落雷と獣

轟音と共に落ちてきた光は牛鬼に降り注ぎ、落下地点とその辺りを燃やし尽くす。

落雷だ。

急に台風が来たと思うと、雷がピンポイントで落ちてきた。


「…俺ってもしや豪運?」

「そんな訳ないでしょ。」


雪女はフブキに戻っている。


「あの雷はうちの先輩です。」

「…天気操る妖怪なんているの?」

「ちょっと違うかな〜。」


上から声が聞こえたので見てみると、屋根に1人の女性が立っていた。

方には妖怪らしき生物が乗っている。


「え、イー◯イ?」

「ポ◯モンじゃないわよ。」

『あれって雷獣か?』

「雷獣?サン◯ースみたいなもんか。」


そんな会話をしていると、牛鬼がまた動き出した。

さっきの落雷を喰らってもまだ倒れないようだ。

すぐに建物を登って落雷女の横に行く。


「アンタなら牛鬼倒せるのか?」

「できなくはないけど、1人じゃちょっとキツイのよね。」

「先輩、私も手伝います。」


フブキは俺の腕から抜けてもう一度憑依をする。


「お願いね、猫又の君も手伝ってくれる?」

「俺たち戦闘経験ないぞ。」

「けど、私たちより足は早いでしょ。ところで君、釣り好き?特にルアー使ったやつ。」


急な質問に少し戸惑うと、首根っこを掴まれる。

ここで、俺の頭に最悪の未来がよぎった。


「…もしかして、ルアー=俺?」

「うん、題してドキドキ、人間ルアー釣り作戦!」

「『微妙にダサいし古いな。』」

「あ、それ言うたら…」

「…ふふ、」


落雷女は少し笑うと、俺を屋根から蹴落とした。

いきなりのことに驚きながらも猫の特性を活かして着地する。


「危ないだろ!」

『そうだそうだ!』

「レディに古いって言った罰よ。」


女は銃を取り出しこちら、正確には俺の足元に向かって発砲する。

弾丸が地面に当たると、バチっと電気が流れた音が聞こえた。

嫌な予感がし、着弾地点から逃げる。

すると、さっきいた場所に雷が落ちてくる。


「待って、牛鬼狙えよ!なんで俺に当てようとしてんだよ!」

『牛鬼がこっちに突っ込んでくるぞ!』

「とにかく走るぞ!」


銃弾、落雷、牛鬼から逃げる。

正直な話、牛鬼に追いつかれることはない。

だが落雷が厄介すぎる。

しかもセツがちょいちょい氷壁で道塞いでくる。


「俺いつまでこうしてればいいんだよ!」

「「牛鬼が倒れるまで。」」

「『じゃあ牛鬼狙えよ!』」


これじゃあキリがないので、また建物に登って安置に行く。

牛鬼も同じ建物に突っ込んできて壊そうとしてくるが暫くは大丈夫だろう。

落雷女とセツもこっちに対しての攻撃と妨害をやめた。


「いい加減あっち狙ってくれません?」

「いや〜、ここまで避けれるとは思ってなかったから、つい楽しくて。」

「ほんと、素早いなぁ。」

『牛鬼よりこの2人の方がヤバいんじゃないのか?』

「かもな。」

「でも安心して。もう終わるから。」


落雷女がそういうと、地面に一瞬光った。


「これは陣、ただ闇雲に撃ってた訳じゃないのよ。」


落雷女はサムズアップをすると、それをゆっくり逆さにしてサムズダウンに変える。

するともう一度強い光が発生し、少し遅れて轟音が鳴り響く。


雷神舞踊トールダンス…なんちゃって。」

『…これは流石の牛鬼も死んだだろ。』

「あぁ…すっごいな。」

「ゆっくりしとる暇はないみたいやなぁ。」


耳を澄ますと人の声や消防車の音が聞こえる。

雷が落ちたんだ、騒ぎになるのは当たり前だろう。

急いでそこから、特にあの2人から逃げようとすると後頭部に冷たく硬い何かが当たる。


「はい逃げなーい、一緒に来てくれる?」

『アキラ、流石のオイラもゼロ距離の射撃は避けられないぞ。』

「…痛いことしない?」

「大人しくしてるならね。」

「分かった…逃げないよ。」

「そう、じゃあお休み。」


バンッと銃声が鳴り、頭に電気が走る感覚を味わうと同時に俺の意識は途切れた。

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