出会い
トントンと、肩を叩かれ意識が浮上する。
目を開けると、そこは暗い部屋で俺は椅子に拘束されていた。
「ここ、どこだ?」
クロの憑依も解けているようで、完全に一人だ。
辺りを見渡すと、うっすら見える箱や細長い像。
物置部屋のようだ。
「誰かいるのか?」
「いるわよ。」
返事と共に部屋の電気が付く。
目の前にはさっきの落雷女がいた。
「あ、落雷女。」
「初めてそんな呼ばれ方された。」
他には誰もいないようだ。
なぜここに俺を運んだのか聞くと、どうやら質問をするためらしい。
「じゃあまず最初に、君の名前は?」
「源田ゴンザブロウ。」
「明らかに嘘よね?」
「嘘じゃないかもしれないぞ。」
「…うん、嘘ね。あのカメラ見える?」
落雷女は自分の後ろを指差す。
そこにはよくあるカメラがあり、RECと表示されている。
「こっちには心を読む妖がいるから嘘は吐くだけ損よ。」
「読心…覚とかいう妖怪だっけ?」
確か某弾幕ゲーにそんな妖怪いたよな。
とにかく、今のがブラフだったとしても嘘はやめといた方が良さそうだ。
「華口アキラだ、今度は嘘じゃない。」
「…そうみたいね。あ、私は
神成ヒビキ…なんかイメージ通りの名前だな。
「次に、君とあの猫又はどこで会ったの?」
「深海で助けてもらったんだ。」
「…本当に深海で会ったの?」
「あぁ、嘘かどうか分かるんだろ?仲間に聞いてみてくれよ。」
ヒビキは右耳を押さえて静かになる。
よく見るとイヤホンを着けており、それで会話しているらしい。
小さく分かったというと、ヒビキは小さなため息をした後こちらを見据える。
「本当なのね。」
「なんか変か?」
「えぇ、とてつもなく変よ。」
また小さなため息をすると懐からいくつかの写真を見せてくる。
その写真はどれも死体を撮った写真だった。
生前のままの形もあれば、溶けたりバラバラだったり、獣に食い荒らされた跡があるのも見えた。
「裏世界…通称深海に行ける人間はほとんどいないし、行けたとしても生きて帰って来れる確率は限りなく0%…昔あった神隠し事件を知っているわよね?あの消えた人や物は何一つ帰って来ていない、なぜかわかる?全部深海に行ったからよ。全部深海に行って、帰れる方法が分からなくて、殆どが妖怪たちに殺されたの。」
「…つまり、俺が帰り方を知っていて、さら五体満足で帰ってきたから怪しさしかないと?」
「しかもあっちの妖怪も連れてきてるからね。君、アビスの一人じゃない?」
「アビス?」
なんだアビスって?
あの黒装束のやつのことか?
不思議に思っていると、ヒビキはあの雷を操る妖怪を呼び出して威嚇をする。
「早く答えて。」
「…アビスってやつは知らない、けどそれっぽいやつには会った。黒装束で、俺を深海に沈めたやつだ。」
「そう…嘘は吐いてないのね。」
ヒビキはそういうと、俺の後ろに周って拘束器具を外す。
「君は敵でも味方でもない、私はそう判断したからこれは外してあげる。」
「あ、ありがとう。」
「でも、変な動きをした瞬間に感電させるわよ。」
「はーい。なぁ、クロはどこにいるんだ?」
「こっちよ。」
案内されて物置部屋から出ると、そこは暗いゲームセンターだった。
他には小さなイートインスペースや、ボウリングのピンの像があった。
「ここって、」
「もう潰れたボウリング場。ゲームとかバーもあるし、開いてたころは結構儲かってたみたいよ。」
階段を登っていくと、ボウリングでよく聞くピンが倒れる音が聞こえる。
…クロの野郎、ヒビキの仲間と仲良くボウリングやってないよな?
