解放軍
「一旦離れるぞ!」
『分かってる!』
河童の腕を噛みちぎった後、姐さんの方向に下がる。
噛みちぎられた河童は腕を押さえながら陸に上がり、俺たちを追ってくる。
「姐さんヘルプ!」
「了解!」
走っていると銃声、そして電気が流れるような音が聞こえた。
振り返れば追ってきていた河童が痙攣しながら倒れている。
「助かった…」
『状況はいいと言えないけどな。』
「なん…なるほど、これはマズイかもな。」
仲間を傷つけたからか、溜まっていた河童たちが一斉にこちらを見ていた。
その目は確実に怒りを、憎しみを宿している。
俺と姐さんは少しずつ後ろに下がる。
同時に河童たちは少しずつ迫ってくる。
「一応聞くけど、河童のランクってなんすか?」
「黄信…黄色だけど、この数は…」
『明らかにそれよりヤバそうだぞ。』
多勢に無勢とはこのことか。
いつ襲われても良いように火を出しておく。
姐さんとゴロも警戒して放電している。
…互いに動けない状態が続く。
「あれ、思ったより来るの早いな。」
突如、後ろから男らしき声が聞こえた。
振り返ると見たことのある黒装束がそこに立っている。
「国の機関は意外と優秀だな〜。」
黒装束の男は手を二回叩く。
すると辺りに霧が立ち込めてくる。
「あなた、もしかしてアビス?」
「アビス?その呼び方はやめてくれよ、俺たちは解放軍だ。」
「…じゃあ解放軍様に聞く、俺を深海に落としたのはアンタか?」
「落とした?」
男は少し考えるような仕草をすると、首を横に振りにやける。
「いや、俺じゃないね。」
「そうかよ…クロ、一式!」
『火顎!』
「ゴロちゃん!」
俺とクロ、姐さんは先手必勝で攻撃をする。
だが、男は避ける素振りを見せないでいる。
「おぉ、食らったらヤバそうだな。」
火が男に噛み付く瞬間、雷が降り注ぐ瞬間、鈴の音が聞こえた。
火と雷が消え、白かった霧が黒く変化する。
俺はあの黒色を見たことがある。
あれは…入り口だ。
「ゲートは水であればなんでもいい…霧も元は水なんだよ。」
霧は俺たちの足元にも、河童たちの足元にも漂っている。
入り口に入った後、最初に現れるのは間。
深海に行く、陸に戻るにはその間を泳がないといけない。
「じゃ、後は頼んだよ河童たち。」
「まずい、早く逃げっ、」
言い切る前に視点は下がり、足は冷たい水が纏わりつく感覚に襲われた。
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