと一度くらってもこの通り、自由に動けるんです・・・って釈迦に説法ですよね。」


「なんだと・・・3級迷宮でぬらりひょん!?お前さん・・・今、何階層で戦っていた?」


「え?一階層の中間あたりだったと思いますけど。たしかにやばいってことは子供の僕でもわかりますけど。」


「ヤバいなんて状態じゃねえ・・・国家非常事態宣言一歩前だぞ!」


どうやら荻窪迷宮は国家すら脅かしかねない存在と化したらしい。これは御国のためにも早急に最下層まで行く必要がありそうだ。


「そこまで、魔素濃度が濃くなっているってことは最下層の10階層は恐らく・・・ぬらりひょんの倒し方は分かっているのか?」


しかし、前世から思いを寄せていた幼馴染も大事だ。ぬらりひょんを倒せばほぼ確実に神秘薬が出現する。うーん・・・。


「おい!」


「あ、ハイ!ぬらりひょんの倒し方は分かっています。奴は恐らく気配を察知して戦う戦法を得意としています。」


「そうだ。」


「で、この空間から奇襲を仕掛ければ何とかなるはずです。」


「それだけわかっていれば十分だ!あとは、どうやって敵を見つけるかは目をつぶりどこに敵かそうでないか知りたいと念じれば赤い光が見える。それが敵だ!ちなみにそうでない方は青白く光る。」


「わかりました。麻生さんはどこへ?」


「俺はこの能力を使って最下層まで一気に行く、理由は聞くな。」


俺は頷くと麻生さんはフッっと笑って闇へと消えていった。


俺は言われた通りに目を瞑って光を探した。


すると、斜め上方向に赤い光が見えた。


恐らく念じればある程度の事なら何でもできるなのかな。


俺はそう思って自分の分身を粘土で作るイメージをした。


すると、本当に自分そっくりの分身ができた。


「・・・なるほど、これは奇襲に仕えそうだな。」


そう思いながら俺はほくそ笑んだ。

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