【SS】人間とは皆、個性の塊である

生きてるの、向いてないんです。真面目に。


沈鬱な表情を浮かべているものだから何かと思えば案の定結構重ための相談だった。いやまぁ分かるけれども。

繊細なこの子には、普通のハードルが鬼のように高い現代は生きにくかろう。


入草 緩可はそんな事を思いつつ、それでもこうして相談に来てくれたのだからと真面目に聞く姿勢を取った。


「うんうん、そっか。ちなみになんで向いてないなーって思ったか、教えてくれたりする?」

「……なにもできないから」

「というと」

「テストの結果はクラスでも学年でも平均かちょっと下だし、一つ一つを見ると低いし。努力だって、やれたなって思ってもみんなと比べたらそれは全然だし、興味のないことはひとつも覚えられないし。……それに、わたしがいるとみんな困っちゃうから。素を出しても出さなくてもドン引きされるんです、もうどうすればいいのかなんて分かりません」

「なるほどねぇ…」


相談者の彼女は、コミュニケーションを取ることが第の苦手な子だ。苦手を克服しようと頑張ったけれど空回りして、余計に苦しくなってしまったんだろう。

繊細で優しい子だ。自分のせいで他人に嫌な思いをさせたくないと思うが故に自分に厳しくなりすぎて、それで余計に苦しんでしまう。


(考え過ぎも一つ原因としてあるんだろうけど、今その事を言ったとしても何の解決にもならんしなぁ。逆に追い詰めることになる)


「緩可さんは、…」

「ん?なに?」

「…緩可さんは、わたしと話していてどう思いますか?楽しくはない、と思うんですけど」

「まぁ、君の相談内容は結構重たいからね。面白がってちゃダメでしょうよ。でも、別に辛いわけでもないよ。色んな人がいてこその人間なんだから、気にしすぎるのも良くないしね」

「色んな人がいてこその、人間…」

「そう。君は他の人よりずーっと優しくて、優しすぎるが故に悩みすぎちゃう個性を持った人なんだよ。すごく苦しいと思うけど、一旦自分のことを認めてあげてみてもいいのかもしれないよ」

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短編集 日向簪ーひなたさんー @hinataSan3

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