水中

…状況はかなりマズい。

ただ間に入っただけなら出口探せばなんとかなる。

ただ、河童が一緒なら話は別だ。

ここに来たアイツらは水を得た魚、目の前をビュンビュン泳ぎ回っている。


『どうすっか、ゴロの雷で…いや、俺も食らうことになるし、姐さんがなぁ。』


そしてもう一つ、こちらが不利になっている要因がある。

それは姐さんがおかしくなった。

ここに入った途端目を見開き、とても怖がった様子になったのだ。

今は銃で自殺しようとしたので取り上げて脇に抱えている。

パスこと鈴を持っていないからかもしれないので、姐さんの上着に俺の鈴を突っ込んでおく。


『アキラ、深海には逃げない方がいいと思うぞ。』

『姐さんが耐えられないからか?』

『オイラもよく分からない。けどここでこの状態なんだ、アッチに行ったらどうなるか分からないぞ。』

『じゃあさっさと陸に逃げるぞ!』


光が差し込む陸に向かって泳ぎ始めるが、当然のように妨害が入る。

河童たちだ。

こっちが動き出したのを確認すると、突撃してきたり水流、水圧を利用して攻撃してくる。

突撃隊はゴロや火で追い返せるが、それ以外の攻撃に対して返し方が無い。


『クロ、一式で水圧消せるか?』

『水中じゃあ威力弱まるし、そろそろガス欠になるから無理だ!』


確かに水の中じゃ火なんて使い物にならないだろうな。


『そろそろ息がマズいんだがってうぉ!』


突然、下から水がせり上がり出口まで流し飛ばされる。

水が来た方向を見るが、そこには誰もいないし誰もいない。


『一体誰が…』

『アキラ、上!』

『しまっ、』


クロからの注意に上を向くと、河童の一匹が上で待ち伏せしていた。

その河童の水流をもろにくらい、目がまわる。

しかも頭が回されたせいで思考が安定しない。

なんとかして光が差し込む方向に向かって泳ぎ始めようとするが、真っ直ぐ行けない。


『アキラ、おい!聞こえるか!もう少しで陸だ!あ、もうちょい右!』


クロの声も聞こえるが、なんて言っているのかは分からない。

息ももうだめだ。

心の中でクロ、姐さん、ゴロに謝っていると腰に挿していた拳銃が抜かれる感覚。

そして、一度食らったことのある衝撃が俺を襲い、意識を失った。

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