第10話 退院

そして退院の日を迎えた。


ナースステーションに立ち寄った時、沢村さんもそこにいた。


今日は一人での退院だ。


「お世話になりました。ありがとうございました」


「理想の旦那さんが帰ってしまうのねー」とおちゃらけの田中さんが泣きまねをした。


みんな笑っていた。


「理想の旦那さん見つけてくださいね」と言い、エレベーターに乗り込んだ。


沢村さんと少しだけ視線が合った。


目が話しかけた。


待っていますと。


今日は贅沢だけれどタクシーで家に帰る。


平日は二車線のうちの左車線にトラックがよく停まっている。


家までは約三十分。


バス以外誰かの運転で家に向かうなんてことはほとんどないので新鮮な感じがした。


桜通りに入り市役所前を阪急茨木市駅方面に左折する。


帰って来たという感じがする。


タクシーに料金を払いピンポンを押した。


「シンおかえり」


「ただいま」


コハルの笑顔がまぶしい。


コハルと抱き合った。


「コハルいろいろとありがとう。ほんまにお前はええ嫁さんや」


「シン、当たり前」笑


「ほんまにありがとう」「シン。帰って来てくれてうれしい」


お帰りのキスをした。


「お迎えに行けなくてごめんね」


「いやいや。 コハルにはコハルの用事があるんやから優先したらええよ」


「シン、ありがとう」


「詩はお試し保育やったな」


「うん。私がおらんようになるとは思っていなかったみたいやけど

なんとかバイバイって手を振ってくれたら、帰ってこれたんやで。

私もこんなに切ないとは思わなかったんやわ。笑

でもまあ第一段階はオッケーということで、さあシン。私ら二人きりやで」


「うん。コハルが欲しいよ」


「私もシンが欲しくて欲しくてたまりません」


「一緒にシャワー浴びよか」


「うん」


お互いに洗い合った。


「シンの手がいやらしい感じやね」


「うん、一か月近く触ってないんやから」


「シンやっぱりちょっとやせたな」


「そうやな。お腹のお肉が減った気がするな」


「そうやな。 近くで確かめてみよう」


「ハウっ。 コハルいきなりか」


「んぐ。ングング。 シン。素敵や」


イカされそうになったけれど何とかこらえて部屋に行くことにした。


「コハル素っ裸で移動するのも何か恥ずかしい感じがするな」


「そうやな。 しかもシンが下から付いて来るってどういうことなんやろか」


「それはやっぱり見たいからに決まってるやんか。コハルちょっと止まって」


「シンいやん」


「でへへへへ。片足を一段上げてみて」


「こんな感じ?」


「うんそうそう。いい感じやで」


「シン、いやらしい」


「そんな俺が好きなくせに」笑


「シン、好きやで。はよう上がろう」


「うん、でものぼるのきついわ」


「長い事運動してないからね」


「今日は久しぶりの運動やな」


「シン頑張ってね」


部屋に入るともうすぐに抱き着いてきた。


「シン、好き好き。シン。たまってるやろ」


「そうやな。笑 ものすごくたまってるわ」


「うん」


「でもコハルもたまってるやろ」


「うん。たまりまくりです。シン早く早く」


「うん」


コハルは入院期間中のうっ憤を晴らすかのように燃え上がった。


「シン、素敵や。またイク。 ああっ」コハルの声を聴いて僕も脳が煮えた。


「コハル素晴らしいよ」結局二回も出してしまった。


「シンすごかった」


「うん。コハルを久しぶりに堪能したわ。おいしいなお前は」


「シンもおいしいよ」


チュッ。 「詩はいつ迎えに行くんや?」


「あと一時間くらいしてからやねん」


「そうかもうそろそろ着替えとかんとあかんなぁ」


「そうやね」チュッ。


「シン、夜もしよう」「うん」「一杯しよう」「うん」


お試し保育から帰って来た詩はなんだか顔つきが変わっていた。


「とーしゃん、ただいま。 詩ね、幼稚園に行ってきたよ」


「そうか。どうやった」「楽しかったよ。 お友達もできてん」


「そうか。良かったなぁ。 さあとうさん抱っこしたげるで」


「とーしゃんチューは?」


「おっ。そうやな。詩にチュー」 「きゃははは」「コチョバイチューや」


「きゃぁあああ」「詩、笑いすぎや」笑


詩も少しずつ成長している。 うれしい限りだ。


僕はどうなのだろう・・・。

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