二階分登り扉を開けると、
「も〜、ストライク取れない〜!」
「にゃはは!お前下手だな!」
「もうちょい左に寄ったら真っ直ぐ転がるぞ。」
「フブキ、頑張りぃ。」
クロとフブキ、知らない男女がボウリングを楽しんでいた。
「…おいこらクロ。」
「お、アキラ!お前も混ざるか?」
「テメェ、俺が尋問されてるってのに何楽しくやってんだ?」
「え、尋問されてたのか?」
「暗ーい部屋の中でされてたよ…」
クロの顔を掴んで捏ねくり回す。
後ろではヒビキが申し訳なさそうな顔をしている。
「いやー、君がアビスじゃないのは分かってたんだけど、念のためにあれやったのよ。」
「じゃあなんだ、尋問の必要は無かったと?」
「うん。」
その言葉を聞いて肩を落とす。
なんだよ、あんな怖がる必要無かったじゃん。
クロは俺の手から抜け出すと、スコアボードがある方向を指差す。
「アキラ、オイラ一位だ!」
「おー、良かったな。」
コイツどうやってボール投げてんだ?
クロが喜んでいると、さっきアドバイスしていた男が近寄ってきた。
かなり背が高く、和っぽい服を身に纏っている。
「お前が華口アキラか。」
「…さっき言ってた覚妖怪?」
「違う、お前もボール持ってこい。」
「ボールって、
「あぁ、ボウリングをやる奴に悪い輩はいない。」
「何その基準。」
こちらの意見には耳を傾けずボールを渡してきたので、渋々ゲームに参加する。
名前を打ち込んで順番を待っていると、フブキがこちらを睨んできた。
「負けませんからね。」
「なんでそんなに敵対心出してんだよ。」
「フブキはアンタに逃げられたから悔しいんよ。」
着物をきた女が話しかけてくる。
ん?
この話し方は…
「セツか?」
「他にこんな喋り方のべっぴんさん、見たことあるん?」
「ナイデスネー。」
セツはかなりの自信家みたいだ。
そんな会話をしていると俺の番が来た。
ボールを軽く構えて流れるように転がす。
ボールは真ん中から少し右にそれ、7ピン倒れた。
「流石に初っ端ストライクは無理か。」
また同じように、落ち着いてボールを投げる。
今度は狙ったところに真っ直ぐ行き、3ピン全て倒した。
「よし、スペア〜♪」
「アキラ、意外と上手いな!」
「一言余計だ。」
後ろに下がると、次はあの男の番だった。
男はしっかりとボールを構えて投げる体制になる。
そこまでは完璧だった。
そう、そこまでは。
「ふん!」
「あぶね!」
男がボールを後ろに振り上げた瞬間、ボールがこっちに飛んできた。
「キャプテン、私たちの中で一番ボーリング下手なのよ。」
「下手ってレベルじゃないだろ…」
その後もゲームは続き、フブキは普通、セツとヒビキはかなり強く、結果として6人中3位だった。
「華口アキラ、お前ボーリング上手いな。」
「なんか、アンタに褒められても嬉しくないな。」
この男のボールで俺何回も死にかけたぞ。
だが、一応敵として見られることはなくなったようだ。
「…私はまだ認めてませんからね。」
「俺そんな恨まれることしたか?」
「こらフブキ、最初の襲撃は完全にこっちの早とちりだったんだから、目の敵にしないの。」
「先輩…確かにそうですけど…」
「待って、早とちりてどゆこと?」
話を聞くと、どうやら俺が最初に陸に戻った時仲間が現場を見ていたらしく、尋問の時に聞かれたアビスだと間違われたらしい。
それで見敵必殺の容量で俺を倒そうとしたらしい。
「その件に関しては俺から謝ろう、すまなかった。」
「いや、別にいいよ…多分追い出されるけど。」
「そういえば、玄関ぶっ壊れてたな。」
なんならアパート全体が氷漬けになってたからな。
「そうか、ならここに住むか?」
「ここに?」
「あぁ、その代わりウチのチームに入ってもらうことになるが。」
男はどこからか看板を引っ張り出す。
看板には掃除屋『百鬼』と書いてる。
「俺たちはある変わった掃除をしているんだ。正直な話、華口アキラのスピードはこの中でもトップクラスで欲しい人材だ。俺たちの仲間になってくれないか?」
「…給料でるの?」
「多くはないが出るぞ。」
給料が出て住も確保されている。
なかなかの好条件じゃないかこれ?
「じゃあ、入るよ。家ないだろうし、また似たような目に会いたくないからな。」
「オイラ給料じゃなくて焼き鳥食いたい!」
クロの食欲に俺と男は少し笑いながら握手をした。
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