紹介

「じゃあ、改めて自己紹介しましょうか。」


ヒビキは人数+1個の飲み物を持ってきてそう言う。


「私は神成ヒビキ、この子はゴロちゃん。」


ヒビキの肩に1匹の獣の姿をした妖怪が現れる。

確かクロが雷獣とか言ってたやつだ。


「ゴロちゃんって、やっぱコイツセンスないな。」

「皮剥いで三味線にしてやろうか。」


クロがビビって俺の後ろに回り込む。

突き飛ばされたりしたし、センスについては何も喋らない方が良さそうだ。


峰崎みねざきフブキです。こっちはセツ。」

「どうもぉ。」


次はあの雪女組だ。

フブキはまだ逃げられたことを根に持っているらしく、軽く睨んでくる。


「…流石にそろそろ許してくんない?」

「別に、怒っている訳ではないので!」

「恨んではいるんだろ?」

「はい。」

「女ってめんどくさいんだな。」


クロがフブキのことを見ながらそう呟く。

あ、標的がクロに移った。


「クロ、一回黙っとけ。それ以上怒らせたら本当に皮剥ぎ取られるぞ。」

「お、おう…」


次に口を開いたのはキャプテンと言われていた男だ。


烏鷺うろヤマト、人と烏天狗の半人半妖ハーフだ。」

「んでもって、百鬼のキャプテン。」


ヒビキがそう付け足す。


「ハーフって?」

「そのままの意味だ。半分人で、半分妖怪。」


半分妖怪、見た目は他の人となんら変わらない。

本当に半分妖怪なのか疑っていると、ヤマトの背中から黒い何かが生えてきた。

それは黒く、とても美しい翼だった。


「これでも疑うか?」

「いや、もう大丈夫です。」


これを見たら疑いようがないな。

俺も自己紹介しようとすると、まだメンバーがいるらしく止められた。

一体どんな人なのか考えていると扉が開く。

入ってきたのは見た目がゴツいスキンヘッドの外国人だった。


「…ギャング?」

「ちょっと、アターシのどこがそんな野蛮人なのよ!」


おっさんは少しぶりっ子の様な姿勢で反論してくる。

コイツもしやオカマか?


「リーちゃん遅いわよ。」

「道混んでたんだから仕方ないじゃないのよ!」


うん、間違いなくオカマだな。

ヒビキと話していると、不意にこちらに目を向けてきた。


「あら、あなたが源田ゴンザブロウこと華口アキラくん?」

「あ、はい…」

「いやだ、カメラ越しで見た時よりも良い男じゃな〜い。」


なんかロックオンされたんだが。

貞操の危機を感じたのでキャプテンヤマトの後ろに回る。

…てか待て、なんでその偽名知ってんだ?


「あら、怖がれちゃった。」

「…待て、カメラ越しってアンタが覚妖怪なのか?」

「えぇ、ただ私は人よ。」


オカマは椅子に座り、飲み物を飲んでから自己紹介をする。


「私はリーガル、リーガル=モルトグレーン。よろしくね、猫の坊やcat boy♫」

「うす…」


キャットボーイって、俺はパジャマ◯クかよ。

そう心の中で愚痴をこぼす。


「これで百鬼は全員だ、次は華口アキラ、お前だ。」


どうやらこの四人で全員らしい。

俺は姿勢を正して自己紹介をする。


「華口アキラ、つい先日まで妖怪もなんも知らないパンピーで、深海に行ける珍しいタイプみたいです。」


この日を境に、俺の人生は狂って行ったのだろう。

だが、それが良いことだということは何となく分かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る