第7話 いいや




 魔法使いに頼んで、師匠の庭に無限に竹を生えさせてもらうか、竹があちらこちらに生えていた過去に連れて行ってもらおう。


 嬉々としてそう提案した和音に対し、笙斗は言ったのだ。

 もう竹を食べなくていいや。

 和音は目を見開いた。


「え?どうして?お金の心配してるの?」

「急に食べる気がなくなった」

「え?」


 和音は戸惑った。

 さっきまであんなにもりもり食べていたのに。

 本当に食べる気がなくなったのか。

 お金の心配をしているのか。

 今だけか。

 少ししたらやっぱり食べたくなったと言うのだろうか。


 膝を曲げて視線を笙斗に近づけて、注意深く見ても、悲しんでいるでも不安がっているでも怒っているでもなく、いつもと変わらないような。


(う~~~ん~~~。わからない)


「え~と。じゃあ、とうもろこし石を食べる?」

「ヤダ」

「今はお腹いっぱいで食べられないか」

「いくら腹が減っててもとうもろこし石だけはぜってー食わねえし」

「え~。何でそんなに嫌なの?」

「俺の(竜の)育て人なんだろ。そんぐらいわかれよな」


 瞬間冷凍するぐらいに冷たい視線を笙斗から向けられた和音は、全くもってその通りですとうなだれてしまったのであった。











(2023.12.9)



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