第漆話:3歳の妹がこんなに可愛いわけがない

俺が生まれてから7年という年数があっという間に過ぎ去った。


俺は、明日から小学校に入学するため、母親に制服の乱れがないかチェックしてもらっていた。


「いよいよ、吾も小学生ね。」


「お兄ちゃん!制服カッコイイよ!」


傍で恋美という3歳になる俺の妹がはしゃいでいた。


「ありがとう、だけどお兄ちゃんじゃなくていつもの兄さん呼びで良いよ恋美。俺たち見た目7歳と3歳だけど、精神的には良い年した大人なんだから。」


そう、妹もまた前世と同じ人物の記憶を持って生まれてきたのだ。


きっかけは、恋美の好きだった魔法少女物が新番組としてやっていた時に彼女が「懐かしいなぁ」や「この世界では私も本物の魔法少女に・・・」などとつぶやいたことだ。


両親は、俺や自分自身という前例もあり、恐る恐る聞いてみたところ目を白黒させた後に泣きながら「また、家族として暮らせるのね。」と言って抱き着いた。


「うう、それは・・・そうだけどさー兄さん。・・・お兄ちゃん呼び、だめ?」


やめろ!その整った可愛らしい容姿で上目遣いすなー!


「わ、わかったよ。お兄ちゃんでもいいよ。」


顔から火が出るほど熱い。


「わーい!ありがとー、お兄ちゃん!!」


恋美はそう言いながら俺に抱き着いた。


お日様の良い香りと女の子のぬくもりを感じて飛び跳ねるほど嬉しいが・・・。


俺は決してロリコンではない!フェミニストだ!


・・・ってあれ?妹よ、ほんのりと赤くなっていた耳がさらに赤くなっていませんか?


「ヤバイ、テンション上がってたみたい・・・は、恥ずかしい。」


言わんこっちゃねえ。


「でもなんか変な気分だな。30手前の引きこもり糞ニートだった俺が、同一人物として小学校に正式に入学できるなんて、元高校生探偵の気持ちがわかった気がするぜ。」


「それは母さんも父さんも一緒よ。この世界では国民学校や女学校だったけど、クラスメイトはほとんど一緒だったから、すぐに打ち解けられたわ。」


「父さんも?」


「ええ。ただ一つだけ違うのは、徴兵制があったから前世で入学した大学には入学せずに3~4年くらい陸軍で働いたことがあるって言っていたわね。」


「そうなの?」


「ええ、その後は冒険者になるか陸軍軍人として働くか問われたときに真っ先に冒険者を選んだらしいわ。」


「ファンタジー好きな父さんらしいや。」


俺を含めた3人は笑った。家族のことでこんなに笑える日が来るなんて夢にも思わなかったなー。


「坊ちゃま、妹様、奥さん。準備はいいですか?」


玄関の扉の向こうから使用人の声が聞こえた。


「ハーイ!」


「いつでもいいわよ。」


「わ、私も大丈夫よ。」


玄関のドアが開くと、前世では俺が3歳の頃に手放した高級リムジンが目の前に止まっていて、その前にスーツをしっかり着こんだ父さんが立っていた。そばにはミーシャとメーニャもいた。


ミーシャとメーニャは父さん曰く猫又とネコショウというれっきとした妖怪らしい。


その証拠にネコショウのミーシャは尻尾が3本あり、メーニャは尻尾が2本ある。


だが、この世界では話の分かる亜人や妖怪、魔物、と言った類のものは一部の国を除いてその国に籍を入れて普通の人間としての生活を送ることができるらしい。


わが国でもそう言った者たちも国籍を取得すれば日本人としてふるまうことができるそうだ。


つまり、ミーシャとメーニャはれっきとした日本国民と言うことになる。


「可愛い!坊ちゃますごく可愛いにゃ!!」


基本的に人型になれる猫獣人や猫妖怪は動きやすさ重視のため若い女性の場合、基本的に短いスカートを好んで履く、短ければ短いほど魅力的な女性という証にもなるそうだ。メーニャもまた例外ではない。


今日は一段と張り切っているので、ジャンプするたびに何がとは言わないが見えるので目のやり場に困る。


「め、メーニャも今日は一段と可愛いよ。」


「はにゃー!嬉しいにゃー!」


「奥様もとってもお似合いですニャ。」


ミーシャは、メーニャより一回り年上なので割と落ち着いた格好をしている。


「ありがとね。ミーシャ。」


「早くしてくれ、三人とも!学校に遅れるぞ。」


「ハイハイ。」


「今行くよ、父さん!」


助手席でせかす父さんに言われて、リムジンに乗り込んだ俺と母さん、それと先ほどから恥ずかしさで勝手に悶絶している妹は、使用人が運転するリムジンで俺がこれから6年間通う学校へと向かった。


「妹様はどうなされたのですか?」


「ああ、この子ったら恥ずかしがり屋でお兄ちゃんより緊張してるみたい。」


「さようでございますか。いやはや、可愛らしいことで。」


「娘はやらんぞ?」


「気が早すぎるにも程があります旦那様。それに、私は年上が好きでございます。」


「ならばよし!」


父の暴走に半ば呆れつつ車から景色を見ていた。

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